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真夏のピークが去った 息子ものがたり
男親が息子を語る
男親が息子の話を書くのは難しい。私的には娘の方が楽だ。それでもエピソードを幾つか書いてみた。
まず私には子供が3人いる。長男、長女、次女と続く。長男は31歳となる。
以下(息子、娘1,娘2)とする。
家庭によって親父と息子、さらに娘との関係は色々だと思う。
我が家の子育ては、男だからと言って、人を蹴落とすような粗暴を許すような育て方はしてない。英才教育、スパルタ教育、放置教育、そんなカテゴリーかからほど遠い、公立の学校で、ごく普通の教育しかしていない。
敢えて言えば子供のために、家庭環境、地域環境、学校環境と物理的なものを出来るだけ整えた。我慢、根性、努力などの言葉は言った事がない。そして私自身が男の中の男というような強い親父を家庭で誇示することもない。ただ好きな事と仕事を続けていた。まず真面目に働いて、お金を稼ぐ、そして友達や仲間に好かれる人を目指した。
鳶は鷹を生まない。子供にとって親がベースとなる。これを忘れがちだ。
一方、娘達は女の子らしく育てはいない。将来男に頼るような女子になってもらいたくないので、ピアノではなくスイミングをやらしていた。アウトドアやスポーツを嫌いにならないように外遊びで、1人で何でもやれるように育てた。だから兄(息子)も妹を女の子だからという意識で扱ってはいない。
そんなことで、娘2は釣り道具、スキー、スノボー、スケボー、女子らしくないモノを実家に置き放しにして、結婚し家を出た。娘1もバイク、自転車、エレキギターなど男ぽい持ち物が多い、今は、シーカヤック、クライミングをメインに遊んでいる。
そんな妹達にプレシャーを全く感じることもなく、息子は鷹揚に生活している。私からすれば、息子は体格もいいし、身体の動きもいいので、スポーツをやったらいいと思っているが、今はグルメと地方競馬を見ることなどで、大学時代の冒険クラブのメンバー達と日本を巡っている。
一応、子供達は自立している(W)
冗談ではなく、大学進学までは色々と大騒ぎするけど、教育の成否はここにかかる。
息子を語ることの難しさ
椎名誠さんも岳物語を書いたことで、一時期息子さんと関係が悪化していた。娘さんもいるが、娘さんのことを書いても、関係はそれほど悪化しない。椎名さんの友人、沢野ひとしさんも、息子さんと娘さんがいるけど、息子さんとは会話はないが、娘さんとは仲よくやっている。
これは2人のエッセイの中の話だけど、ほぼ間違いないと思う。
経験上、大人になった息子が親父と仲良しになるとは難しい。これは群れをもつ動物のDNAなのだろう。オスは1匹でいい、まあそこは深くは考えてないが、そんな気がする。とにかく会話がない。
何を聞いても、「おお」「うん」「わかった」、無粋な答えが多い。
それと、息子に「うるせー、クソ爺」と言われたら、おそらく大げんかになる。(100%言わないが・・)
一方、末娘に同じことを言われても、なんとも思わない。(たまに言われる)この時は「絡んでくれてありがとう」と言いたい。
妻と娘の関係
妻は、娘1がティーンエイジャー時代、マジ切れで喧嘩をしていた。そして最後に、「お父さんは、どちらの味方なの?」と妻が私を追い込む。
「最後は俺かよ・・・」とほほ顛末だったが、今はそんなこともなく、仲よくなっている。
姉妹も一時期は剣呑の仲だったが、今は大変仲がいい。結構赤裸々な話をしている。
我が家は生活は別々だけど、家族全員で集まって旅行も行くし、BBQでも集まる。関係は悪くない。これは、それぞれが自立していることが大きい。
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ヤマザキマリさんの「ムスコ物語」
10年以上前、沖縄美ら海水族館にいるイルカのフジの人工尾ビレ開発の物語があった。昔テレビのドキュメンタリーで観たこともあり、当時はニュースでも頻繁に取り上げられていた。
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素晴らしい物語だけど、おそらくプロジェクトX向きではない。あくまでも飼育係と技術者の努力だけの話になる。つまりテレビ向けの涙する感動を引き出す物語ではない。誰かが、またはイルカが志し半ばで亡くなった。そんなエピソードもなく。開発は進み、イルカのフジは元気に飛び、泳いで、寿命を全うした。
最近のテレビ番組の傾向だけど、「家 、ついて行ってイイですか」もそうだけど、ちょっと閉口するほど、その手のエピソードをばかりを拾ってくる。私の好きな箱根駅伝も感動秘話が多すぎて鬱陶しく感じる。
それより面白い話がいい。人生には面白い話が一番。ユーモアが必要だ。ペーソスはあったほうがいい、でも涙はいらない。
ヤマザキマリさんのむすこの哀願
漫画家のヤマザキマリさんの息子(小学生)、まだイタリアにいた頃、この人工尾ビレのドキュメントをDVDで観たそうだ。
すると彼は突然イルカのフジを見たいとマリさんに哀願した。そして自分の有り金の全てを差し出した。それは1万円にもみたいないが、なんと健気で可愛い。
そんなお金で足りるわけないが、ヤマザキマリさんは行動した。息子のために水族館近くの古民家を借りて、夏休みに長期滞在した。そして毎日、一緒に美ら海水族館へ通った。
クソ暑い真夏の沖縄で毎日水族館へかよっていたら、彼女はその辺りが好きになり、今でもようもないのにそこに長期滞在するそうだ。
ヤマザキマリさんは無類の虫好きなので、クワガタでも採取しているのだろう。
子供の好奇心、その衝動には出来るだけ答えたいが、一方、子供の欲望は無視した方がいい。
沖縄は子沢山の家族が多いが、都市部の家庭は一人っ子が多い、兄弟がいないと簡単にその欲望に答えられる。子供の欲望を何でも実現させる。これは人格形成に問題を起こす、この点は注意が必要だ。それでも、最後には「好きにしてください」としか言えない。
息子ものがたり
息子1
息子が小学生の頃、クワガタ・コレクション!
一時期オオクワガタを菌糸瓶で繁殖させ、80mmオーバーを作りだしていた。ブリーディングは面白いけど、近親相姦を続けていると牙が曲がるなど奇形が出てくる。その対策として、一番いいのはワイルド(野性)F0を入れることだ。そうすると強い個体が出来る。
F1(繁殖1回目)以上F3(繁殖3回目)となるともう止めた方がいい。
この繁殖は息子が中学生となり、部活動中心の生活となっていくに連れて、クワガタへの興味も薄れ、私のただの趣味となったが、上のような気持悪さもあり、3年目で終わった。
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息子2
結婚当初に住んでいた横浜のチベットと言われた里山が隣接する団地、5月になると、息子は毎日、ザリガニ、メダカ、色々な小動物を捕まえていた。娘2はまだ小さいので参加できないが、娘1は兄に食らいついて一緒に遊んでいた。
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息子3
息子が小学4年生の時に引っ越した多摩地区、ここも東京では珍しく自然豊かな場所だった。
だから夏休みは遠出せずに、初期のプレステゲーム「僕の夏休み」のような毎日を過ごしていた。今はクレヨンしんちゃん版「僕の夏休み」がある。
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蝉の羽化の観察。綺麗だよ。
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オオクロトンボも綺麗だった。
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息子が10cmくらいのナマズを3匹捕まえてきた。水槽に入れて飼育する。
翌日、ナマズが2匹になっている。水槽は室内置きだ。
「どうしたんだろう?」息子は私を疑う。
さらに翌日ナマズが1匹になった。
「えー!」
生態を調べると、それは共食いだった。ナマズは怖い。カルガモの雛を食うのも本当の話だ。
息子4
相模川の大島にあるワンド(池)今は消えた。横浜の団地から車で1時間程度の場所だ。息子はカヤックに乗って魚獲りをした。娘1は初カヤックである。
相模川のこのワンドは当時流行していたカヌースクールで盛況だった。また近くにある岩場はトライアルバイクの練習場だった。昔は自由に遊べていい場所だったが、今やここもそんなことは出来ない綺麗なキャンプ場になった。
ワンド(湾処、わんど)は、川の本流と繋がっているが、河川構造物などに囲まれて池のようになっている地形のことである。
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息子5
息子とは里山でよく一緒にマウンテンバイクの練習をした。スイミングスクールも小さい頃から通わせているので、そこそこのタイムで泳ぐ。小学校高学年の頃、トライアスロンやマウンテンバイクの試合にも出ていたが、中学からは男子バレーボールを選んだ。私から少し距離を置いている感はあった。
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息子は思春期から男親とは親しく話さなくなる。娘達も同じだったが、彼奴らは、20歳過ぎると急に大人になり、普通に接してくる。特に妻とは仲がいい。息子は、家を出たらそのままで、年に数回しか会わないこともあった。
つくづく私をかまってくれる女の子がいてよかったと思う。
一方、息子だけど、このまま結婚しないと、何の責任もなく人生が終わってしまう可能性がある。こんな事を書くと同意出来ない人も多いだろうが、私はそう思っている。人は誰かの為に生きないと、晩年自分の存在意味が分からなくなる。