俺の音楽4 「Sex Machine」俺のジョニーがベトナム戦争のように泥沼化した
今は中2病という便利な言葉があり、鬱になり勉強しない中学生を見れば中2病、激しく学校で暴れれば中2病、大人にも子供にも便利な言葉だ。
1970年代、中2病なんて言葉はなかった時代。大人が全く介在できない別の世界で生きていた少年少女たち。
中2病も脱した高校1年目の話。俺はサッカー部だった。
当然短パンにハイソックスで練習していた。当時はナイロンのパンツの下にサポーター代わりに競泳用の安い三角パンツをはいていた。この組み合わせ、股がすごく蒸れる。加えて、部室の汚いロッカーに練習着を入れっぱなしなんって事を平気でやっていた。当時の男子高校生は似たり寄ったりだと思う。
そんなある日、部活の帰り、下半身のジョニーの周りが異常に痒い。
どうしたんだ、心配になり家に帰って直ぐ、風呂場でジョニーをチェックする。すると棒も含めて股が真っ赤だ。
(どうしたんだろう、変な病気? でも変な事なんてしてないし)
「お母さーん!!」俺はプライドを捨て、フルチン状態でお袋を呼んだ。
お袋は俺のあそこを見て言った。
「タムシだね、お父さんが、ベトナムでアメリカ兵が使っている強力なやつを持っているから、それつけなさい」
何でそんな薬を親父が持っているのか不思議だったが、当時はベトナム戦争が泥沼化していた時代で、俺のジョニーも泥沼化している。親父はそれを事前に察知していたのかもしれない。
さて、親父からこの塗り薬を貰った俺は、風呂で、何も考えずにたっぷりと塗った。その途端、「ぎゃーっ」思わず叫んだ。
あそこを火にあぶったような痛みが走った。俺は風呂場でのたうち回った。そして、その日は下半身がほてってほとんど寝られなかった。
そして翌朝、痛みは消えていた。それとなんと素晴らしいことに、
「痒くない!」これは凄い薬だ。
その日、2時間目の授業中だった。俺は無意識にパンツの中に手を入れてあそこを掻いた。すると皮が剥けた。「やばい、どうしよう」
俺はそのジョニーの皮をとりあえず教科書の上に置いた。そして、思い切り前の席のNに吹き付けた。
Nの学ランの背中にそれはうまく張り付いた。それを2回ほど繰り返したとき、隣の野球部のKがそれに気づいた。
「N、お前の背中にジョニーの皮がつけているぞ!」とKが叫ぶ。その声で、俺の周りの奴らがNの背中を見て、また叫ぶ「ひやーっ!」教室は大騒ぎになった。
当然、その日の放課後、担任に呼び出された。
「タムシはいい、わかった、だが皮は投げるな」
「じゃあ、どうすればいいのでしょうか?」と俺
「鞄に入れて、お持ち帰りだ。ゴミ箱に入れても騒ぎが起こる。
「Do you understand?」担任は英語の教師だ。
「Yes、 This is a pen」と俺。
「帰っていいぞ、いんきんタムシ男」
その後、部活に出ようと部室へ行くと部室の前に野球部のKがいた。俺の顔を見ると、
「なぁ、さっきは悪かった。ごめん、あのさぁ、お前の使っている薬って効くの?」
「効くよ、1日で治るよ。まあ皮は剥けるけど。で何、タムシ?」
「実はそうなんだ。全然治らなくって、頼むよ薬を貸してくれ」
「うーん、これは、ベトナム戦争で使っている薬で、アメリカの国家機密で、そう簡単には貸せない」
「なに言ってるかわかんねぇーけど、じゃぁ、これは」Kは手に一枚のレコードを持っていた。
「兄貴のやつで、聴かないって言うから貰ったんだけど、なぁ、題名がいいだろう」
Kの持っているレコードジャケットには、ブルーのキラキラのスーツを着た黒人が踊っていた。そして題名は、「セックス マシーン」
セックス、それもマシーン、なんとエロい響きだ。
「なぁ、凄いだろう」俺は妄想が膨らんだ。
「わかった、明日持ってくる、だから今レコードくれ」
俺はレコードをKから受け取った。
部活の後、急いで家に帰ると、家には誰もいない。ラッキー。
チャンスとばかり居間のステレオにレコードをセットして針を落とす。やばいので音は少し小さめにする。
ブチブチというノイズの後、スピーカーからリズムの乗ったおっさんの歌声が聞こえてきた。「ゲラッパ 、ゲロンパ、ゲロンパ、ゲラッパ 、ゲロンッパ、ゲロンパ」
それは「ゲラッパ 、ゲロンッパ」の永遠ループだった。それでも、湧き上がるリズム、繰り返す波のように続くリズム。俺はファンキーサウドに初めて触れた。
「いいね」いたく気に入った。
James Brown - Sex Machine