映画アイ・アム・ア・コメディアンを見てきました
映画アイ・アム・ア・コメディアン見てきました
嫌われ芸人と呼ばれてしまっているウーマンラッシュアワーの村本さんがなぜテレビのお笑いから離れて、テレビの嫌がるような社会問題に切り込んでいく笑いを求め、さらにはなぜニューヨークで腕を磨きに行くことになったのかを追うドキュメンタリーです。
お笑い好きの私としても村本さんは本当に笑いの天才だなと思いますし、しかも志を高く、本当にリスペクトしたいなと思いました。さらにはドキュメンタリー作品としても本当によくできた素晴らしい作品だと思いました。どなたにも見ていただきたいですし、お笑いが好きな人ならなおさら是非見てほしいという作品でしたのでご紹介します。
村本さんと言えばTHE MANZAI2013での優勝です。マシンガントークというスタイルで私の記憶にも鮮明に残っていました。その後は、テレビでも引っ張りだこになって、レギュラーも増えて、まさに超売れっ子になっていったのでした。でも、そのテレビでの売れっ子の頃は自分はそんなに村本さんに関心が向かない時代でした。そして次に村本さんのことで関心が向いたのは、突然原発問題とか基地問題とかをネタにするようになって、コンプラと忖度ばかりのテレビからは完全に消えてしまう時でした。タブーになっていることに切り込むわけですし、左翼的な発言ですから、自ら論争の中に飛び込むのは、決してクレバーなことじゃないと思うし、結果としてテレビから姿を消してしまうわけですから、私にはそれがなにかとてももったいないことだなと思っていました。でも、村本さんには進みたい道があったのです。ただ干されただけだというのは、全くの誤解だったことにこの映画を見て気付くのです。
テレビに出られなくなって主戦場をYouTubeに変える人というのは多いかと思います。そのほうがスポンサーや政界などへの忖度も必要ないし、言いたいことも言えるし、たくさんの人も見てくれるしで、やりたいことができて、収入もあって、コスパが良いということになるでしょう。村本さんも、より多くの大衆に向けてテレビではできない政治批判などをyoutubeなどでするのかと思っていたのですが、全くそうではなかったのです。
村本さんの動きは全く逆で、より個へ、より生の、温かい笑いへ向かい、現場へと向かって行っていったのです。被災地や原発のある町、基地問題の沖縄、在日の住む街、韓国へと足を運び、そこで地元の人たちと酒を酌み交わしながら交流を深め、地元の人との共同作品かのように笑いを作り出していくのです。その姿がもう国際的なアーティストなんですよね。それはまるで瀬戸芸で外から来たアーティストが、地域に住む人々とアート作品を作り出していくかのようなイメージに私には感じられました。社会問題の中にアートの種があって、アートの力で社会を変えていくみたいなイメージがあるとしたら、村本さんは社会問題の中に笑いがあって、笑いの力で社会を変えていくみたいなことがしたいのではないかと想像できました。
その延長線上にアメリカのスタンダップコメディへの挑戦もあるんじゃないかと思いました。アメリカのニューヨークに挑戦って言うから、とても大きなホールとかメディアで、大きな聴衆にアプローチしていくのかなと思っていました。しかし映画で映っているのは、本当に小さい10人20人が入るようなバーみたいなところで、より個に向けて、個のネタで、より生の笑いを目指している村本さんでした。黒人差別の問題や、パレスチナやシリアの難民の問題とか、LGBTQの問題とか、世界中から人々が集まるニューヨークにこそ、その笑いの種がたくさんあって、それを現地のローカルコメディアンたちがどう料理しているのか学びに行っているのかなと思いました。そして、ニューヨークでローカルの人々と酒を酌み交わしながら、さらにグレードアップした村本さんの笑いを創り出していくのではないかと想像しました。村本さんはアメリカへの挑戦を通して日本の笑いを変えたいのです。そして笑いで社会を変えていきたいと思っているのだと思います。すごい志だなと思いました。
好きなシーンはたくさんあります。被災地だったり、コリアンタウンだったり、社会問題の地に切り込んでいって、地元の人たちと議論したり話を聞いたりして、酒を酌み交わすシーンはどれも良かったです。でも、一番好きなのは父のもとに久しぶりに帰省するシーンでした。一番近い他者の1人である父とも大喧嘩になってしまって、肉親だからというのもあるでしょうが、なかなかわかり合えないみたいなところが映し出されるのです。そこで村本さんが胸を突く名言を吐くのですが、それは映画館で見てください!その後のネタにも父を登場させるのですが、身内とのやり取りまでをも笑いにしてしまうような、やはり一人一人に寄り添える温かいコメディアンなんだなと思えてジーンと来てしまいました。
アイ・アム・ア・コメディアンというタイトルがぴったりな村本さん。笑いとは?芸人とは?コメディアンとは?そんなことをじっくり考えさせてもらえるとても良い作品だと思いました。
まだまだ上映しているところありますので、是非皆さん見てください!!!