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縄文杉トレッキング@屋久島(1592文字)

やっと縄文杉までのトレッキングに挑戦できた。往復10時間。ガイドなしで挑戦することにした。

登山口には一般用駐車場がないため、バスで行くしかない。そのバスは、最終便でも朝の5時40分発。4時半に起床して、朝食も食べずに出発した。

登山口に着いてから持ってきたパンとプチトマトの朝食。トイレを済ませて、6時40分くらいに荒川登山口をスタートした。

前半はトロッコの線路を歩いて行く。勿論、かつて使われていたトロッコで、現在は廃線となっている。川を渡るのも線路沿い。

トンネルも通って…

亜熱帯の森の中を進んで行く。

苔むした倒木が、あちらにもこちらにも。明るい森は空気も新鮮で気持ちがよい。

トロッコの線路を進むので登り下りは殆どなく、木道で非常に歩きやすい。

旬の季節は過ぎたけれど、途中、パッションフルーツが成っていた。

しばらく歩いたところに集落跡があった。50年以上昔、ここに杉の木の伐採を生業とする人たちがこの辺りに住んでいたらしい。

小学校と中学校もあったようで、当時は賑やかに運動会も開催されていたようだ。今は跡形もない。平地になっていた。

登山口から縄文杉までの途中、トイレが2箇所あった。ひとつ目はバイオトイレ、二つ目は循環トイレ。バイオトイレの手洗いは、湧き水が利用されていた。

陽が高くなるにつれて、気温も上がる。スタート時は長袖のブレーカーを羽織っていたのに、いつの間にか汗が流れている。

トロッコの線路の切り替えが手動で出来るようになっていた。

水場が近づくと、流水の音が静かに響き、冷んやりとした空気に思わず深呼吸をする。小川があるだけでこんなにも涼しさを感じるとは、大自然の効果に驚く。

ウィルソンさんが発見したというウィルソン株まであと600メートル、という地点からトロッコ道を外れて登山になる。ここまでの600メートルとここからの600メートルとでは疲労度が全く違う。

急な上りの登山道になって、すぐに息が上がってしまう。息絶え絶えになりながら600メートルを登り、ウィルソン株にたどり着いた。

ウィルソン株は中が空洞になっていて、大人でも一度に10名くらい入ることが出来そうな広さがある。株の中から上を見上げると、爽やかな緑色の木の葉がハート型に切り取られて輝いている。よく絵葉書でも見かけるハートの窓。実物を見上げていると、ここまで必死に登ってきた苦労が報われた気がした。感動という一言で現すには勿体無いような、達成感とか感無量とか自然の神秘とか太古のロマンとか、色んな言葉を総動員したような喜びを覚えた。

それからまた、休息を取りながらも息を切らせて重い足で上り、下ってくる人がいれば敢えて道を譲って通り過ぎる少しでも息を整えて、そうして最終目的地である縄文杉に到着した。疲労がマックスで、写真を数枚撮ると動けなくなった。

縄文杉まで片道5時間を登りきった。その事実が嬉しかった。しかし、縄文杉は大切に保護されているため離れたところから見上げるのみ。実感という意味では途中で見たウィルソン株の方が充分に感じられた気がする。それでも、ドロドロに汗をかきながら完歩した体験は忘れられない大切な記憶として残るはずだ。

下り道、息苦しさはないものの足取りは段々と重くなる。トロッコ道に出るまでは、筋肉疲労で足がもつれて転ばないようにと気が抜けない道のりだった。トロッコ道に出てからも、歩きやすくはなったものの、ゴールはまだかまだかの長距離に気持ちまでもが疲れてくる。

視界に入る河原の石が巨大になってきた。目の前に広がる景色もスケールが大きくなる。東京ではまだ聞けないツクツクボウシが鳴いている。山ではもう秋の準備が始まっているのだと知る。

登山口に到着した。大自然に挑んで負けなかった。体力的にも気力的にも、少しは自信に繋がったと思う。しかし、山は侮れない。大自然の偉大さをも実感した挑戦だった。

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