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にっぽんの知恵「からくり⑧自律型ロボットを軍事に使ってはいけない」

  写真:左=プレデタードローン、右:ビッグドッグ(Wikiwandより)


 ロボットをめぐる未来に夢を広げたところで、少し現実に返ってみましょう。

 まず、淺田さんが自ら命名して1997年に始まった「ロボカップ」は、人間が命令を下して動かすのではなく、自分で動くロボットのサッカー大会です。日本の研究者らの提唱に基づく、このプロジェクトは今日、国際的にも定着しています。

 しかし、ここでもう一つ、ロボットをめぐる大切な根本精神に言及しなければならないと思います。

 「その精神とは『ロボットを軍需に使わない』ということです。参加チームがロゴマークに戦車のシルエットを入れるのも禁止しています。それに、ロボットによるサッカー競技を楽しむだけではありません。そのことをとおして、ロボットと人、人と人の心がつながることが大切なんだということを訴え続けているんですね」

 ところが、共同討議をした当時、米軍がイラクでの治安対策に、地上を走行する無人兵器を投入する計画を進めているというニュースが伝えられていました。それは「人を殺すためのロボット」にほかならないのです。

 しかも当然ながら、攻撃を受けて破壊されても、兵士には被害が出ません。当然、米軍は痛痒を感じません。恐ろしい「悪魔の発想」だというほかないのではないでしょうか。

 そんなことを考えていると、三宅さんが一言、ぽつりとつぶやいた。
 「民生用の技術が、知らないうちに戦争に使われることは少なくない。心配です」
 そこで思い出すべきは、人間とロボットの望ましい関係を築くために、かつてアイザック・アシモフが提起した「ロボット工学三原則」です。つぎにそれを掲げておくことにします。

 第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危害を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
 第2条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない。
 第3条 ロボットは第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。

 アメリカの軍隊が開発しつつある殺人ロボットが、この3条件に反することは、あらためていうまでもありません。
 それに、浅田さんの夢が実現する「ロボットと人間がサッカーの世界一を競う日」を実現するには「世界の平和」が絶対的な必要条件でなければならないでしょう。

 という意味でも「からくり」や「現代のからくり」としてのロボットは、人間に対立するのではなく、人間と親しみ、遊び、豊かな楽しみをもたらしてくれるものであり続けてくれなければ困るのだと強く思います。
                    (このテーマ、ここで終わり)

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