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漢方は、心身のバランスを整え、自然治癒力を高める

         写真:生薬(Wikimediaより)、小説『漢方小説』表紙

 最近、漢方が注目されているのは、全身のバランスをみる医学だからだろう。

 それに対して近代西洋医学は、悪い部分を見つけ、抑え込む治療に努めてきた。それは確かに、外科的な救急医療や感染症の治療には大きな威力を発揮する。
 しかし、糖尿病のような慢性疾患には、ある種の限界があったりもする。

 今ひとつ、漢方の治療は、体質を改善し、心身のバランスを整える。そのことをとおして全身の自然治癒力を高めていこうとする。
 それに比較的、副作用も少ない。そんな漢方のマイルドなイメージが、日本人に好まれるようだ。

 それだけではない。現代の西洋医学は、検査データを重視するあまり、病人の悩みに応える点で、必ずしも万全とはいいにくい。

 「検査をした結果、異常がないから病気ではない」
 医師にそう言われても、身体に変調を実感する患者は「いや、違う」と思わざるをえない場合が非常に多い。

 その結果なのであろう。
 西洋医学には救ってもらえないと感じる人が、漢方を求めているらしい。

 と記したところで思い出すのは、20年近く前の2004年に「すばる文学賞」を受賞した作家・中島たい子さんの、その名もずばり『漢方小説』の印象的な場面である。

 主人公のみのりは、年齢31歳の独身女性である。もとの恋人が結婚すると知った日から、原因不明の震えに悩まされはじめた。
 それで、4人の西洋医学の医師の診察を受ける。

 しかし、検査では異常が見つからない。むろん、容態も良くはならない。  
 そこで、心療内科へ行くように勧められる。が、実際にみのりが行ったのは漢方診療所であった。

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