【週刊プラグインレビュー】Excite Audio / Lifeline Console
今回はExcite Audioの新作プラグイン「Lifeline Console」を紹介します。
まずは製品紹介動画をご覧ください。
デモ動画はこちら。
プラグインの詳細、トライアルはこちらから。
製品紹介動画に意味ありげに映るテープレコーダー・コンソール・1176、そして[Instant Analogue Character]というキャッチコピーのせいで、
「またSSLとかNEVEとか1176のモデリングをしたモジュールプラグインね、はいはい、何番煎じだよ・・・。どうせわかりやすく効果が派手過ぎて、使い所難しいんでしょう。解散。」と思っていたんですが、実際使ってみるとその印象が大きく覆りました。
それはもう「このプロモーション動画、作り直した方が良いですよ。」と言いたくなるレベルで。
今月末に数曲をConsoleを使ってミックスダウンしてみた実体験も踏まえて、今回は各モジュールの操作と効果を具体的に説明していきます。
プラグインの機能制限に応じて2バージョンが存在していますが、今回は全ての機能が使用できるFULL Versionに関してレビューしていきます。
総評
洗練された視認性・操作性のデザインが光る超実戦向けプラグイン。
打ち込み・スタジオレコーディング・宅録等々、数多のキャラクターの録音素材を一つの楽曲にまとめ上げなければならない現代の音楽制作にフィットした幅広いサウンド。
しっかりとした素材の整地から、飛び道具的なサウンドメイクまでこなせるオールラウンダーであり、インサート1段目を安心してお任せできる。
300以上の充実したプリセットは、プリアンプやEQなどの基礎的なプロセッサの価値を見直すキッカケになる、教材としても優れたプラグイン。
お勧めしたい方
説得力のあるサウンドメイクを行いたい方
チャンネルストリップは使いたいけど、DAW純正だと物足りない方
素材の下拵えと棲み分けを素早く行いたい方
特定のビンテージモデリングにこだわらない方
概要
Lifeline ConsoleはExcite Audioが開発したチャンネルストリップ系のプラグインです。
同メーカー前作のLifeline Expanseがレコーディング環境やリアンプなどの空間表現を目的としていたのに対し、今回のConsoleは、レコーディングの際にコントロールルームで起きる、コンソールやハードウェアによるビンテージフレーバーの味付けを目的としています。
余談だが、前作のLifeline Expanseは簡単にルームシミュレートやLoFi表現が行えて、それはそれで良い。
Consoleはカスタマイズ可能な5つのモジュールで構成されています。
それぞれのモジュールに視認性の高いディスプレイと個別ボリューム・MSプロセッシングのON/OFFなど、幅広く直感的な操作が可能なオプションが用意されています。
モジュールの順序はドラッグドロップで並び替え可能ですが、
現状1モジュール1つしか使えない為、EQを2段で使うなど他社モジュール系プラグインでは可能な、自由度の高いルーティングは行えません。
マスターセクションにはIN / OUTのボリュームフェーダーに加え、Warm / Shineノブで全体のトーンコントロール、DRY / CLEAN / VINTAGE コンソールの味付けをブレンドできるTriangle Padが搭載されています。
それぞれのモジュールは特徴的なつまみだけを表示するMain表示と、より詳細な設定ができるAdvanced表示の選択が可能です。
全モジュールがMain表示のデフォルト状態から、EQをAdv表示すると、このようにローエンド・ハイエンドに加えて2バンドEQが操作できるようになります。
マニュアルをいちいち読まなくても良いように、ツマミにマウスオーバーすることで、ウィンドウ左下に説明が表示されます。地味にいいポイントです。ストレスフリー。
各モジュール解説
PRE
コンソールのプリアンプ部を模したモジュール。
サウンドキャラクターはBright / Warm / Darkから選択でき、それぞれのキャラクターをBias / Q / ShapeやPush / Pullを使って作り込むことができます。
使用してみた上で一番良いと思ったのはLow Endのツマミです。
KushのOmegaシリーズや、WavesのNSL、Slate DigitalのVCCなど、コンソールのプリアンプ部をモデリングして、音に歪み感やトーンを与えるプラグインは数多くありますが、低域がボワついてしまったり、滲んでしまって、結局思い切って歪ませられなかったり、最終的にバイパスしてしまう経験ってありませんか?
このLow Endツマミを使うことで、指定した帯域以下の周波数をバイパスすることができます。
つまり、素材の低域の量感やイメージに影響を与えることなく、中高域のみに歪みや倍音を発生させてトーンコントロールを行うことが可能になるのです。低域に影響を与えずキックの張り付き感やベースのラインの見え方を変えたり、歌の抜けに関わる部分だけ歪ませたり、Low EndをバイパスできることでPREの可能性がグッと広がります。
次に感動したのがBias / Q / Shapeによるトーンコントロールです。
感覚としては顕微鏡のピントを合わせる感覚にかなり近いです。
前述のプリアンプ系プラグインを使用した際に、惜しいなと思うのが、トーン変化する周波数ポイントやその強度の微調整ができないという点。
大まかにキャラクターは合っているが、もっと素材にジャストフィットした歪みを作りたい、もっと歪み感だけ強く出したい、という場面が今までもあったはずです。
実際に操作するとこのようにトーンバランスが変化します。
ティルトEQの様な歪み特性の基準周波数が変わったり、幅が変わったり、傾きが変わることで、より素材に合わせた使い方ができるようになります。
例えばアコギ全体をブライトにしたいが、サウンドホールの音は落ち着かせたままにする。ハモの膨らみは強調したいが、高域まで持ち上がって抜けが良くなるのは避けたい。など周波数ごとに異なるアプローチを仕掛けたい場合に有効です。
楽曲全体のミックスバランスを大まかにとった上で、2Mixを聴きながら、個々のトラックで3つのツマミを操作すると、効率的にキャラクターを棲み分けることができます。歪んでいるけれどピントが合っているので、明瞭で、狙った奥行きに配置することが可能です。
Push / Pullはプリアンプ前段のボリュームと後段のボリュームの操作ができます。Pushしていくことでより濃く味付けをすることが可能です。
Push / Pullをリンクさせることで、音量の変化なく歪みのキャラクターだけを変化させることが可能なので、簡易的なクリッパーとして使用することもできます。
この点はSalte DigitalのVCCなど使い慣れている方は、イメージが湧きやすいかと思います。
EQ
EQは良くも悪くもごく普通の4バンドのパラメトリックイコライザーです。一応サウンドキャラクターとして、Gain / Vintage / Dirtの選択が可能です。
個人的に良いなと思ったポイントはMain表示にした際にしっかり素材の周波数帯域が視認できて、なおかつローエンドとハイエンドが操作できる点です。
大まかに素材の整理を行いミックスバランスをとり始める際に気になるのはまずローエンドとハイエンド、そしてその2バンドの調整による周波数レンジの部分だと思います。
その部分の調整がプラグインを立ち上げた際にパッと行えるのは、よく考えられたデザインだと思います。
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