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ミニ法人のすすめ

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1 はじめに

 この記事はサラリーマンの知人から「妻の事業の業績がオンラインセミナーの実施により業績が急上昇した。その結果、今回の確定申告で売上が1,000万円を超える見込みになり、1,000万円を超えたら2年後の売上に対して消費税を納めなければならないのか」という相談から執筆するきっかけとなりました。
 事業を経営している個人又は法人は消費税を納付しなければなりません。しかし、消費税法上の売上(以下、「課税売上」)が1,000万円以下の個人又は法人に対しては、原則として納税を免除されています。例外もありますが、詳しくは別の機会でお話しします。納税を免除されていない事業者を「免税事業者」、そうでない事業者を「課税事業者」いいます。「免税事業者」か「課税事業者」の判定は、個人の場合は、その年の前々年の課税売上が1,000万円を超えるか、法人の場合は、その事業年度の前々年度の課税売上が1,000万円を超えるかどうかで判定します。したがって、上記の知人の場合は、令和3年の事業売上が1,000万円を超えているため、令和5年の事業売上で預った消費税と経費分(課税仕入)の消費税の差引分を納付する必要があります。


 課税売上(税抜)1,100万円
 預った消費税
 1,100万円×10%(現行の消費税率:消費税 7.8% 
                 地方消費税 2.2%)
 =110万円
 課税仕入(税抜)1,050万円
 預けた消費税 
 700万円×10%=70万円
 差引き 110万円-70万円=40万円

 このように消費税課税事業者となると、消費税を納付しなければならなくなり、実質経費があがります。上記の例ですと月3.3万円の事業資金が費消されます。加えて、個人事業主なので、国民健康保険(以下、「国保」)の保険料、所得税、住民税も前年より増加し、更に、免税されていた事業税の納税義務(事業所得290万円以下は非課税)が発生するかもしれません。
 このような将来の突発的な支出を最小限に抑えるべく、何か良い方法はないかと調べてみました。この記事に検討した内容を執筆してみたので、フリーランスで生活している方やそのご家族がいらっしゃる方は、参考にしていただければと思います。
 個人と法人の税金、社会保険料(以下、「社会保険料等」)の概要や違いについては、別の記事で説明しているので良かったら他の記事もご参照ください。

2 前提条件の確認

 まずは、世帯のモデルの前提条件を確認しましょう。
 世帯の収入、所得、社会保険料等のモデルは以下のとおりです。

 【前提条件】令和5年時夫婦別 社会保険料等支払額
 ・所得税法上の扶養家族なし 
 ・所得税法上の所得控除は社会保険料控除、基礎控除480,000円のみ
□夫 会社員 年収 500万円(給与所得 356万円)
    社会保険料 70万円
     厚生年金保険料    45万円
     健康保険料    23万円
     雇用保険料    2万円
    所得税 15万円
    住民税 25万円
    事業税 0円
   社会保険料等 合計 110万円

□妻  事業主 年収 1,100万円(従業員の雇用なし)
         所得 300万円(青色申告特別控除前)
     社会保険料 56万円
      国保 36万円
      国民年金 20万円
     所得税 6.5万円
     住民税 13.6万円
     事業税 0.5万円
     消費税 40万円 
    社会保険料等 合計 116.6万円

 世帯社会保険料等 総計 226.6万円 
 ご覧のとおり、世帯の所得が656万円に対し、226.6万円が社会の会費となります。利益の約35%が社会の会費となります。  
 続いて、ミニ法人を設立して、妻の収入をミニ法人からの役員報酬月額10万円とした場合の社会保険料等の総額をシュミレートしてみましょう。

3 ミニ法人設立後の社会保険料等のシュミレート

□夫 社会保険料 70万円
   厚生年金保険料    45万円
   健康保険料  23万円
   雇用保険料  2万円
  所得税 11.2万円(△3.8万円)
  住民税 21.7万円(△3.3万円)
  事業税 0円
 社会保険料等 合計 102.9万円(△7.1万円)
 妻の所得が減ったことで、妻を扶養に入れることができ、配偶者(特別)控除(所得税38万円、住民税33万円)を適用することができました。

□妻 収入 120万円(所得17万円)
 社会保険料 0円(夫の扶養のため)
  ※ 扶養の条件は年間収入130万円以下
 所得税 0.9万円
 住民税 1.7万円
 事業税 0円
 消費税 0円
社会保険料等 合計 2.6万円(△114万円)
 ご覧のとおり社会保険料を大幅に削減することができました。

□ミニ法人 
 事業収入 1,100万円
 所得 173万円(個人事業時の所得300万円から今回の法人設立による役員報酬120万円のほか、法人住民税所得割7万円発生により経費増加)
 社会保険料 0円
 法人税等 51万円
  法人税 30万円(所得×15%)
  地方法人税 3万円(法人税×10.3%)
  法人事業税 8.8万円(所得×5.1%)
  法人住民税(法人税割)2.1万円(法人税×7%)
       (均等割)7万円
  消費税 40万円
 社会保険料等 合計 91万円
夫、妻、ミニ法人 社会保険料等合計 164.1万円(△22.5万円)

4 まとめ

 ミニ法人を設立したことで、概算になりますが、社会保険料等を約23万円削減することができました。この金額は日本の東証一部上場企業の新卒の初任給と同等の金額です。個人事業主に重荷である、国保と国民年金を夫の扶養に入ることで、負担をゼロにさせることができました。
 一方で、法人税等の税率(約30%)が、個人時代の税率(所得税5%、住民税10%)に比べて2倍ほど高いので、税負担は個人時代より高くなりました。
 ミニ法人における社会保険料等の削減の課題は、いかに法人税等を下げるかになります。

5 おわりに

 このシュミレーションは、あくまで概算です。上記税金のほか、復興特別所得税、住民税均等割が課税されますが、数千円ですので今回は省略しています。また、法人設立の際の登記費用、行政書士等の報酬も省略しています。このモデルはあくまでも参考レベルと理解していただければと思います。
 有料にはなりますが、上記のミニ法人設立のほか、さらにテクニックを加えることで、43.2万円の社会保険料等を削減させることができます。
 興味のある方は初期投資だと思ってご覧いただければと思います。

参考文献


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