不完全な美:カート・コバーン、わびさび、そして人々の美意識について
こんにちは。スラット是永です。普段は東京、高円寺の古着屋SLATにて商品の仕入れをしております。
イントロダクション
今回のテーマは「不完全な美」です。古着が好きな人、特に破れたジーンズや色あせたTシャツが好きな人には、このテーマは特に響くのではないでしょうか。
穴が空いている、色が褪せている…こういった古着のダメージを、なぜ人間は「美しい(かっこいい)!」と思うのでしょうか?
それはよく考えたら、なかなか興味深いものではないでしょうか?
ここでいう「不完全な美」とは何か、そしてそれがなぜ多くの人々に感動や共鳴を与えるのかについて、一緒に考えてみましょう。
グランジ文化と破れたジーンズ
1990年代、ロックバンド「Nirvana(ニルヴァーナ)」のフロントマン、カート・コバーンが破れたジーンズを履いて登場したとき、多くの人々はただのファッションステートメント(※)とは思わなかった。この破れたジーンズは「グランジ」という文化ムーブメントと深く関わっており、その不完全性や壊れやすさがもつ美を広く認知させました。特に若者たちは、完璧でないものにも価値があるという新しい視点を持つようになりました。
※ファッションステートメント:
服やアクセサリー、メイクなどのファッションを通じて、自分自身のアイデンティティや価値観、スタイル、または社会的・文化的なメッセージを表現することです。これは単に「おしゃれをする」という以上の意味を持ち、特定の意図や思いを持って服装を選ぶ行為とされます。
グローバルな美の感覚
この考え方は西洋だけでなく、東洋、特に日本でもあります。日本には「わびさび」という概念が存在しています。これは不完全なもの、壊れたもの、あるいは年月が経過して変化したものに対する美意識を表す言葉です。カート・コバーンの破れたジーンズとわびさびは、古くなったものや壊れたものに対する敬意と共感が通底しているのです。
共感と現実感
なぜ人々は不完全なものや壊れそうなものに美を感じるのでしょうか。一つの答えは「共感」と「現実感」にあります。完璧なものよりも、欠点や傷があるものに共感を感じやすいのです。それは、人間自体が完璧でない生き物であり、その不完全性を受け入れることで、より深く他者や物事と繋がれるからではないでしょうか?
物語の力と独自性
破れたジーンズや古い建物、さまざまな年代の色を持つ音楽など、これらにはそれぞれ独自の「物語」があります。経年劣化でその物語性が高まることで、美の感じ方も高まるのです。何年も使用されてきたギター、色あせた古い写真、それらが持つ物語や歴史が、それ自体に独特の美を生み出しています。
儚さと一瞬の価値
壊れやすいものや時間と共に変わっていくものは、その「儚さ」から美を引き出しています。花が咲いては散ること、日が昇っては沈むこと、それらの儚さが持つ美は、その瞬間瞬間に尊い価値を持っています。
感受性の深さ
人々がこの種の美を特に評価するのは、深い感受性と関係しています。人々は自分自身の感情や生きづらさ、または他者との関係性に対して敏感であり、その感受性が不完全なものに対する美の評価を高めています。
まとめ:
不完全なものや崩れやすさに美を見出すのは、これらに対する共感、敬意、そして人生や人間性に対する深い理解が影響しています。カート・コバーンの破れたジーンズや日本のわびさびが示すように、この種の美は文化や時代、場所を問わず、多くの人々に共鳴と感動を与え続けています。それは普遍的な美の一形態であり、人々が感じる美意識の多様性と深さを反映しています。
以上になります!
手元にあるダメージ古着の見方が少しでも変わったら幸いです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!