家族と鍼 弟編
風邪って、なおりやすくて、それでいて
悪化しやすいと思うのは私だけでしょうか。
施術するときに、もっとも構えてしまう
フウジャ…。
簡単に治ると仰る大御所の先生の一言を
決してうのみにしてしまってはいけないな
と、常々思う。
万能であるがゆえの施術は、間違えば長引く風邪になるし、うまくいけば、そのひのうちにケロリと改善することも可能な…
本当に名実ともに浮遊性質の風邪。
弟が、昨日風邪を、ひきかけ頭痛と寒気がすると言われたので、
手元にあるだけの針道具と灸をもって
家族の部屋に行った。
目がつり上がり、体調が優れないからかムッスリしてる。
もともとすぐにイライラしちゃうタイプの子で、しかたなかったのだけど…まぁ、父に似たイラッチ君だったのです。
ひさしぶりに脈を診て、お腹を診て、背中を診て、症をきき、手のいくところをほぐしました。
かぜで肩こりかんが激しく、緊張性の頭痛…
前日に筋肉を使いスコシ筋肉疲労があったようでした。
表層の部分へアプローチするたびに、
手のいくところがかわるので
追っかけていくと、阿是穴に激しく反応したのですこし責めてとどめをさしたら
弟は「ない!頭痛も、寒気も…」
「なに、なんなの?なにこれ!」
と驚かれてしまい、戸惑ってしまった。
終わりに脈を診ると
「お姉ちゃんの学校はこんなことを教えるところだったの?」
と聞かれた。
「そうだよ。こういうこと、教わってやってきたんだよ。」
というと、彼は恐らくはじめて少しだけ尊敬してくれて、「なんか、すごいねぇ」
といった。
いままで、私のことバカにしかしてこなかったけど、はじめて弟が「ネエチャンすげえよ」と言ったのですこし笑ってしまった。
岩手に来てから、全くすべてが順調だったわけではなくて、岩手にいくまで大変なことや悲しいこと、正直人を信じられないこともあったし、
言葉による精神的な暴力も数度感じて滅入ることもあった。
主には、最近ことに目立ってきてしまった、
父の裸の王さま具合に家族はほとほと困っていたし、私も彼の一言一句を真面目にとらえて傷つくこともあった。
そして、外ではよい顔をし、
家族は都合よく使う気持ちのありありしたところが
見えるその言動や
言うことや、やることに、本当の意味で責任をとるということをしない父に、家族は信頼感がまったくなくなってしまっていた。
父が帰ってきたら極力当たり障りのない感じで
あったこともしたことも、
たいしたはなしはせず、家族の会話らしい題材をえらび、興味のないはなしを、さも興味ありげに話す。
だが、家族、母と弟と、私のみの時は、
「すこしヤバイねぇ」という題材になってしまった。
岩手に来る最中ずっと「社会と繋がりのないお前は○○○同然だ」とマインドコントロールのように禁止用語を隣でいわれて来た道中や、
岩手に来てから「お前はふとったな、顔が真ん丸でパンパンだ。みっともなくて醜いから気を付けてくれ、運動でもしろ」といわれたことを二人に打ち明けた。
二人とも
すこしあきれたが、もうなすすべもないし面倒だから
とにかく、私も気を付けるから、みんなも気を付けましょうとはなしたこともあった。
そんなことがあって、父が帰ってきてから
家族の部屋で手帳にその日食べた物を
かいていたら。
「お姉ちゃんやめろよ。お姉ちゃん太ってなんかないよ。体ガリガリじゃないか。それなのに、顔が丸いからって、太ったっていわれたりするんだったら、食べたこととかじゃなくて遺伝だよ!親父をうらめよ。」
とふいに弟が私にいってきた。
「もう、いやなんだ、この丸い顔。具合悪くてもいつも元気でいいわねって言われて…。本当は辛いのに。」
というと、
父が
「なにいってんだお前、丸顔はいいんだよ。かわいい証拠だよ。」といってきた。
180度でたりるだろうか、この話してることの一転したさじ加減は…。
あきれた家族はそのまま違う話題にさしかえることにしたが、弟は右目でウィンクをした。
あんまり、わたしにこういう形で救いのてをさしのべることはなかったのだけど、
あのときの施術から、弟の私のみる目は確実に変わったし、弟も自分自身のことに向き合えるようになってきたのかもしれない。
父は相変わらずそのごまかしを物や気遣いのふりでごまかそうとしていたので、
まだまだ当分ダメだと思う。
風邪の効用は意外なものだった。
父の一人病は当分独走状態になると思うけれど
この先家族は意外な方向に進むかもしれない。