2021/05/14 愛しき面倒なものたちへ
ボタンひとつで物事が成り立つのならそれはそれでいい気もするし、便利なことは確実だ。それでも寒い日にはマッチを擦りストーブに火をつけ、暑い日は窓を開けて車を走らせている。
結果はすぐ欲しいから、ボタンひとつで完成したらそれはそれで楽なのだけれども、一つ一つの作品に手間をかけて、ああでもない、こうでもない、満足いかない、上手くいった気がすると色々なレイヤーを重ねては物を作っている。その隙間に何かが宿る気がして。
自分が面倒な人間だということは重々承知してはいたが、それに輪をかけて僕は面倒くさい物や人が好きだと言うことに最近気がついた。そしてそのおかげで日々を豊かに生きることができているとも思う。
そんなことを考えていたら急に電話が鳴る。
電話口は僕の時間や心境なんてお構いなしに、喋り続け、しまいにはめそめそと泣き出す。
果てには「津田さんが泣くやつは面倒だと思ってることなんて知ってる」なんて言い出すからタチが悪い。
そんな面倒な奴も愛おしくてたまらなく、また忘れた頃に不意に電話をかかってくるのを面倒だなぁと思いながらも楽しみに待っている。
土が乾く間も無く、僕の頭の中には次の作品のアイデアが浮かぶ。メモを取るべきか取らないべきか毎回悩む。忘れないうちにと思う気持ちといい発想は忘れずに残るんじゃないかという気持ちの間で揺れる。揺れる。揺れる。とか悠長に悩んでいたらなんだか今頭の片隅から何かが消えた気がする。とても悔しい。またいつか思いつくだろうとか思いながら、必死に思い出そうとしている。
こんな文章を書きながら、書きながら、書きながら、、。
今年度の幸先としてとてもよい自軸になるようないい作品ができた。
少しヤングでポップすぎる気もしたが、夏に着ることを思うとそれもそれでいい気がして母へ送った。手拭いは祖母へ。
記念日くらいにしか親へ感謝できない不精を詫びながら。ボタンひとつでは込められない気持ちを込めて。