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エナジードリンクから動物柄を経て、草木染めに至るまでの私的なエネルギー移行
「草木染めってなんだか嬉しいなぁ」
そんなことを思いながら腕に巻いた組紐を太陽の光にあてる。
母から黒豆が大量に送られてきたのは2月の頭。「草木染めに使える言うてたから買っといたで」とのこと。黒豆は高いのでありがたい。1月に近所のコープで買った黒豆を野菜置き場の奥に追いやる。
そうこうして我が家に大量の黒豆がある。大量にあるので絹糸を染めた。仕事終わりにテキトーに染めたのにこんなに綺麗に染まってくれるなんてありがたい。
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そんなこんなでありがたい糸で何か作ろうと思い、組紐にした。黙々と紐を組む。みるみるうちに時間が溶けていく。組紐にすると多少の染めムラが分かりにくくなるのでありがたい。
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組紐を太陽の光できらきら光らせながら
エネルギーについて考える。草木染めは太陽のエネルギーを身に纏うための装置だと思っている。
エネルギー補給、エナジードリンク、エネルギー保存の法則、エネループ。ぱっと思いつくエネルギー。なんだかどれもバチバチしていて、勢いがある気がしてくる。
振り返れば大学生の時分、レッドブルの到来によって世間はエナジードリンクブーム真っ盛りだった。コンビニの栄養ドリンク棚にエナジードリンクが並び、街ではレッドブルの車と衣装を着たお姉さんがレッドブルを配っていた。大学の前でモンスターを配るお兄さんは地味めだった。そんなエナジードリンクブームの全盛期、僕も多分に漏れずエナジードリンクをごくごく飲んで青春を謳歌していた。あの何とも言えない味、「今日あまり寝てなくてさ、、」と言いながらぐびっと飲むアレな学生の典型だった。
今現在、僕にとってエナジードリンクは古い友人のような立ち位置にいる。飲みたいと思うことはあれど、あの頃のように常飲することはない。最近は好きな芸人さんがyoutubeでエナジードリンクの話をしていて、久しぶりに飲みたくなった程度だ。
今回は「自分に必要なエネルギーは何なのか」というところから「手前のエネルギーだけでままならないから植物や太陽に力添えをしてもらうようになるまで」の話を今回はしたいと思っている。
ふとエナジードリンクを常飲している状態に立ち止まった当時の僕は、なぜエネルギーを欲しているのだろうかという疑問にぶち当たる。このエネルギーはいるのかいらないのか、もっとエネルギーの質をよくできないか、こんなにイージーにエネルギーを補給していたら自分の中のエネルギー吸収機能が怠惰になっていくんじゃないか。
考えてみるとエネルギーが足りないわけでもなければ、必要以上のエネルギーが欲しいわけでもなかった。(味は好きだった)何より大事なのは、エネルギーに満ちているという気概、エネルギーは足りているのだという気持ち、エネルギーが体内に巡っているというイメージの問題だった。人一人のエネルギー量なんてたかが知れていて、ちょっとやそっとの事で元気がなくなってしまったりする。それは寝不足だったり、友人との何気ない会話だったり、低気圧だったり。そんな時に必要だったのが「よし、エナジードリンク飲んだぞ、だから大丈夫だ!」というスイッチだった。そう考えると、気持ちをいれるためだけに、この量の糖分やカフェインその他諸々を一気に飲むというのは少しリスクが高い。エナジードリンクは僕に必要がなかった。
エナジードリンクをやめた僕が変えたのは服装だった。無地だったズボンを箪笥の奥に押し込んで、動物柄のズボンを買い漁った。ヒョウ柄のズボン、シマウマ柄のズボン、ユキヒョウ柄のズボン、キリン柄のズボンは高くて諦めた。こうして僕は白Tに動物柄のズボンを履く人間になった。シマウマのズボンを履くときはシマウマのヒョウ柄のズボンを履くときはヒョウのエネルギーを身にまとっている感覚になれた。やっぱり結局気持ちの問題だった。この時の写真を見直すと動物柄人間ばかりが写っているので少し笑える。
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この根底には大阪のおばちゃんの街頭インタビューの言葉がある「ヒョウ柄の服着るとな、エネルギー湧くねん」と全身ヒョウ柄、ヒョウの顔のついた服を着る大阪のおばちゃん。彼女のインタビューを見て、大阪のおばちゃんがあんなにもエネルギッシュな理由がわかった気がした。
そんな服装を1年ほど続け、動物柄人間の時期も収束していき、草木染めと出会う。ほうれん草のお浸しを作っているときに「この色を残したい」と思ったところから始まり、図書館で草木染めを調べ、試行錯誤をした。
長野県に移住してきて初めて知ったタンポポの旬との出会いも大きかった。コロニーが形成されるほどに群生するタンポポを見た衝撃、都会では一年中ちょこちょこ咲いているタンポポが川辺一面を黄色く彩り、一週間もすればすべて綿毛に変わるという刹那感。タンポポに旬があることを初めて知った。そして「タンポポで草木染めをしよう」と決め、タンポポを摘みまくった。
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袋がパンパンになるまでタンポポを摘んでもタンポポはまだまだ咲いていた。そしてその大量のタンポポを鍋で煮た。はじめはタンポポの少し厭な匂いが部屋に広がったかと思うと、しばらくしてそれが抜け、甘い蜜の匂いに代わっていった。タンポポってこんなに甘い匂いがするのかと感動を覚えた。そしてタンポポTシャツが完成した。
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初めて上手くいった草木染め。淡い黄色のTシャツに袖を通すとふんわりと優しさに包まれているような気がした。「コレだ!僕が求めていたエネルギーはコレだ!」そうとしか思えなかった。エナジードリンクの強烈なエネルギーではなく、動物柄のなんちゃってエネルギーではなく、植物の持つふんわりとしたでも確実にここにあるというエネルギー。
考えてみたら当たり前だった。自然のエネルギーは太陽から生まれる。太陽光発電はさることながら、植物の光合成、その光合成によって作られたエネルギーを食する動物、お肉や野菜のエネルギーを食べる僕の中を巡るエネルギー。インドに光合成ができる人がいるというがそこまでにはなれない僕は、太陽の光を色素に変える植物で染めをすることで、衣服にエネルギーを取り込むことに成功したのだと確信した。
それからはエネルギーを身にまとう感覚で草木染めの服を着るようになった。自身のエネルギーでは少し荷が重いものを背負ったときに、植物のエネルギーは助けてくれる。それだけでなんだか大丈夫な気がした。どんな時でも自分のエネルギー以外のエネルギーが力添えをしてくれていると感じられるありがたさ。例え気持ちの問題だとしてもあるとないでは大きく違うエネルギーの加算だった。
そして新しいエネルギー装着の方法として組紐をはじめる。草木染めの服を着ることは、夏はいいけど冬は難しかったり、似合う似合わないというのも問題だった。どんなに草木染めの服がエネルギーに満ちていても、ファッショナブルな服装をしたいときもある。そんな中でも太陽エネルギーを身に着けられる方法。それが組紐だ。
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糸を草木染めで染める。そしてその糸で組紐を作ることでブレスレットやキーホルダーとして気楽に気軽に草木染めのエネルギーを身に着けることができる。そして何よりかわいい。
僕の中で草木染めの新しい扉が開いた気がする。
興味がある方はいつでも連絡ください。一緒に作りましょう。