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何者でもない≪重度障害児子育て≫
数年前、友人から紹介したい人がいると、重度障害を持つ成人女性のお母さんと知り合う機会がありました。
そのお母さんは、娘さんを連れて障害についての講演会を行ったり、福祉イベントを開催したり、重度障害者向けの福祉グッズを考案したり、とにかく精力的に活動している方でした。
娘さんは成人されているとはいえ、重度障害のため自立しているわけでなく、また入所しているわけでもなく、自宅で介護をされています。
18歳を超えると重度障害だとデイサービスも受け入れてくれる施設が極端に少なくなります。そのため、毎日の利用は難しく(空きが出ることがまずなかなかなく、常に順番待ち状態)、学校もないため、自宅で見ることが多くなります。
それでも、そのお母さんは娘さんを連れて色々な活動を行っていて、私はそのことに、ただただ驚かされ、本当に真似できないくらいすごい人だと思っていました。
でも、人によって受け止め方は様々です。
そのお母さんは色々な活動をしているので、有名な方でもあります。
会ったり話したりしたことはないけれど、その人のことを知っている、聞いたことがあるという人が多いのです。
ある日、数人のお母さんたちと話していると、その方の話になりました。
「本当にすごい人だよね」と私が言うと、「でも、あの人はさ、娘さんあってのあの人じゃん。あの人だけだったら何者でもないんだよ。娘さんがいないと成り立たないじゃん。」と言う人がいたのだ。
でも、私は同じように重度障害の息子がいても、あれだけの活動はできない。すでに【今】が大変で、それ以上に予定を増やそうと思わないし、活動をするということは自分の負担が増えるということだもの。と思ったけれど、相手の言葉に驚いて声には出せなかった。
大きな活動をたくさんして、今を変えたくて、次の世代の人が少しでも安心して子育てできるようにと頑張っている人でも、あの人の力ではない。娘さんがいなければ何者でもないと言われてしまうのか。
そう言わせるものは何なのだろうか。
自分はしたいと思っていてもなかなかできない中で、実際に行動に移し実行することができる人への嫉妬のようなものだろうか。