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忘れません≪重度障害児子育て≫

先日、訃報が届きました。
療育センターで息子の担当医だった先生です。
まだ50代、早すぎるお別れとなってしまいました。

療育センターでは医師の受診がさほどなく、相談事などがあったり、リハビリの先生が改めて医師から指示がほしいときなどに年に数回受診していました。

数か月前、受診予約を入れていたのですが、「先生が体調が悪いので今回はキャンセルさせてもらいますね。」と事務の方から連絡をいただいていて、風邪でも引かれているのかなと軽い気持ちで思っていました。
訃報を聞き、本当にまさかという気持ちで、信じられませんでした。
困ったり、迷ったりしたときに受診すると、はっきりと明確にお返事をくれる先生でした。曖昧でなく、きちんと伝えてくれる先生でした。信頼できる先生でした。本当に、本当に感謝しています。

はじめてお会いしたのは、息子が1歳になる前の初夏だったように思います。
大学病院からの紹介状を持って初めて療育センターに行った日。
診察室前で待っていると、看護師さんが、数人で「大丈夫かな。」「どうだかなぁ。」と息子と私を見てウロウロ。
え?なになに?と不安そうな顔をすると、看護師さんが、「大丈夫、良い先生なんだけどね。」と、声をかけてきた。
なんだけど?けど?なに??
『こ、こわい先生なんですか?』と思わず聞くと、
「え、こわい?こわい・・・、口数が多い先生ではないけど、良い先生ですよ。でも・・」と、看護師さんが言うので、でも???と思って次の言葉を待っていると、「すんごく暑がりなんですよ!診察室が寒いかもしれません!」と返事が。
思わぬ答えに、初めての病院での緊張が解け、クスっと笑ってしまいました。
「寒そうだったら、ひざかけ持っていくから、安心してね。」と看護師さんに言われた頃、診察室から名前が呼ばれました。

入ると、クマさんというか、木こりさんというか、そんな雰囲気の先生が座って待っていました。
余計な話はせずに淡々と必要なことを聞かれ、私はそれに一生懸命に答えた記憶があります。そして、PTとSTのリハビリを行った方が良いということになりました。
(診察室は心配したほど寒くはありませんでした)

リハビリを始めてから半年くらい経った頃の受診では、緊張せずに色々と息子のことをこちらからも話すことができました。すると、先生から「親付き添いの幼稚園みたいなのに行ってみる?」と聞かれました。
その頃息子はまだ1歳。幼稚園?みたいなの??と不思議そうな顔をしていると、「行ったら良いよ~。週に1回だけどね。見学に行けるようにしますね。」と、私の返事を待たずに先生が決めてくれた。
それは児童発達支援で未就学児が通うクラスの勧めでした。
息子はここで就学まで毎週金曜日、楽しい時間を過ごし、私も他のママさんたちと交流できる機会になり、家でこもりっきりだった私たちにとって、親子で有意義な時間を過ごせる場を紹介していただけて、本当にありがたかったです。

その後も、相談事を色々しました。

「立つときに足に体重がかかるのに慣れないみたいで、歩行器や立位台をとても嫌がります。こんな調子で歩行器を使ってでも歩けるようになるのでしょうか。」
『歩行器や立位台で立つのは、歩くための練習ではないんですよ。体を立てることによって、重力がかかり、体の中の臓器をあるべき場所にきちんと配置するために行っています。寝てばかりいると、臓器の位置が体にとって悪くなることがあるから。』

「歩行器に慣れてきたみたいなんですが、歩行器で移動できるようになるでしょうか?」
『なんで歩くことにこだわるの?歩けなくても、電動車椅子を使って移動できたら良くない?移動する方法はたくさんあるよ。』

人によってはあまりにもはっきりとした返事が返ってくるので、ダメージが大きいみたいですが(夫がそうでした)、私は先生の言葉がすっと入ってきて、分かりやすく、とても好きでした。
はっきり言っていても、こちらのことを考えて言ってくれているのが伝わるというか、プラス思考の言葉の強さというか。
いつも、「なるほど、そうか」と思わせてくれる言葉をくれました。
だから先生と話すと毎回目から鱗で、何か迷ったら先生に相談すればきちんと答えてもらえるという安心感がありました。

だから今、とても心細く、心の支えを失ったようです。

先生、お礼も言わせてくれないなんて、あの診察が最後だなんて。

質問に、ちょっと上を向きながら腕組みをして、考えを巡らせながら、にっこりはしないけど、微笑みながら息子についてアドバイスをくれる、優しい先生を思い出します。

本当に、ありがとうございました。

心よりご冥福をお祈りいたします。





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