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大補強敢行のバルセロナは今季どうなる?

今シーズンも世界が最も注目するクラブの一つがタイトル獲得へ着々と歩を進めている。
昨季は12季ぶりの無冠に終わったバルセロナだ。
このスペインの名門は、昨年11月にクラブの黄金期を中盤で支えたレジェンドでもあるチャビが監督に就任し、一気に変革の時を迎えた。
新シーズンに突入し、層の厚いスカッドを擁してタイトルを狙うチャビバルサの今季は一体どうなるのだろうか。


苦しい財政でも大補強

今季のバルサは例年にも増して本気度が違う。
主にコロナ禍、近年のヨーロッパの舞台での低迷によって観客収入が激減したこと、また前政権の失態が原因となって、現在のバルセロナの財政状況は決して良いものとは言えない。ラポルタ政権に代わった昨年度、そして今年度もリーガのサラリーキャップ問題に苦しめられた。

サラリーキャップ制とは、クラブが人件費などの支出として使うことのできる予算を、そのクラブの収入を基準として上限を設ける制度のことである。バルサが所属しているラ・リーガでは収入の70%を人件費の支出に使うことができると決められており、この割合を超えて選手の人件費が発生した場合は、超過した分の選手登録ができないことになっている。

前述の通り、バルサのクラブ財政は大幅な収入減によって大きく傾いている。そこで、クラブの収入が少なく戦力補強が十分にできないバルサは、放映権やクラブスタジオといった、クラブの将来的な収入として見込める保有資産を前借的に売却することで収入を増やし、獲得できる選手数を増やした。

以下は主な獲得した選手のリストである。()内は、前クラブと移籍金。
・レヴァンドフスキ(バイエルン、€4500万)
・ハフィーニャ(リーズ、€5800万)
・クンデ(セビージャ、€5000万)
・ケシエ(ミラン、フリー移籍)
・クリステンセン(チェルシー、フリー移籍)
・ベジェリン(アーセナル、フリー移籍)
・アロンソ(チェルシー、フリー移籍)
クラブの将来的な収益になる資産を売却して、これだけ移籍金の高額な名の知れた選手たちを獲得したことからも、今季のバルサは本気だと言えるだろう。それ故に、最低一つのタイトル獲得はマストと言える。

強力なスカッド

22-23バルサのスカッド

上の画像は22-23シーズンの主なメンバーだ。今季のスカッドは非常に層が厚く、強力なものとなっている。特に前線3枚のレヴァンドフスキ、デンべレ、ハフィーニャはCLの舞台でも屈指のコンビとなっている。クロスやシュートの質だけでなく、ランニングの質と量、単純なスプリント力や突破力など様々な面で飛びぬけた存在感を既に示している。

そしてバルサを語るうえで外せないのが、ペドリ、ガビ、ブスケツというスペインの中盤である。特にIHのペドリとガビは、まだ10代という若さでありながら、このチームの主力を張っている。彼らは巧みなプレス回避の技術と、高い戦術理解度から生まれる突出したアイデアを持っており、ヨーロッパでもトップの安定感がある中盤となっている。

ベンチに控えるメンバーもかなり強力だ。特に中盤では、F.デ・ヨングやケシエといった強度高く取り組めるメンバーが揃っている。また前線では、アンス・ファティやメンフィス・デ・パイ、フェラン・トーレスなどの強烈なタレントを持っている。これらのタレントを擁して、疲労の重なる相手を一気に後半から一気に粉砕することができるのが、今季の一つの武器となっている。

チャビの基本戦術は従来通りの433である。バルサというチームの哲学、すなわちポッゼッションによるゲームコントロールが基本であるが、今季は現代的なハイプレスを取り入れたフットボールを展開している。

人の配置で特徴的なのは、右SBがアンカーのブスケツの横でゲームメイクに参加することである。昨シーズンはダニ・アウベスがそのタスクを担っていたが、今季はクンデとベジェリンが担うことになる。
この配置のメリットとしては、内に絞ったSBからの配球の選択肢が広がることである。外に張った場合にボールを前進させようと思うと、パスコースの選択肢がWGの選手か、IHの選手に限定される。しかし、内に位置を取った場合、それに加えて0トップ的に下りてきたCFへの選択肢も生まれる。そして、それらを相手のプレスの出方を見ながら選択していくということになる。
パスコースの選択肢の多さはその分ボールの前進ができる、つまりゴールに近づく確率を高めることができるということになる。このSBの位置を内に取らせる戦術は、ボールの保持の質を高めることによって、ゴールを目指すバルサのスタイルとマッチした配置の特徴と言うことができるだろう。

他にも、かつてバルサで監督として一時代を築いたペップ・グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティでは、右SBのカイル・ウォーカーをかなり中央でプレーメイクさせる配置を取っているように、SBを内に絞らせる配置は主に欧州五大リーグを中心に採用されつつある。

バルサの新しい取り組み

ボール保持の質を高めることも重要であるが、当然フットボールには相手の保持、自分達の非保持の場面も存在する。チャビが今季から新たに取り組んでいることとして、非保持の場面でのかなりハイラインで前からプレスを仕掛けているということがある。
昨シーズンは今季ほどのハイプレスには出ていなかったが、2年目に臨むにあたり、チャビは新たにより高い位置でのボール奪取、ショートカウンターで点を取ることにより重きを置いているようだ。

二年目のチャビ、見えてきた課題

ハイプレスを取り入れ、守備面では進化を見せているバルサ。攻撃面でも人の配置を工夫するなどしてプレーの多様性を生み出そうとしているが、一方で相手の出方によっては課題が見られるのも事実である。

それが見られたのが、10月初めに行われたラ・リーガ第7節のマジョルカ戦とCLグループステージのインテル戦だ。スコアは、マジョルカ戦では1-0と勝利したものの、インテル戦では0-1で敗戦した。

この二戦に共通していたのは、バルサが圧倒的にボールを支配し、逆に相手が5バックで引いて守った中で、ボールをゴールに近づけるためのパターンとアイデア不足があったという点だ。
マジョルカ戦では、541のブロックを作られた外側において、かなり遅いトーンでボールを回すことに終始した。加えて、ゴール脇のニアゾーンに選手が飛び込む動きや効果的なサイドチェンジも少なかった。またインテル戦では、WGの選手の突破では優位性はあったものの、相変わらずローテンポな試合運びになってしまうなど、マジョルカ戦と同じ現象が見られた。
前述したとおり、今季のバルサの武器は、後半から一気に相手を粉砕することができるメンバーを揃えている点である。この選手層を最大限使って、前半からハイテンポな試合運びで相手を疲弊させ、後半一気に畳みかけるというのが今季の序盤の良い時の戦い方だった。インターナショナル・マッチウィークで怪我人が続出したとはいえ、マジョルカ戦でもインテル戦でもベンチには強度高くプレーできる人材は複数いた。

今後の課題としては、高い強度とハイテンポを安定させることができるか、そしてサイドチェンジや中盤ライン間でのボール受け、相手のニアゾーン攻略といった相手が翻弄される展開を前半でどれぐらい作れるかということにかかっているだろう。前半で得点が取れなくても、相手を疲労させ後半一気にゲームをモノにするだけの下地を作るだけでいい。とにかく90分どれだけハイテンポで継続性を持続させることができるか。尚且つ、ゲームをコントロールできるか。そこに注力してインテンシティ高く振舞っていくべきだろう。

タイトル複数獲得の可能性大あり

かといって、バルサがタイトルを獲得できないかというとそんなことはない。CLではグループステージでバイエルンとインテルに連敗し、苦しんでいるものの、少なくともリーグ戦ではレアル・マドリードと並んで首位を快走しており、エル・クラシコの結果次第では大きくラ・リーガ制覇に近づく。また、今後カップ戦も控えており、国内タイトルの複数獲得も可能な状況だ。これを可能にするのが何と言っても、ターンオーバーをしても、選手層の厚みを活かしてゲームのクオリティが落ちないということだ。
また、タイトル獲得に向けてはチャビ采配も重要だ。上記の課題を解決できれば、国内タイトルだけでなく、CLでもベスト8、ベスト4と勝ち上がっていけるだけの力は持っている。タイトル獲得に向けて、今後のチャビの采配から目が離せない。

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