バルサ復活!ヨーロッパの覇権はどうなる!?

 かつて欧州を席巻した名門バルセロナが復活の時を告げている。一昨年就任したレジェンド、チャビ監督の下で今季は現時点でリーグ戦はわずか2敗、失点は8で首位を快走している。2位のレアル・マドリーとの差も7ポイント差まで広げ、ラ・リーガ優勝はほぼ既定路線と言われている。昨季の低迷からなぜここまで復活したのかを深堀していく。

鉄壁の要塞、BACKの結成

 前述の通り、今季のバルセロナはリーグ戦22試合でわずか8失点と驚異の堅守を見せている。それを可能にしているのが、新たな最終ラインのトリオB(バルデ)、A(アラウホ)、C(クリステンセン)、K(クンデ)だ。特にアラウホはディフェンスリーダーとして守備陣を牽引し、圧倒的なカバーエリアの広さ、対人力を発揮している。他の3人も今季になって加入・台頭してきた選手たちで、バルデは下部組織ラ・マシアから、クリステンセンはチェルシーから、クンデはセビージャから加入した。この4人の安定感はスペイン国内のみならず、ヨーロッパでもトップクラスの安定感を誇るDF陣と言っていいだろう。

若手の進化

 ここ近年のバルセロナを支えているのが、下部組織上がりの若手選手の台頭だ。昨季はペドリがバルサの心臓を担うようになったが、今季はガビ、バルデといった若手選手たちが絶対的レギュラーとなった。ガビは昨季から出場はしていたものの、今季になってボールの持ち運び、守備時の強度といった面でより凄みを見せており、今のバルサに欠かすことのできない存在へと成長した。バルデもここ数年懸念されていたジョルディ・アルバの後継問題を完全に解決するほどの活躍を見せており、むしろジョルディをベンチへ追いやるほどのパフォーマンスだ。今後もマルク・カサドやパブロ・トーレといった、Next Gavi and Bardeになり得る選手たちに注目したいところだ。

絶対的エースの存在と最適解の発見

 昨年夏にバルセロナはドイツの名門バイエルンからロベルト・レヴァンドフスキを迎え入れ、絶対的9番を手に入れた。通常バルセロナというクラブのフットボールに適応するには、特にFWの選手は苦労するパターンが多い中で、レヴァンドフスキはそれを感じさせていない。現時点でリーグ戦15得点とピチーチ(得点王)を独走しており、攻撃陣の絶対的支柱となっている。

 チャビ監督はシステムは433から442気味に変化する、Falso Extremo(偽WG)を採用している。偽WGとは初期配置でWGの位置の選手が試合中に流動的に中盤に入り、攻撃に変化を加える戦術のことである。かつてのバルサ黄金期では、現在ヴィッセル神戸に在籍するアンドレス・イニエスタが偽WGを担っていた。このポジションを現在はガビが主に務めている。元々チャビは通常のWGを配置する433を採用していたが、攻撃のバリエーション不足による得点力不足に悩まされていた。そこで編み出した最適解が、WGの偽化によって中盤の厚みを生み出し、攻撃の多様性と精度を高めるというものだった。更にそのポジションをカビとペドリで流動的に変更することで、相手に合わせた戦い方が出来るようにもなった。攻撃で異なるプランが持てるのもこのシステムのプラス効果だと言えるだろう。

欧州での敗退と今後の展望

 国内ではほぼ無敵状態のバルセロナだが、ヨーロッパでは対照的な結果となってしまった。チャンピオンズリーグではグループステージ敗退、ヨーロッパリーグでもプレーオフでマンチェスター・ユナイテッドの前に散った。これで2年連続のヨーロッパリーグ敗退となり、このことは困窮するクラブ財政を更に苦しめ、チャビへの強い風当たりへと繋がっている。

 今季は既に獲得しているスーパー杯と首位独走中のリーグ戦の2冠、あるいは国王杯も合わせた3冠が既定路線であろう。幸い2位のレアル・マドリーが今季は怪我人や疲労により調子を落としており、国内2冠あるいは3冠は高い確率で達成するだろう。問題は来季だ。

 苦しいクラブ財政の中でラ・リーガのサラリーキャップ問題により、今季終了後に最低でも2億ユーロを生み出すための人員整理が必要とも言われている。そのため昨年夏のような大型補強はほぼ不可能だ。イニゴ・マルティネス(アトレティック)やギュンドアン(マンチェスター・シティ)、スビメンディ(レアル・ソシエダ)といった選手の名前は出ているが、本当に補強できるかどうかは分からない。

 目立った補強ができない代わりに必要になるのが、チャビの戦術面の向上だ。昨季も今季も試合中の相手の変化に対する自分たちの対応力にバルサは苦しんでいる。これを改善することはつまり監督であるチャビの対応力を高めるということであり、逆に言えばこれができないとヨーロッパの舞台で勝ち進むことはできない。選手は十分揃っている。あとはチャビの手腕にバルサの命運は託されている。
「名選手は名監督に非ず」
チャビはその例外となれるだろうか。彼の監督キャリアを左右する重要なフェーズに今直面している。







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