第二十九話「不動明王」
不動明王
明王編のトップバッターは不動明王です。
明王の中で一番有名であり仏像界でも観音菩薩、地蔵菩薩、とならんで
はるか昔から庶民の身近に存在する仏像です。
「お不動さん」と親しみを込めて呼ばれていたりもしますね。
よく地名などに不動という言葉が入っているのを
見たり聞いたりしたこと、ありませんか?
この不動というのはほぼ不動明王のことだったりもします。
そんな不動明王の姿ですが
顔は一つで腕は2本、右手には剣、左手にはロープのようなものを持って
磐石という岩の上にいて、背後には炎を背おっています。
お経の中では「金剛石に座し」とも書かれています。つまりダイヤモンドの上にいるということにもなります。ゴージャスですね。
しかし肌の色は青黒く醜い色とされていてこれは煩悩の泥の中で人々を救おうとしている様子を表しているそうです。
なぜこのように不動明王の信仰が全国に広まったのでしょうか?
きっかけの一つは平安初期の平将門の乱、
このとき手に負えない平将門を懲らしめるために京都の神護寺から不動明王像を借りて、遠く関東成田の地で調伏の法を行いました。
見事、平将門を懲らしめて役目を終えた不動明王を京都に返そうとしたところ、なぜか不動明王が動かない、仕方がないのでその場所にお寺を建てました。これが現在の成田山新勝寺だと言われています。
庶民へ不動人気が広がったのは鎌倉末期の元寇です。
この時は全国各地で敵国退散の呪法が行われ、その主役が不動明王だったそうです。
他にも不動明王は庶民信仰の中では疫病退散の仏としても信仰を集めています。
昔は病気の治療の為に山伏などが祈祷をしていましたが、その時もしばしばお不動さんに祈っていました。また現代でも病気を治してもらうためにお願いに行くのに一番多いのは、お不動さんと薬師如来なんだそうです。
そういえば歌舞伎十八番の中に『不動』という演目もあります。これも人気の秘密の一つかもしれません
とにかくあの怖い姿で自分たちに害を及ぼす災いや病をやっつけて欲しい
そんな願いが全国的に広がる人気に繋がったのではないでしょうか。
つづく
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