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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.94


[103枚目]●ブレッド『神の糧』<エレクトラ/ワーナー・ミュージック・ジャパン>(15)


※本文を書くに当たり、宇田和弘さんのライナーノーツを大いに参考にしています。


オリジナルは71年、ブレッド3枚目のアルバムである。原題は『Manna(マナ)』。旧約聖書内の言葉で、モーセの祈りで天から与えられた食物の意。一般的には“パン”と解釈されているらしい。もしかしてグループ名との関連を考えたのだろうか。アルバムには宗教的ムードは一切無い。ビルボードの最高位が21位。


私が所有しているのは『新名盤探検隊』シリーズの1枚。確かどなたかのレビューを読んで面白そうだと思った事と、洋楽を聴き始めた頃流行っていた「If」が入っていたのが購入のキッカケになったような気がする。


ブレッドが結成されたのは68年、ロサンゼルスにおいて。デヴィッド・ゲイツ、ジェイムス・グリフィン、ロブ・ロイヤーの3人が最初のメンバーだ。70年セカンド・アルバム『On The Waters』リリース前にドラマーのマイク・ボッツがメンバーに加わっている。本盤も4人体制である。ボッツ以外の3人の担当は、本盤のクレジットではゲイツがヴォーカル、ギター、キーボード、ヴァイオリン。グリフィンが、ヴォーカル、ギター、キーボード。ロイヤーがギター、ベースとなっている。


曲作りは、ゲイツ単独とグリフィン=ロイヤーのコンビの2派に分かれている。これが実は問題で、シングル盤は常にゲイツ作品がA面だった。グリフィン=ロイヤー組としては面白くない。さらに、ヒットを絶やさないようせわしない要求をしてくる<エレクトラ>の姿勢にも不満が募った。本アルバムも前作から半年でリリースされている。結局ロイヤーはこのアルバムを最後に脱退してしまう。その後ソングライターとして活動していく彼は、グリフィンとのコンビも崩さず、ブレッドにも楽曲を提供し続けた。


1. Let Your Love Go


ゲイツ曲。「ソフト・ロック」の旗手にしてはハードな立ち上がりだ。リズムの刻みが力強い。「Too Much Love」と共にシングル化(70年)してビルボード28位。尚、71年には「If」と共にシングル化。また、73年には「If」と1stアルバム(69年)に収録されている「It Don't Matter To Me」と一緒に3曲入りのEP盤がリリースされている。


2. Take Comfort


グリフィン=ロイヤー曲。動と静のコントラストが面白い。71年またしても「If」と合わせてシングル化。


3. Too Much Love (あふれる愛)


グリフィン=ロイヤー曲。アコースティックな調べが印象的な彼ららしい曲。ゲイツ曲の「Let Your Love Go」のB面なのだが、こちらの方がキャッチーな気もする。グリフィン=ロイヤー作品が万年B面扱いというのも、たしかに極端に思える。


4. If


ゲイツ曲。何度聴いても聴き飽きない、永遠の名曲と呼べるだろう。ただし、チャート的にはビルボード4位にとどまっている。あの、夢の世界に誘うようなサウンドは、プログラミングされたシンセサイザーにエレキギターをつないで弾いているそうだ。


5. Be Kind To Me (優しくしておくれ)


グリフィン=ロイヤー曲。タイトでスタイリッシュなサウンド。特にドラムは、バックビートや要所要所でのフィルインが効果的に作用している。


6. He's A Good Lad (彼はいい奴)


ゲイツ曲。甘い声に導かれる、フォーキーでポップな、ブレッドのイメージ通りの曲。ストリングスやギターも盛り上げている。グループにヒビが入っている状態を考えると皮肉っぽい曲に思えるが、いつ作ったか不明ではあるし・・・。とにかくパフォーマンスは一体感がある。プロフェッショナル同士だからこそ、意地もあるし対立してしまう要素もあったのかも知れない。


7. She Was My Lady


ゲイツ曲。甘さを排した落ち着きのあるロック。グリフィン=ロイヤー曲が得意とするような“渋み”を感じる。ソフトなイメージだけでは納得いかない部分もあったのだろう。


8. Live In Your Love (あなたの愛に生きて)


グリフィン=ロイヤー曲。71年、4枚目のアルバム(71年録音72年発表)に入っている「Mother Freedom」のB面でシングル化。ドラマチックな曲である。


9. What A Change


ゲイツ曲。哀感のあるメロディーではじまり、気持ちを一新するような展開に移る。まさに“チェンジ”している。ドラムのフィルインも相変わらず良い。


10. I Say Again


グリフィン=ロイヤー曲。声の重なりや、特徴あるベース音などで夢幻的な雰囲気が作られている。


11. Come Again


ゲイツ曲。アルバム終盤らしい静かなバラード。


12. Truckin'


グリフィン=ロイヤー曲。4枚目のアルバムのタイトル曲「Baby I'm - A Want You」の裏面でシングル化(71年)。ラストは軽快なドライヴィング・ミュージックで終わっている。


ロイヤーの後釜は、“レッキング・クルー”の一員だったラリー・ネクテルだ。彼は、ピアノ、キーボード、ベース、ギター、ハーモニカをこなす。ライブではベースを弾くことが多かったようだ。ブレッドは、グリフィンとゲイツの確執を修正できず73年に解散してしまう。しかし、76年にゲイツ、グリフィン、ボッツ、ネクテルの4人で再結成し、翌年アルバムを発表、ツアーも行った。また、その後グリフィン、ロイヤー、ネクテルの3人でトースト(ブレッドを焼いた?)というグループを組んでいる。また、96年にはブレッド結成25周年のツアーが開催された。05年、グリフィンとボッツはガンで亡くなり、ネクテルは09年心臓発作で亡くなった。ゲイツのソロ・アルバムは94年を最後に出ていないが、98年にイギリスの競技大会『コモンウェルスゲームズ』のテーマ曲「Standing In The Eyes Of The World」を発表している。マレーシアのエラという女性歌手が歌っているが、ゲイツ版もYouTubeに上がっていた。尚、ロイヤーは2010年以降の活動が明らかになっていない。

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