レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.100(2)
[109枚目]●ファクツ・オブ・ライフ『コンプリート・レコーディングス』<クリンク>(08)
※本文を書くに当たり、鈴木啓志さんのライナーノーツと原盤をコンパイルしたトニー・ラウンスのライナーノーツを大いに参考にしています。
【ディスク1】
8. What Would Your Mama Say
タイトな演奏の中、ジーンが豊かな歌唱を聴かせる。ジョージ・ジャクソンとレイモンド・ムーアの作品。ジョージの物は、05年<グレイプヴァイン>のデモ音源集に収録。
9. Givin' Me Your Love
ミリー・ジャクソンとキング・スターリングの作品。ストリングスが印象的なフレーズを奏でる。チャックが中心に歌っているようだ。
10. That Kind Of Fire
(13)もそうだが、J.ノーマン・スコット作品。鈴木さんの解説によればオハイオのシンガーで、ミリーとの繋がりは不明との事。キースらしい強めのバリトンからソウル・チルドレンぽいスケールの大きさも感じる。
11. Love Is The Final Truth
前の曲が迫力主体ならこの曲はスウィートさを前面に出している。「Sometimes」の裏面。ニューヨークのラジオDJ、ヴォーン・ハーパーの作品。
12. If You Can Give, You Can Get
ゴスペル・トゥルース名義の(7)「Uphill Peace Of Mind」のフリップ・サイド。ミリー・ジャクソンとブラッド・シャピロが作った。女性コーラスも入り、テンポが良くアーシーな歌いっぷりを聴かせる。(7)もそうだが、デビューの最初は迫力重視で考えていたのだろうか。
13. L-O-V-E
「Caught In The Act (Of Gettin' It On)」の裏面。(12)(13)はシングル盤のみの曲。ミディアム乗りの心地良い曲。
【ディスク2】
78年のアルバム『A Matter Of Fact』の全曲と(1)のシングル・ヴァージョン。本盤と同じ写真を使ってありやや紛らわしい。ウッカリすると間違えます。
1. Did He Make Love To You? (Album Version)
なんといってもミリー・ジャクソンの参加がポイントである。(10)がシングル版だがそちらには参加していない。情熱的だが抑制の効いたヴォーカルの後、男女のセリフのやり取りが入る。 ミリーは仲裁の為か途中で割り込み、歌声も聴かせてくれる。最終的にはジーンの歌と喋りで終わる。曲を作ったのは、デルズやザ・ドラマティックス、ジ・オージェイズなどにも曲を提供しているハーヴェイ・スケールズと、ハーヴェイ自身の<カサブランカ>作品(78年『Confidential Affair』は特に有名)をプロデュースしているメルヴィン・グリフィンの共作。また当曲は、ジョニー・テイラーが77年<コロムビア>作品『Rated Extraordinaire』で歌っている。
2. We Can't Hide It Anymore
名前を知らなかったが、バリー・マーフィーの作品でポップス系のラリー・サントスが75年に発表、ホット100の36位、イージーリスニング・チャートでは26位に到達している。76年にはリッチー・ヘヴンスも取り上げている。男女代わる代わるにダイナミックに歌い上げる。
3. He Ain't You
ジーンが中心に歌うエモーショナルなバラード。カントリー・シンガーのリン・アンダーソンが、77年ホット・カントリー・シングルチャートで19位の成績を収めた曲。元々は、女優でもあるリサ・ハートマンが76年のアルバムで発表している。作者は、ブラッドリー・バーグ、ディーン・ホフハインツ、ジェフ・バリー、リサ・ハートマン本人の4名となっている。
4. Do You Wanna Make Love
シンガー・ソングライターのピーター・マッキャンの曲。自身が77年に発表し、ホット100の5位に上ったヒット作。ピーターは、クリスタル・ゲイルやホイットニー・ヒューストン他多くのミュージシャンに曲を提供している。男女共、リードからゴスペル風ダイナミックなコーラスにつなぐ部分が盛り上がる。
5. I'm Way Ahead Of You
シンコペーションを効かせたリズムが心地良い。「Sometimes」に同じく、カントリー・シンガーのデュオ、ビル・アンダーソンとメアリー・ルー・ターナーの持ち歌。曲を作ったのはカーリー・プットマンとソニー・スロックモートン。カーリーは「Green Green Grass Of Home(思い出のグリーン・グラス)」の作者でもある。
6. You Always Get Your Way
曲を作ったのは、ジャズ・シンガーでさまざまな楽器も演奏するバーナード・アイグナーとセルジオ・メンデス&ブラジル'77でヴォーカルを務めたソンドラ・キャットン。ジーンが主となり、後半チャックが絡む。
7. It's Only A Matter Of Time
ややフィリー系の感覚もあるナンバー。男女が入れ替わり歌い出す瞬間は特に盛り上がる。ソングライター、プロデューサー、ラジオDJのジョー・シャムウェルの作品。トゥルー・イメージというソウル・グループが81年<フアナ>レコードでカバーしている。discogsによればその盤の作曲者表示にはトミー・テイトの名もあり、フレデリック・ナイトがプロデューサーとなっている。88年独<タイムレス>のコンピ盤『The Sound Of Alabama Soul Vol.1』にも収録されている。
8. This Ain't No Time To Sleep Apart
フレッチャー&フレットと呼ばれる、ガイ・フレッチャーとダグ・フレットの曲。エルヴィス・プレスリーやレイ・チャールズにも曲を提供している。明るい雰囲気の曲。
9. Dr Feelgood
アルバム最後の曲らしく、ゆったりとしている。ジェリー・ゴフィンと、ソロアルバムも著名なバリー・ゴールドバーグの作品。アレサ・フランクリンの曲とは同名異曲。「ドクター・フィールグッド」は、麻薬などの薬物を処方する医師という意味合いがある。
10. Did He Make Love To You? Pts 1 & 2 (Single Version)
ミリーの語りと歌の部分はジーンが担当している。
3人それぞれに実力十分なシンガーなので、グループ活動の短さとその後の消息が不明なのは残念である。音楽界に定着はしなかったが、聴き応えのある曲を残してくれたのは幸いである。
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