レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.5
【過去の投稿です】
[11枚目]●ロゼッタ・ジョンソン『パーソナル・ウーマン』<クリントーン/ソウルスケイプ>(07)
70~75年の録音。ロゼッタは、バーミンガム近郊・タスカルーサの生まれ。幼い頃、親が離婚し、祖父母が暫くの間育てる。祖父は説教師、祖母も敬虔なキリスト教徒。彼女自身も、ゴスペル・ミュージックに傾倒していった。
やがて、母親と共にバーミンガムへ。ゴスペル・クワイヤーで歌う時も、フロントには立ちたくないと言っていた彼女の意識を変えたのは、あるクラブで観たミッティ・コリアのライブだった。意を決したロゼッタは、死ぬ思いでクラブ・マネージャーの前で、唯一歌える曲「オーヴァー・ザ・レインボウ」を熱唱。好評を得て雇われる事になり、急いで、ジャズのスタンダードやアレサ・フランクリンの曲をマスターしたそうだ。
やがて、クラブ歌手をしながら地元のレーベルでレコーディング。そして、後に地元で著名人になるジェシ・ルイスがマネージャーを引き受ける事に。ジェシは、黒人コミュニティ向けの<ショウタイム・マガジン>を発行すると共に、プロダクションも設立。<クリントーン>と<ムーンソング>という2つのレーベルを展開した。因みにレーベル名の由来は、共同設立者の名前、クリントン・ムーンから取ったもの。双方のレーベルに、サム・ディーズが関わっている。本盤収録曲の大半も、サムがコンポーザー及びプロデューサーとして腕を奮っている(他にはフレデリック・ナイト等)。
冒頭のデビュー曲は、「もっと黒っぽく歌えないのか?」と指摘されたらしく、確かにやや弱い。ところが、3曲目辺りから、女性コーラスとのコール&レスポンスが入り、俄然良くなる。その後はサザン・ソウル・マナーに則り、彼女のパワフルな歌唱が生かされている。グウェン・マックレイで有名な「アーリー・モーニング・ラブ」もメリハリの効いた曲になっている。終盤はゴスペル仕立てのものが多く、安心して聴ける。根っからのゴスペル・シンガーなのだろう。そう思ってジャケット写真を見ると、確かに、ソウル・シンガーというより、ゴスペル・シンガーだ。
メジャーにはなれなかったが、一定の実績は上げた。ロゼッタは正しいスペルがRoszettaだそうだが、一般的なRozettaで活動した。それが、最後のシングルだけ正しいスペルでリリースされている。数々のエピソードから、控え目な性格が窺えるが、最後は正しいスペルを主張したのだろうか?
ロゼッタは、引退後、大学で勉強し、やがて会社を経営し成功をおさめている。そう思ってジャケット写真を見ると、今度は実業家然として見える。セミプロ的にステージに立ち、ジャズやゴスペルを歌っていた。
本来ならアルバムの内容に詳しく触れるべき所、彼女の足跡がとても人間的だったので、そちらが中心になった。それにしても、タイトル曲の「パーソナル・ウーマン」、これが最高にパワフルなのだが、YouTubeでヒットせず。残念!
"Holding the Losing hand"
"It's been so nice"
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