
血が滲む涙
【過去の投稿です】

●V.A.『ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム/ザ・ボイス・オブ・ブラック・アメリカ1963-1973』<エイス>(07)
緊張感が走るジャケットにも表現されているように、人種闘争をテーマに編纂された一枚。ソウル・ミュージックの他にフォーク系やポエトリー・リーディングが取り上げられているのも頷ける。ジャンルは異なっていても、各々はバラけてはいない。私はあまりポエトリー・リーディング的なものは聴かないのだが、違和感なく耳に入ってくるのは編集力の勝利だろう。また、テーマがテーマだけに堅苦しいイメージを抱きがちだが、エンターテイメント性も薄れていない。尚かつディープだ。
テンプテイションズ、スピナーズ、シャイ・ライツ、パーラメントといった、ある程度音世界が想像できるアーティスト達も、微妙に雰囲気が違う。しかし、内容は素晴らしい。同じ魂を共有しているからだろうか。人種闘争のコアな部分にも、“ブラックネス”は不可欠のはず。一流アーティストの彼らは、そのブラックネスを掬い取り、音楽をもって表現しているのではないだろうか。聴く側は自然に惹きつけられる。まったく、よく集めたものだ。
ホーマー・バンクスやスワンプ・ドッグも、持ち味を遺憾なく発揮している。彼らの素晴らしさを再認識。
最後に冒頭の曲を紹介するのも変な感じだが、オーティス・レディング「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」。サム・クックの有名曲だ。サムの歌声からは、勇気が伝わり、前方に明るい光さえ見えてくるよう。一方、元来何を歌っても哀しそうに聴こえるオーティスは、強い意志の向こうに、悲壮感が漂う感じ。サムのヴァージョンが、感動の温かい涙を誘うなら、オーティスの物は、血が滲む涙を連想させる。
いくら想像しても想像しきれない世界がそこにある。
♪Parliament "Oh Lord, Why Lord"
♪Swamp Dogg "I Was Born Blue"
♪Otis Redding "A Change Is Gonna Come"
♪Nina Simone "To Be Young, Gifted and Black"