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公共事業の工事と修繕 修繕カテゴリという事実上の緩和措置の必要性を考える(5/5)
※ 前回紹介した 自治体が、工事ではなく、簡易な修繕のカテゴリーで施工しなければやっていけないであろう事情4点
① 建築工事、殊、公共工事については、手続きが煩雑で理解すべき内容が多過ぎる
② 設計・積算の方法が確立されていない(確立しようがない)工事がある
③ 修繕では出す意味があるのかと疑問に思う程に形骸化した規定や書類
④ 型にはめればはめる程、公共による不当な要求の色合いが強くなる
■ 建設系公務員のブラックじみた体質もあるか?
前回までで以上4つの「修繕」を肯定すべき理由を述べてきた。とはいえ、
・書類が多いから嫌だというのは怠惰なだけで理由にならない。ルールはルール。
・設計だってなんとかやりようがあるでしょう。もっと考えろ。
・ちょっとでも意味はあるし、ルールはルール。
・不当なのは公共建築工事を理解していないメーカーや商社が悪い
このような批判が今尚、役所の古い世代の監査員や、ベテランの一部決定権者を中心に支持されているところもある。
末端の受注者と平の担当職員は頭を抱えていることと思う。筆者も経験がある。
法規を軽視するわけではない。しかし、このような理屈でゲンコツを振りかざし、末端を締め上げても無駄仕事、無駄な費用、受注者の苦情が増えるばかりだ。修繕は工事に比べて、例えば書類も少なく、一見、あるべき仕様がオミットされていていい加減に見えるかもしれない。修繕だから公表しないなどという詭弁で誤魔化す職員がいるのも事実だ。
だがそうだとしても、もっと適正なルールに見直さなければどうしようもないのではなかろうか。
だが残念なことに、その議論をゲンコツ振りかざすブラックじみた体質が遠ざけているように思う。
■ 産業は建設業が全てではない もっと全産業を意識した仕組みを
製造業や流通業メインの会社に、建設業法について、まして公共建築工事標準について熟知というレベルまで求めてしまうのは現実的ではない。
また、係る業種における事業体制、業界における金額の積算方法や外部に対する開示方法などの限界を考慮せずに、競争、競争、安く、安く。果てはあれもこれも追加で検討しろと良いところどりをしてしまうと、どう見ても不当になる。
現状の方針では、とてもではないが建設工事の流儀に沿った設計積算など、対応しかねるという製品・サービスの受注者も多いだろう。
また、建設業法では500万円以下の工事(材料費含む)かそれ以上の工事かで建設業法に係る許可業務になるかどうかの線引きが為されるが、これも一品の金額が非常に高額になる設備のメーカーには不利である。
なにせたった一台の機械を据え置いて、周辺の配管や配線はほぼいじらなかったのだとしても、軽々に建設業扱いされた上に、公共というだけで規定や書類がこれでもかと増えるのだ。しかも形式的か、秘密を明かせと迫る書類ばかり。正直やっていられないだろう。
具体的に言えば、機械本体の費用含めて500万円ちょっとの工事に、半日仕事で10万程度で雇った電気配線の結線工事だけの業者があったとして、その業者さんに、従業員の資格証、建設業許可の写、部品の仕入れ伝票、金入りの契約書、保険加入の確認書、施工体制台帳、果ては産業廃棄物のマニフェストに加えて、それをトラックに乗っけて処分場まで追尾して写真撮って、その他にもあれもこれもそれも、何もかも書類を出せ、あくる日には役所がお呼びだからもう1日2日タダで立ち合いに付き合えなどと言われたらどうだろうか。
メーカーさんも大変だなと思う反面、この電気屋さんは、費用的にも労力的にも情報漏洩リスクの増大にしても、心底うんざりするのではないだろうか。
■ 緩和は必要
5回に渡り述べてきたが、以上のような問題が、今後のルール改正によって将来緩和される見込みがあるなら良い。
だがそれが為されず、かといって受注者や、平の末端公務員が、どうにも正確に守れる目処も立たないとなると、やはり「修繕」という経過措置的緩和カテゴリーは、無くしようがないのではないだろうか。
それにしても、ルール上の良し悪しと、運用上の良し悪しと、法規が持つ犯罪防止の効力とが、こうもう噛み合っていないのも珍しいように思う。
筆者が禄を食む業界はこんな場所ばかりであるが、どの業界も似たようなものなのだろうか。。。この国の仕組みはどうにも中途半端でやりづらいところが多々ある。