真・読了のおっさん4 落第忍者乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師 阪口和久 著/尼子 騒兵衛 挿絵・原作
おっさんが読んで面白かったと思う「活字本」を紹介します。
<概要>
■ タイトル他
小説
タイトル:落第忍者乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師
作者:阪口和久 著/尼子 騒兵衛 挿絵・原作
出版年:2013年
分類:漫画、忍者、子供向け、戦国、記憶喪失、軍略、一騎打ち、バトル、友情、喜劇
■ あらすじ
忍術学園1年は組の教師、土井半助は、タソガレドキ忍者、諸泉尊奈門(もろいずみそんなもん)から一方的にライバル視されており、果し状を受け取る。尊奈門を諦めさせるため、準備をしつつ決闘に赴き、手加減しながら説得を試みるも、予想外の事態で崖下に落ち手てしまい、行方不明となる。
タソガレドキ忍者隊組頭、雑頭昆奈門(ざっとこんなもん)は、部下の尊奈門よりこの事態を知らされ、忍術学園に赴く。土井先生不在のため騒がしくなる忍術学園と、この事態を切欠にいつもの「あの城」が動き出し、周辺の国々と忍者たちががざわめいていく。
<読みどころや感想など>
■ 原作好きにはたまらない
原作漫画に登場する幾人ものキャラクターが出演し、各々の個性や立ち位置はそのままに、原作にはない新しいストーリー展開が綴られる。
通常、このボリュームでこれほど多くの登場人物が出てくると、キャラクターの把握も描写が間に合わないか、グダグダと前半のボリュームが大きくなって情報が渋滞してしまうものだ。しかしそこは原作の背景を踏まえた前提で作られており、故にファンならば大いに楽しめる。
ある意味特殊かつ原作ありきな小説だが、十分成立しているのは、NHK教育で30年以上放送されており、認知度抜群だからとも言える。
積み上げられてきた世界観や魅力的なキャラクターの数々は、原作の今後の連載を通じてもそうだが、今回のような小説や、アニメオリジナルなどでも楽しめそうな余白をたくさん残している。
■ 安心して読める
危機的な展開や、登場人物の苦しい心情が覗ける場面はあるものの、例えば絶対に人死には出ないと分かっている作品であるし、多くの時代劇よろしく、勧善懲悪の物語である。
子供向けであることも踏まえてあり、ボリュームも非常に軽くて、大人ならば1日で完読できるのも有難い。
特別な表現や仕掛け、プロットなどを期待するのはそもそも的外れな作品であるので、子供ならば子供目線で、大人ならば懐かしさと、見守るような大人目線で
楽しく読み切ってしまって問題ない。
最近はこのような「おやくそく」が溢れた良作の、特に新作は、減ってきたように思うので、貴重な作品の一つと思う。
■ 乱・きり・しん が脇役?
本編では乱太郎、きり丸、しんべヱの3人組を主軸とした物語が殆どであるが、今回はハッキリした主人公は無いように思う。常に第三者目線で描かれており、
パートパートで土井先生、山田先生、上級生、敵方の忍者といった視点に切り替わる。乱・きり・しんの視点の場面も少々あるのだが、本作では脇役に近い。
いつもと違うスピンオフ、外伝、歴史もので例えれば異説のような見方になると思う。そういう意味では新鮮さはある。
<その他>
■ 映画が令和6年12月20日より公開される
久々に映画を見ようと思って探していたら、令和6年の頭ぐらいに、本作の映画化が決定したとの情報を知り、ひそかに楽しみにしていた。
子供がいれば一番に一緒に見に行ったに違いないのだが、おっさん一人でも見に行きたくなる。子供の頃からよく見ていた作品だが、映画化は意外にも11年ぶりだとか。懐かしさ半分、新鮮さ半分の期待を抱いている。
そんなわけで、事前に原作小説を読もうと思っていたところに、復刻版が発売されていたので購入(タイトル写真のとおり)。本小説は人気が高かったらしく、初版本はほとんど見当たらない。そして人気故にファンから「映画化を熱望された」とも言われている。読んでみて確かにこれは「劇場版忍たま乱太郎」であると感じた。脳内でお馴染みの声優さん達の声も再生されるし、キャラクターの顔や背景すら浮かぶようだ。絵が動いて喋ってくれることをどうしても期待してしまう。
■ 知らない(か、忘れている)キャラクターもいた
タソガレドキ忍者隊の諸泉尊奈門(もろいずみそんなもん)と、タソガレドキ忍者隊組頭の雑頭昆奈門(ざっとこんなもん)は知らなかった。
子供の頃見た時にはいなかったように思う。土井先生をライバル視している若い忍者とその上司である。戸部先生に付き纏う花房牧之介は知っていたが、土井先生にも自称ライバルが出現していたのか。。。
かくも彼らと似ている関係だが、土井先生と尊奈門はまた、違った風合いにも思う。戸部先生は無視していたが、土井先生は相手をしてあげてなだめるのか。
かくも長期連載なので色々な要素が詰まっている。久しぶりの読者、視聴者にも新しい発見や魅力があるのではないだろうか。