見出し画像

窓際のおっさん 役所技術系の縦割りな現状(1/4)

 役所組織は縦割りであるという評価が今もある。経験のある筆者もそう思う。メディアや有識者は、主に中央省庁を「縦割り行政」などと言って揶揄することが多いように思うが、大きな組織になると縦割り化を免れるのは難しく、地方自治体でも独立行政法人でもその傾向がある。

 筆者は技術系なので、技術系組織の縦割りを沢山目の当たりにしてきた。

 今回は「役所技術系の縦割りな現状」と題して、非効率や理不尽など、筆者の体験を交えながらお伝えしたいと思う。

■ 水関連事業の例

 水道の仕事を割とやっていたのでその話からしたいと思う。ご存じのとおり、水道は浄水場から需要に届くまでに、地面に埋まった配管を使用することが殆どである。従って、道路を掘削する工事が多々ある。
 ここで道路となると様々な部署と関わりを持つことになる。組織によって呼び名は異なるが、概ね以下のとおりである。

 道路工事、道路管理、まちづくり、消防、警察

 読んで想像できると思うが、水道局が道路を掘って配管を敷設するために。。。

 ① 道路工事を司る部署で工事計画を確認・調整する必要がある。
 ② 道路を管理している部署に計画を伝え、調整や制約条件を確認する必要がある。
 ③ 開発地域やその近辺であれば、まちづくりの部署と確認・調整する必要がある。
 ④ 水は消防活動に使われるため、その確認・調整と、施工後の報告が生じる。
 ⑤ 道路を使用する時は警察に届け出る。道路占用は県庁(または政令市)だが、占用であっても、渋滞などで警察の交通関連部署が動く可能性が高いので、場合によっては無視はできない。

 他にも、大きな建物の前を工事する時は、その建物の所管課や相手行政組織と連絡する、などなど。。。細かいところで色々な調整が必要になるが、何とも非効率である。

■ 棲み分けは仕方がないが、人間が面倒

 じゃあ統一しろ、という考え方もあるのだが、そう単純にはいかないのもお察しのとおりである。無論、連携できるところや統合できるところは各々で融通や工夫を利かせている組織も多々ある。

 しかし、最も面倒なのは、調整の時に関わる人間(自組織、他組織の職員など)である。
 単にルールに真面目という人もいるが、大概は判断力が無い、責任が取れないという事なかれ主義の人間が縦割り組織には多い。
 そんな面倒なパターンの例をいくつか以下に紹介する。


 ① 自局外のルールというだけで拒否

  土木工事で、今後の安全のための注意喚起を、図面に載せるか載せないかという話があった。具体的には、道路を掘削する工事に関して「水場」と呼ばれる、所謂掘ると湧水が出て工事が難航する地域があるのだが、その記録をどうするかで揉めたのである。

  話の切欠となった工事は水道局の工事で、水場を想定していなかったが、掘ってみたら水場であったという場所があり、現場判断で急遽土留めを設置し、契約変更も生じたという案件だった。

 安全対策の規定では、湧水時は必要に応じて土留めの壁を掘削穴に設置することになっており、必要に応じての決定方法が曖昧で、そこが現場判断であった。
 また、土留めの使用判断をすると設計変更が生じ、事務手続きや、下手をすると議会の手付きも必要になるため、できれば初めから設計に入れられるように図面に残してほしいという報告と提案であった。

 その時に、図面に残すか残さないかの「基準をどうするか」という話になり、当該現場職員の提案で、配管の埋設深度を基準にしようという話になった。

 そして図面を管理している部署の職員と受託業者らが、検討のために同様の現場と配管の埋設深度をまとめたデータを抽出してまとめたのだが、いざ裁決となった時に、急に別の職員から横やりが入ったのである。
 土木一般、つまり「道路工事関連部署でよく使う基準」を用いて決めた内容なので、うち(水道局)では判断できない。よって注意喚起の情報は図面に残せない。残したいならば担当者が独自に判断して、施工業者に指示して、図面に注意喚起の文言を個別に付加するよう指示を出せというのだ。

 同様の工事監理を経験した人間からすれば、まあ賛否別れる話だとは思うが、判断を末端の担当職員の善意に頼りすぎる点や、何より

 自局外ルールを下手に適用して責任取りたくない > 作業者や住民の安全確保と適正な設計 

 こんな風に捉えられなくもない答弁と判断だったので、おっさん含む何人かは首を傾げたものだ。

 組織ごとの仕事の棲み分けは仕方がないにしても、水道局で土留めを考慮する目安の埋設深度が今までずっと無かったのも問題である。それを新たに検討するか、安全管理上、道路の基準を借りて、当面の目安を示すぐらいはしても良いものだが、どうにも縦割りが過ぎる判断であった。

いいなと思ったら応援しよう!