読了のおっさん26 薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜(原作:日向夏、キャラクター原案:しのとうこ、作画:倉田三ノ路/月刊少年サンデーGX)
今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。
薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜
(原作:日向夏、キャラクター原案:しのとうこ、作画:倉田三ノ路/月刊少年サンデーGX)
2017年~ 既刊18巻(2024年3月時点)
① タイプやテーマなど
時代劇(中華風)、ミステリー、後宮、薬屋、女衒、王族、女社会、毒、欠損家庭、恋愛、ファンタジー
② 簡単な内容
花街の医者の娘として薬を扱う主人公の少女、猫猫(マオマオ)は、薬草の採取中に人攫いに合い、宮廷に身売りされてしまう。宮廷の下女として年期明けを待つ間、皇妃とその嫡子の命に係る事案が派生し、猫猫は毒の存在に気が付いてしまう。知らせるべきか躊躇しつつも、持ち前の知識と気転によって密かに情報を伝え、皇妃らの命を救うことになる。しかし、宮廷宦官の壬氏(ジンシ)によって、猫猫はその存在を知られてしまい。以後、その能力を買われ、壬氏によって様々な難事件の解決を依頼されることになる。
猫猫は不服を感じつつも、新薬の研究のためといった餌に釣られたり、結局は人情として数々の事件解決に協力をする。その中で、宮廷内の人間関係に纏わる秘密や自身の生い立ちに係るエピソードなどが明らかになっていく。
③ 読みどころ
ミステリーものであり、読者が謎や関連性を考察する楽しみがある。また、架空の世界ではあるが、旧王朝時代の中国をモデルに作られた、宮廷内の世界観、花街文化や同時代の他国との関わりなども現実世界にかなり忠実で、そこもまた親しみ深く考察の楽しみがある。
絵も綺麗で読みやすく、すんなりと特別な世界に入っていける感じがする。小説の挿絵に近い画風でもある。サンデー版の方がおっさんの好みだが、アニメに近いガンガン版も良い。実際アニメは繰り返し見ているので、動くならこっちかなという気もしている。
メディアによって画風が異なるのも案外いい。そう考えると甲乙つけがたい所ではあるか。
キャラクターも良い。もう一人の主人公とも呼べる、絶世の美男子である宦官の壬氏を始め、その従者の高順、宮廷の妃と女官たち、主人公の養父、花街の面々、それら全てがどちらかというとアッサリした性質の主人公と対比的な、独特の温かみや人間味を持っており、時におちゃらけたやり取りがあって、読んでいて口角が上がる。
コミックスはカバーをめくると薬草に関するウンチクが掲載されている。本編でも現実世界と同じ植物や化学物質の話が出てくる。ガッツリウンチク系ではないが、意外とためになる。全方位で中学生ぐらいの子供に良い肥やしになる要素が詰まっている。
④ 雑多な感想
性描写は極めてマイルドながらも、描かれていない部分でやることはやっている(しかも過激に)という上品な仕上がり。花街だの、宦官だの、ロリコンだの。。。
一時代前の少女コミックであればキスシーンやら、愛し合う絵面の他に、貞操の危機がしつっこいぐらい描かれたものだが、大いににおわせつつもそこは描かず、主人公の猫猫当人も、非常にクールで淡白なところがかえって好ましく思う。
明らかに女の子向けだよなと思いつつも、おっさんが胸焼けしなかったのも、ここまで大衆に受けて真昼間から躊躇なく読めるのも、こうした最良の倫理レギュレーションでの、最高の仕上がりになったからではないだろうか(狙ってか偶然かまでは分からないけれども)。
宦官の描き方もリアル。丸っこい身体、性格、言動などが、実際こうだったのだろうなと思わせるところがある。それにしては少々男臭いなと感じる壬氏様も、従者の高順も、それ自体が伏線となっており、両者の立ち位置や正体が徐々に明らかになっていくストーリー展開も楽しめる。
そして、しっかり人間ドラマである。人間の性質由来のエピソードとして、様々な生い立ちや病気、役割、宮廷という魔窟での活躍があって毎度面白い。また繰り返すが、そうした心が波打つ現場でも、猫猫は激しく動揺することが少ないので、読者としては一切胸焼けしない。読者との距離を繋ぐ主人公でもあるように思う。
⑤ その他
原作者本人も「なんででしょうね?」と答えているが、何故か漫画が二種類ある。
絵の好み、しっかり目かつ展開が先まで進んでいる点、友人のナオチャンがサンデー派、という点で、おっさんはサンデー版を最終的に選択しているが、アニメが入ってくると賛否別れた議論が過熱気味になる。
一方で、本当の原作の原作である、小説版がおっさんは気になっている。
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こっちは完結しているんだっけ? 時間があったら読みたい。
とはいえおっさんは本作、メディアミックスとしてはアニメ版が一押しでもある。
アニメでキャラクターが動いて喋るという良さも当然あるが、カラーになって、植物や虫、夜のかがり火や景色、衣装や宮廷建築などを鮮明に見られるのが好ましい。
アニメによって本作の世界観により深く入り込むことができると思う。
尚、本記事作成時には1期放映済みだが、人気なので2期もやるのかなとおっさんは期待している。