窓際のおっさん60 公務員に必要な能力の本音と建て前(4/4)
前回は引続き、公務員に必要な能力について、予備校のTACさんの記事を参考に列挙し、実務においてはややずれがある(合格については記述の通りで良い)可能性を述べた。
そして、そのうちの一つとして、行動力と物事をわかりやすく説明するスキルとは本音としてはどうなのかについて、おっさんの私見を述べた。
今回は、その続きとして、事務処理を正確、効率的に進めるスキルについての考察と、まとめを述べて締めくくりたい
再び引用する。
これは当たっている。
但し、効率的という部分については、ITスキルと考えてしまうと大きな落とし穴になる。集中力や、事務処理に没頭できるセンス(事務作業が好きかどうか)という意味での効率。例えるならスポーツで上手に体を動かすと言う意味の効率という発想で考えた方が良いだろう。
また、前述したように、これが公務員業務の全てのように思う。そして残念ながら技術系であっても例外ではないので注意が必要である。
(そのニュアンスも多くの対策本等であまり記述がない)
近年は高いITスキルによって効率よく精度よく実施できる事務処理出来るようになった筈なのだが、自治体ではそのスキルの発揮が許されることはまずないと言っていいだろう。そうした面でも、技術職ほど公務員を嫌がる傾向に拍車をかけているわけだ。
折角ツールを作ろうとしても
動作は誰が保証するのか? ルールに書いてあるのか?
このソフトをインストールして本当に安全なのか?
なんやわからんけどとにかくダメ!
いざやろうとしてもこんな具合の押し問答になって、結局長時間かけて延々と手作業で入力、データ整理をさせられてしまうのが現実である。
また、一つミスや苦情が発生すると、手順がそこに加わっていくため、事務処理は年数を追うごとに面倒になっていく。
エクセルを使う範囲であればある程度の自動化も可能ではあるが、結局そうした追加や書類様式の見直しが高頻度で起こるため、工夫しても1年未満で自動化システムが無用の長物となるなどのむなしさもある。
一方で、手作業でも全然出来ちゃうという人にとっては、公務員は天職にも思う。
事務処理は多くの場合、感情労働でもある。本来は集約と統一、逆の手法で言うと許容範囲を定めるなどして、適切に自動システム化して解決してもいいものだが、役所では最終的な仕上がりの段階で、末端部署に感情論争させて事務処理方法を決するという傾向が強い。結果、方向性がまとまらず、システム化に誰も手がつけられず、改善が遅れているように思う。
こんなアナログを諦めざるを得ない職場である故に、手作業による事務処理が得意だという人が、最も公務員に向いているとおっさんは思う。
果たしてそんな人材ばかりでいいのかと言うと、今の社会の動きからしてダメだよねと思うのだけれど、真に求められていて、優秀だと評価され、出世をするタイプの人は間違いなく、手作りの事務処理の、細部にまで平気でこだわれる人であると、肌感覚としておっさんは感じている。
<結局実務としての公務員は>
さて、色々と遠慮なく述べてきたがまとめたいと思う。先ずは、TACさんが示す合格に必要な能力。
これらの字面を見た通りの、一見キラキラした真面目系活動家的な人物は、期待も大きく、試験では本当に合格しやすい。だが、実態として求められ、出世する人ではないとおっさんは断言したい。
合格・就業後に改めて公務員に求められる能力を、TACさんのようにあえて5項目でまとめるなら
① 他者を説得する交渉力(行政力を果断なく行使するためのえげつないギリギリの線まで)
② 対住民には、ビジネスで言う真にロジカルな思考力というよりも、人生経験に裏打ちされたアナログな思考力。内輪には前時代のディベートのような、論破力としての論理的思考力(ただし生意気に見られるのですぐには不要で、係長になるまでの20年を通じて徐々に身につける方が好かれる)
③ 残業削減というクリーンな組織目標の達成や、対市民で誠意を見せるといった感情労働に時間的余裕を作るための、事務処理の手際の良さという行動力。
④ おおむね物事をわかりやすく説明するスキル(でも多くは分かってもらえず草臥れ、結局手間を代行することになるだろうという達観が必要)
⑤ 事務処理を好み、正確、効率的に進めるスキル(但しITの利用を禁ず)
こんな具合になる。うん。決して面白い仕事とは思えないなこりゃ。
他の公務員経験者では別の意見も多々あるだろうが、おっさんとしては公務員に求められる能力をこのように捉えている。公務員試験の受験を考えている方は、表面的な求められる公務員像だけを見て後悔しないよう、十分参考とされたい。
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