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読了のおっさん10 乙嫁語り(森薫/青騎士コミックス)
今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。
乙嫁語り
(森薫/週青騎士コミックス)
2008年〜 既巻14巻 連載中
① タイプやテーマなど
少女漫画、文化、歴史、民族、結婚、女性、19世紀、中央アジア、遊牧民、狩猟民、村落
② 簡単な内容
乙嫁、すなわち「いいお嫁さん」達の物語。舞台は19世紀の中央アジア。イギリス人の研究者(とまではあまりハッキリしないがそのような活動をしている)のスミスが、旅先で様々な村に逗留し、そこで出会った人々(乙嫁達)の家族の物語が描かれている。
国や文化に基づく女性達の事情について焦点が当てられており、様々な理由から結婚に至る過程が繰り広げられる。
③ 読みどころ
全体的に絵が素晴らしい。
民族衣装や家屋、村落、自然の描き込みが非常に細かく、とても美しい。表紙も写真のとおりとても美しく、見ていてとても気分が良い。内容も良いがこれだけで十分購入して良いと思う。
物語に出てくる乙嫁達は、現代とは違って、親同士の決めた結婚という展開が多い。しかしながら、非常に賢明で心強い存在として描かれており、おっさんをして理想の女性達ばかりだなと思ってしまう。また、深刻でドロドロとした展開はほぼなく、窮地や理不尽な出来事にも強くしなやかに生き続けるキャラクターばかり。痛快とも爽快とも違うが、重厚で安定した読み心地がある。
中央アジアのトルキスタンという国が舞台であるが、それも珍しい。現代はすっかり干上がってしまったカスピ海やアラル海を擁し、現代の地理で言うとカザフスタン・ウズベキスタン・トルキスタン辺りだろうか。
西は黒海、北はロシア、東はモンゴル、南はペルシャ諸国という地理で、狂言回しのイギリス人と合わせれば、誠に様々な人種が登場する。この色とりどりな感じがなんとも言えず良い。
④ 雑多な感想
最初の数巻は、絵がいいなあと思いながら読み進める中で、物語の目的を探ろうとしてしまった。ところが、3巻目ぐらいまで読んだところで、これは「世界」を楽しむ作品であると結論した。
異民族の侵略や、訪れる村々で出会う乙嫁達の各々の事情といったストーリーはあるものの、それらは短編のオムニバスに近い。全部の乙嫁が一つの方向に収束するような感じは今のところない。この辺りも頭の整理が追いついてくると、本作品は「作品世界に没頭すること」が最も心地よいのだと思うに至る。
おっさんはこうしたタイプの作品は今まで出会ったことがなく、非常に新鮮であった。最後はまとまるのか、各々でハッピーエンドなのか、色々と気になるが、今後が楽しみである。
⑤ その他
海外展開の情報を聞く。また、原画展も催されて好評だったようだ。英語版も読んでみたい。作者は本気で中央アジアが好きで、後書きでも「世界に没頭している」とコメントしている。故におっさんの楽しみ方はなんとなく正解だったのだなとも勝手に思っている。
また、7巻で表現上の都合で絵柄が変わるなど、本当に新しい自由な表現で作られている。かくもこういう作品もあるのだと新発見である。