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君に会いに行こう
TheWorthlessさんの『君に会いに行こう』をカバーしました。
インスタグラムにもアップしましたのでぜひ聴いてみてください。
なんと!原曲を作詞・作曲されたTheWorthlessのわしみごうさんが私の編曲でこの曲を早速弾き語ってくださりとてもうれしかったです ▼
さらにさらになんと!
TheWorthlessメンバーSandalSoulことsunnyさんが私の編曲でウクレレで弾き語ってくださって感無量!アレンジしてほんとうによかった ▼
2023年12月2日ニジノ絵本屋さんからのお誘いで万博記念公園で開催された関西蚤の市に行き、絵本『かわいいことりちゃん』の作者としてニジノ絵本屋さんのブースにてサイン会をさせていただきました。
ずっと観たかったジャグ・バンド「ザ・ワースレス」さんのライブをようやく目の前で観ることができ、その日一番心に残った曲が『君に会いに行こう』でした。
ミスターとsunnyさんが掻き鳴らすギターとウクレレの推進力、双子のおふたり(ぴーひゃらん & のんしゃらん)の心躍るリズムとダンス、そしてみんなの美しいハーモニー!間奏で炸裂するsunnyさんのカズーソロと一緒に飛び出すなかたさんのマリオネットタイムでは集まった子供たちはもちろん周りを取り囲んだ大人たちまで大興奮でした。
旅する楽団にぴったりのわくわくする歌詞がサビを迎え「楽しいこといっぱいあるよ♫」と元気いっぱいに歌われます。
2023年が個人的に苦しい出来事が重なってしまい、年末は心も身体もすり減ってヘトヘトなタイミングだったので、この日4回のステージでこの曲を何度も聴けたことにとても救われました。
そうして明けた2024年 三が日から能登の大地震や羽田空港の飛行機事故、通り魔事件など連日目を覆いたくなるようなニュースが立て続けに起きてしまい、暗い年明けの重苦しい空気を拭い去るように
2024年は!!!【ラバーズの一月一曲】 ◎ザ・ワースレスのあの曲を!ギターやウクレレやピアノやダンスや歌でカヴァーしてみよう!
1曲目はこちら🥸 『君に会いに行こう』
と心が軽くなる企画が発表されました。
音楽を奏でて心を鎮めたいと思い、参加することにしました。
『君に会いに行こう』 feather MIX
今回のカバーの歌詞とコード譜、ギターTAB譜、ギターコード一覧表です。
すぐにどうやって弾いてたか、何のコードだったかとか忘れてしまいがちなので、ちゃんと思い出せるように記譜しておきました。
もしこのアレンジが気に入ってくださったならぜひ弾いて歌ってみてくださいね。
※ © 著作権はTheWorthlessの作詞・作曲者のわしみごうさんに帰属します。
ここからは個人的な今回のカバーの制作過程での思考の流れや気づきを備忘録的に書き留めた文章で(とても長くなってしまったので)興味のある方だけ音楽を聴いたり弾いたりしてみながら目を通してみてください。
※ 「太字」部分は文章内でご紹介している楽曲から歌詞を引用しています。
歌詞の © 著作権は各作詞者に帰属します。
※ 文章に出てくる音楽は下記のプレイリストにまとめてみましたのでお時間のある時に聴きながらでもどうぞ。
原曲「TheWorthless『君に会いに行こう』」は旅の楽団が踊って歌って奏でる明るくて快活な祝祭の音楽という感じで、「ジャーンジャッジャンジャン♫」「ジャーンジャッジャンジャン♫」のストロークは馬が駆けるような速さ(BPM=133サカナクションのダンスチューンくらい)みんなが踊り出したくなるのがよくわかる疾走感があって爽快で力強くキャッチーな仕上がりです。
くるり『ブレーメン』 (後半3:25〜)や、くるりの岸田さんが好きなクラシックの名曲のグリーク『ホルベルク組曲 作品40 第1曲: 前奏曲』(この2曲は「タッタカタッタカタッタカタッタカ」と馬が走るイメージ)、Karen O and the Kids『All Is Love』の手拍子やかけ声、YeYe『のぼる、ながめる』みたいな手拍子 & マーチングなアレンジも良いなと思ったり、ROTH BART BARON『Innocence』の途中で壮大になる感じ、Sigur Ros『Gobbledigook』な疾走感も良いな…大太鼓、手拍子やかけ声が似合う曲だなとか妄想を広げるだけ広げておきながら…
原曲の溌剌、颯爽とした印象から少し離れてみて、メロディや歌詞の良さを生かしつつ、ハーモニーを工夫して憧れの旅人スナフキンみたいにひとりでアコースティックにカバーしてみるのが私らしくて良いかもと思い直しました。
カバーのコンセプトがなんとなく決まり、ぱっと浮かんだのは下の2曲。
「ダンサブルな原曲」= サカナクション『ミュージック』
「静かなリミックス」= サカナクション『ミュージック(Cornelius Remix)』
のようなイメージで対象的に仕上げられたらいいなと想像がふくらみます。
サカナクションの山口一郎さんがこのコーネリアスのリミックスについてインタビューで語ってらして素敵だなと思いました。
音程変わってましたもんね。さすがだなと思いました。原曲とは違う良さが明らかにちゃんと醸し出てるし。原曲好きな人も絶対好きでしょう。
コーネリアスこと小山田さんもこのリミックスについてナタリーのインタビューで語ってらっしゃいます。
これは元のトラックはほとんど使ってないです。歌もメロを1音変えて、コードも変えて、コーラスもいじって。原曲はエレクトロニックな、ダンスぽい、ロックっぽい感じだったんですけど、逆をやってみたいと思って。生音中心のアコースティックぽい音にして、ベースだけ生からシンセに変えた。なのでオリジナルとまったく逆のアプローチのトラックになりました。ああいうダンスっぽい曲だけど、ベースになってるのはちょっとフォークっぽいものだという気がして。
コロナ禍を経て、戦禍や災害が続き、不穏で澱んだ空気に包み込まれていきそうないま 「楽しいこといっぱいあるよ」「君に会いに行こう」と会いたい人に会いに行く旅へと誘うこの曲の持つまっすぐなメッセージがきらめいている気がして(おなじような気分を思い起こさせてくれるtricolorさんの曲も浮かんできたりして)音楽ってみんなで演奏しても(聴いても)楽しいし(tricolor『気分(みんなで)』)、ひとりの時に鳴らしたり練習したり、聴いたりもできるし(tricolor『気分(ひとりで)』)なんて素敵なんだ!とあらためて感じ入り、これまで聴いてきた旅の曲たち(John John Festival『海へ-Sail Away to the Sea-』、鬼束ちひろ『Sweet Rosemary』)も浮かんできては、出会いと別れが続いていく人生もそれぞれの旅路のようだなと感慨に耽ったりしました。
TheWorthlessのわしみごうさん(a.k.a.ミスター)が原曲のKeyとコード(みんながカバーしやすいようシンプルに4つだけ)を公表してくださり、急遽開催されたインスタライブのウクレレ講座で「時間のある人はいろいろ試してアレンジしてみてください」とおっしゃっていたので、公表された歌詞とコードを起点にリハーモナイズをはじめました。
リハーモナイズ
【ヴァース】
「なんだかんだゆるりのらりくらり」
歌いはじめは弾き慣れている手癖が出て ⅠM7(トニック)→Ⅶm7b5(ハーフディミニッシュ)→Ⅲ7(セカンダリードミナント / 切なコード)→Ⅵm7(セカンダリードミナントの終始先)へと進みたくなりますが、 メロディと半音でぶつかり不協和となるため→ⅣM7(サブドミナント)へ進み偽終止に(偽終止という言葉も初めて知りました…「偽終止とは終止(解決)すると見せかけてしない進行」とのこと)。GM7=ⅣM7はGBDF#、Bm7=Ⅵm7はBDF#Aと構成音が重なっているので違和感なく進行できるんですね。
下記の曲で使われているコード進行を手が憶えていました。
ちょっと切ない気持ちになる進行ですね。
スガシカオ『黄金の月』 ※ 歌い出し
Caetano Veloso『Minha Voz, Minha Vida』※ 歌い出し
空気公団『悲しみ知らん顔』 ※サビ「(あるようで)ないものを」等
「山越え谷越え海を渡り」
ⅣM7→Ⅲm7→Ⅱm7と下降していく進行は本当によく使われていますね。
ちょうど小沢健二さんが『ぼくらが旅に出る理由』の制作秘話を投稿されて、Ⅲm7の代わりにⅠ/Ⅲが使われる理由が腑に落ちたので、ⅣM7→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7に置き換えてみました。
「旅の行く先を告げていた」
サビに向かう部分のⅤm7=Am7(ドミナントマイナー)は、視界が開けて良い旅になるであろう予感を表現したくて使ってみました。そのまま代理コードのハーフディミニッシュ(#Ⅳbm7b5=G#m7b5→Ⅲm7b5=F#m7b5)で下降しながらサビのⅣM7=GM7に入ることにしました。いよいよ旅の目的地に着くよ!という高揚感が表現できた気がしてとても気に入っています。
【コーラス(サビ)】
「いっぱいあるよ」「君に会いに行こう」
個人的に暖かな陽だまりのように優しい雰囲気へと変わるなと思う印象がする大好きなⅣm(サブドミナントマイナー)を使ってみました。Gm7だとメロディとぶつかり不協和になってしまうのでGm6に変えて使っています。 Ⅳm=Gm6→bⅦ7=C7→Ⅵm7=Bm7(トニックの代理)の流れがバックドアケーデンスと呼ばれていることや、bⅦ7=C7(代理サブドミナントマイナー)からトニックへの流れが、代理サブドミナントマイナー終止と呼ばれていることもこの曲をリハーモナイズしていく中ではじめて知りました。
私が以前作曲したギターの小曲(feather『小鳥の子守歌』)でもサブドミナントマイナーを使っています。
「大事なこと そんなにないよ」
「楽しいこと いっぱいあるよ」との対比で出てくるこのフレーズも「大事なもんはいくつもないさ」と歌われるBUMP OF CHICKEN『ダイヤモンド』や「少しだけ大事な物があればそれだけで」と歌われる星野源『日常』を思い出させてくれたりして、とてもいい言葉だなと感じていました。
作曲者のわしみごうさんがインスタライブで触れられていましたが、原曲では「ないよ」のところにⅥm=Bmとマイナーのコードが使われていて、私もこのフレーズではその意を汲んでちょっと工夫をしてみたくなりました。 前述のⅢ7=F#7(切なコード)→bⅦ7=C7(切なコードの代理)→がメロディの制約なくようやく着地点にⅥm7=Bm7に移れることに気づき、ここで使ってみました。サビはじめ「楽しいこといっぱいあるよ」の温かさと「大事なことそんなにないよ」の切なさの対比が生まれ、温度差が少し表現できたのではと思います。
「楽しいこと」(2回目)「パジャマのままでいいよ」
先に触れたCorneliusによるサカナクション『ミュージック』のRemixで衝撃的だったリハーモナイズしたコードトーンにあわせて歌のメロディを1音変えるだけで曲の印象が柔らかく変化する手法もどこかで試してみたいと思い立ち、コーラス(サビ)の後半(2回目の繰り返し)の頭のGM7の次のコードをbⅦM7=CM7からbⅦ7(9)=C9に変えて試してみました。
「楽しい」の「しい」と「パジャマのままで」の「ジャマのま」の音がシ=M7→シ♭=m7に半音下がり、不思議と温かみが醸し出されたのでは?と感じていますが…いかがでしょうか?変かな?変じゃないですよね。
このコードにあわせてメロディの中で1音だけシ→シ♭に変化するモーダルインターチェンジな感じは、私が作曲したピアノの曲=feather『Nocturne Tranquillity in Flux』でも試していますのでこちらもぜひ聴いてみてください。
「パジャマのままでいいよ」
下降ラインで経過音として使ってみたFdim7がブルースの雰囲気をそっと醸し出してくれていい塩梅に置けたなという気がしています。
曲中で何度も登場する下降ライン
Bm7→Bbm7→Am7→C/D(D9sus4)→GM7の流れはDメジャーの中で、下属調=Gメジャーに部分転調している感じかしら…と推測しつつ(楽理に明るくなくってよくわからないながらに)使っています。
手癖で弾いているのが気持ちよく、今回のカバーでは度々使うことになりました。空気公団『青い花』とかを弾いているうちに覚えたのかな?よく思い出せませんが、常套句的にいろんな曲で使われているコード進行だと思います。
原曲ではコーラス(サビ)をもう一度繰り返すので間にキリンジ『スウィートソウル』みたいなドラマティックな展開(間奏)なんかも入れてみたいなと考えたのですが(もはやそれは冨田ラボさんに編曲をお願いするしかない!)、今回は静かなカバーということもあり、シンプルに繰り返さずそっと終わることにしました。
アウトロのフレーズ →イントロ→間奏へ
Jair Rodrigues『Tristeza』のカバーみたいに曲の最後でドミナントのⅣ/Ⅴ=G/A(A9sus4)→Ⅴ7=A7からすぐにトニックのⅠM7=DM7に解決せず、サブドミナントのⅣ=Gに立ち寄ってからゆったり終わりたいなと思い(そうだ!あれだ!偽終止!)、そこからどうⅠM7=DM7へとたどり着けるかしらと考えつつ、いろんなコードを試していているうちにアウトロのフレーズが浮かびました。
M7→m7→M7→m7の下降ラインは小沢健二さんの『流動体について』で半音上へと転調をうながす魔法的な流れ(「意志は言葉を変え言葉は都市を変えていく」)で使ってらしたのを思い出し、Ⅳ=G→Ⅰ=Dへと降る道筋としていいかもと思って使ってみました。ここでは転調へと向かわずⅦdim7=C#dim7まで降りてからⅡdim7=Edim7(代理サブドミナント・マイナー)に上がって(まぁC#dim7とEdim7は構成音が同じディミニッシュコードですし、それにドミナントのAをベース音に足すとA7b9になるのでトニックに解決しやすいですよね)→ⅠM7(トニック)=DM7(9)へと終止しています。
昨年秋頃によく聴いていたマイケル・ジャクソン『Human Nature』の影響もあるのか、ちょっとモーダルで浮遊感のある良いフレーズができたかもと気に入って、イントロや間奏にも入れてみました。
実際には歌詞を見て弾きながら歌って(これまで弾いていた楽曲の手癖でコードを適当にあてはめてみて、メロディにあうかどうかを少しずつ試しながら)リハーモナイズしていった感じですが、こうして制作中に浮かんだ思考を振り返りまとめてみることで、これまで愛聴したり弾いてきたたくさんの音楽に導かれてこの編曲にたどり着いたんだなとわかりました。いろんな楽曲を挙げてきましたがたぶんどの曲にも全然似ていないと思います。音楽の懐の深さと不思議さを感じます。
思いがけなく音楽の旅へと連れ出し「楽しいこといっぱいあるよ」と思い出させてくれたTheWorthlessさんに感謝。
追記:「リハーモナイズといえば」
2023年12月31日の英理ちゃんの誕生日に解禁された
COPA SALVOの音源のサブスク配信
のお手伝いをさせてもらいました。
その解禁された音源の中に、ずっとお蔵入りになっていたCOPA SALVO『wave』のリミックスというかカバーをプロデュースさせてもらった曲=COPA SALVO『wave feather feat.英珠 remix』があり、その時も楽しんで工夫しながらリハーモナイズしていたことを思い出していました。
原曲 = COPA SALVO『wave』はマイナーでクールな響き
リミックス = COPA SALVO『wave feather feat.英珠 remix』は明るく浮遊感のある響き
の対比にしたくて、参加してくださった演奏者のみなさんとスタジオで試行錯誤していたのを思い出します。編曲のイメージとしてはChick Corea & Return to Forever『You’re Everything』みたいにしたかったんですよね。英理ちゃん、英珠さんいろんな人に聴いてもらえてよろこんでくれてるといいな。