やってはいけないこと、言ってはいけないこと
自閉症の息子(6)。
先日、二つの出来事があった(やってはいけないこと一つ、言ってはいけないこと一つ)。
妹を傷つけてはいけない
兄妹ゲンカは日常茶飯事。
原因はいろいろあり、必ずしも息子が悪いというわけではなく、むしろ、妹(2)が原因のケンカの方が多いかもしれない。
・息子が遊んでいたおもちゃを取ろうとする妹
・息子のおやつを食べようとする妹
・テレビのチャンネル争い
基本的におもちゃの取り合いばかり。
しかし、自閉症という特性もあるのか、なかなか我慢ができない息子。
「譲る」という行為もなかなか難しい。
それでも、毎回毎回、事あるごとに、「我慢」と「譲る」を伝えてみる。
その甲斐あってか、機嫌が良いと、
「これ(おもちゃや絵本)使っていいよ」
「これと交換ね」
など、お兄ちゃんらしく(?)振る舞うことも増えてきた。
しかし、この時はそうはいかなかった。
おもちゃを取ろうとした妹の腕をギュッと掴み離さない。
ギャンギャンなく妹を見て、父(僕)が間に入り引き離そうとするも、なかなか離さない息子(子ども同士の腕を力ずくで掴むわけにもいなかいため、こういう時の力加減は非常に難しい…)。
何とか引き離すも、妹の腕には息子の手の跡がくっきり(30分後にはみみず腫れに)。
いつもは、父母が同時に叱ることはなく、どちらかがフォローに入るのだが、この時ばかりはそうもいかず。
これまでも、兄妹で手や足を出し合うことは多々あったが、傷をつけることはこれが初めて。
「死ね」と言ってはいけない
妹も引き離し、何とか夕食を食べる雰囲気に。
しかし父はあまり切り替えができず、そして、切り替えの早い息子は普通に話しかけてくる。
そういう態度もまた、イライラさせる要因でもあるのだが…
普通に話しかけてくる息子を無視していたら、案の定、息子は不機嫌になってくる。
最初は柔らかいおもちゃを投げてくる程度だったが、次第にエスカレートしだし、プラスチックの硬いおもちゃを手に、
「死ね!」
とこちらに向かってくる。
その瞬間、父はプチン!
父「今なんつった!?」
息子「・・・」
父「な・ん・て・い・っ・た?」
息子「……なにも…言ってない…」
父のキレ具合をいつもと違うと察知したのか、「言ってない言ってない」と連呼する息子。
離れようとする息子を引き寄せ、畳に押し付けながら、
「死ねって言ったな?」
「死ぬってどういうことかわかるか?」
「もう誰とも会えないんだぞ?」
「もう二度と言うな?」
泣きながらも「うんうん」という息子。
これまでも、なかなか言うことを聞かない息子に怒鳴ることはあったが、どこかで「自閉症だから仕方がない」「そういう特性だから」と、自分自身を説得してきた。
また、「何がいけないのか」「どうしてほしいのか」を具体的に説明するよう心掛けてもいる(抽象的な指示は頭に入らないため)。
それでも、今回の二つのこと(「妹を傷つける」「『死ね』と言う」)は見過ごせなかった。
自閉症とはいえ、コミュニケーションも取れるため、いけないことは伝えないといけない。
「悪いこと」も知る必要はあるが
もちろん、社会で生きていく上で、「悪いこと」も知っておく必要はある。
それを知らないと、善悪の区別や、やっていいかどうかの線引きができない。
今回の言葉も、テレビや保育園などなら「仕入れ」たものではあるだろう。
それ自体は存在する言葉であるし、僕の力で消し去ることはできない。
問題はそれを使うタイミング。そして「誰に」向けて言うのか。
我が家はカブトムシを飼っているので、「死ぬ」という言葉は普通に使っている(カブトムシ死んじゃったね、など)。
使い方さえ間違えなければ何の問題もない。
「悪いことを知らない無知」の方がよほど怖い。
特に息子は自閉症である。
将来一人で生きていくとしたら、誰かに騙されないように生きてほしい(もちろん、誰かを騙したり傷つけることは論外)。
障害を持っている子(人)は、比較的純粋な人柄であることが多いと聞く。
純粋な人ほど、悪意のある他人に騙されることもあるだろう。
そうならないためにも、善悪についてはきちんと教えないといけない。
ささいな一幕ではあったが、健常児とは違い事細かに教えていかないといけない自閉症の息子の、将来をふと考えてしまった出来事でした。