闇のブローカーと不動産 第3話「物件視察」
数日後、指定したファミレスで待ち合わせをした。
そこには代表の森と、融資に詳しいとされるその男が待っていた。
「初めまして、松本と申します。」
松本は白髭を生やしており、おそらく50代に見えた。
本当にこんな人が融資に詳しいのか…?と思いつつも、説明を聞いた。
松本は、不動産素人にはまるでわからない単語を織り交ぜ、時に私を持ち上げながら話をしてきた。
ヨイショされて気分が良くなるのは、人間の性というべきか。
怪しげな2人組の男とは、そのファミレスで何度か会うことになるーー-
ある寒空の日、検討している物件を見に行くことになった。
森と一緒に現地へ行くと、現所有者と思われる人物が家で待っていた。
丁寧に挨拶をし、現地確認を始めた。
その物件は築20年程の、広い戸建だった。
庭も広く、枯れた雑草が群がっていた。
「こちらの物件はリノベーションをしてお渡しする予定です。」
男達の言葉を、私は信じた。