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『言バトン No.706 楽しい思いつき』 by HANZAWA on 12月 6, 2018 • 22:46

食事中に、

(これはうまい!)と思ったら、

その食べ物をスプーンにのせて、

壁にかかっている時計に「ひとくちどうぞ」とおすすめする。

天井の電球に「ひとくちどうぞ」、

フクロウのぬいぐるみに、

おきにいりの絵本に、

電気ポットに…と、スプーンをあちこちに泳がせているうちに、

どんどん楽しくなってきて、

調子に乗りすぎて食べ物を床に落としたりもする。

1歳半になるうちのこの話だ。



(おいしい!みんなにもおいしいを分けたい!)の気持ち、

悪くない。

親としては、

食事中は落ち着いて座りなさいとか、

食べ物を床にこぼさないようにとか、

そんなことは言わないようにしたい。



しかし、そんなふうに「わかちあい」を実践するうちの子だけど、

自分のサインペンを他の人が使うと、

真顔で手を伸ばして奪い返そうとするから、

「わかちあい」という道徳心はあるわけじゃなくて、

単に食事中に思いついて、楽しくスプーンを差し出している、それだけ。



うまくしゃべることのできない子が

「楽しいおもいつき」で、

生き物じゃないものたちに食べ物を分け与えているのを見ていると、

道徳とか、

一般論とか、

常識的判断なんてものに染まっていくことで、

ひとは社会人という名のつまらない生き物になってしまうんだろう、

としみじみ思い知る。


道徳的な価値観や、常識というものを知ってしまっても、

そういうものをいつだって「飛び越えられる」パワーを持って、

生きていきたい。

次は、楽しい思いつきの「き」

取材、執筆のためにつかわせていただきます。