よわり目にたたり目の泣きっ面に蜂
自転車通勤をしています。
河原の道を、自転車で、走ること片道20分。雨が降ろうと風が吹こうと、エッチラオッチラ、ペダルを漕いで毎日往復。
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7月某日。
スギ薬局に寄ってファブリーズを買って、ローソン100で冷凍枝豆を買って帰る道すがら、自転車の後輪がパンクしているのに気がつきました。確かめてみるとタイヤ表面に穴が空いている。
『めんどくせーなー』と嘆き節でつぶやいて、でも自転車通勤をしていますので、どうにかしなければ明日の仕事に行かれない。不意の出費となる修理費用のことも気を滅入らせる。
自宅はすぐそこ。2分と掛からないところ。一旦帰宅して気持ちを落ち着かせます。汗をぬぐいます。
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最寄りの自転車屋は、個人経営の小さな店で、毎日のように、それこそ自転車で、その前を通ってはいるけれど、訪ねてみるのは初めての。
狭い間口の入り口に立って、無造作に散らばった工具なんかを蹴飛ばしてしまいながら『こんにちはー、すいませーん』と声を掛けた。
逆光で影になった店の奥から出て来たのは、固太りして日に焼けた、四十がらみの男の店主。
『どうしましたか?』と問われて、パンクした旨を伝えると、男はおもむろにパンクしていない前輪を触って、それから『これ、空気入れ過ぎ』とぶっきらぼうに言う。
『パンパンに空気入れてたらチューブとタイヤが擦れて摩擦でタイヤが薄くなってくんよー。それでこんなんなんねん』
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なんだ、エラそうに、と思ってしまった。そんなことも知らないのかと客を見下して、講釈垂れるつもりなのか、と。
いやもちろんそれは、ネジれた私のヒガんだ感想なのであって、自転車屋は自転車屋として、なすべきアドバイスをしてくれているのだろうけど、なんか、自転車の乗り方が悪いって叱られているように感じて、なにも、こんな、人が弱っているときに、そんなこと言わんくてもええやんかと、またぞろ、クサクサした気分にとらわれているのでした。
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『タイヤ替えたのとパンクの修理で4000円になります』
言い値の代金を支払って帰ります。
新しく付け替えられた後輪タイヤは、ちょっと独特なデザインをしています。力弱くペダルを踏み漕ぎながら、ああ俺は、これからこの自転車に乗る際に、このタイヤを見る度に、今日のこのイヤな気持ちを思い返してしまうんやろか、思う次第でありました。