(創作)彼女と部屋、そして流れる時間
その家に入ると、モーツァルトのピアノソナタが流れていた。小さなラジカセから、まるでどこか遠い昔から響いているような柔らかい音色が、部屋の空気に溶け込むように漂っていた。鍵盤が奏でる音のひとつひとつが、まるで時を止める魔法のようだった。
女性はベッドに横たわっていた。彼女は目を閉じて、まるでその音楽に全てを委ねているように見えた。呼吸のリズムは穏やかで、顔には静寂そのものが宿っていた。彼女が何を感じ、何を考えているのか、僕にはわからない。でも、その静かな存在感が、この部屋全体