針を戻す
日々、心を落ち着けようと心がけていも、短氣なわたしのことだ。すぐにドタバタと心が乱れ、それが文章に表れたりする。
言葉が荒れる。表現が乱れる。書いている内容が雑になる。
たとえば、無意識のうちにイヤな文章を読んでしまったとき。
影響されまいと思っていても、その、ぬぐいがたい気持ち悪さが、知らず知らずのうちに自分の文章に混ざっていたりする。読み返して愕然とする。書くことを、表現することを、いつの間にか「嫌なモノ」に乗っ取られている。
そんなとき、私は一度手を止めて、針を戻す。
美しい文章、好きな言葉、気持ちのいい表現を読むことで、自分を取り戻していく。
それはまるで、電波時計のようだ。狂った針が、正しい時刻を求めてまわり出す。ぐるぐるぐるぐる。まわりながら針を戻していく。じっとりとまとわりついていた、嫌な言葉の呪いが振り落とされていく。乱れた言葉のイメージを洗い直し、自分の言葉として取り戻す。
美しい言葉は、汚れた言葉よりも、ずっと強い力を持っている。
そして私は心を落ち着け、キラキラと光る文章の海原へと戻っていくのだ。
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