「『忖度』ということばが大ッ嫌い」

もし最初に出会ったのが選歌のある結社だったら、短歌との向き合い方は今とは随分違うものになっていたのではないか。偶々縁づいた結社が同人誌だったことが、わたし個人には幸いした。選のある場だったら、選んでもらいたさに選者の好みに合わせていってしまったかもしれない。そう思う程度のこころの弱さ、さもしさがわたしには、ある。歌を落とされたら、自分を全否定されたように感じたかもしれない。恥ずかしさで頭がいっぱいになって、落とされた理由を冷静に分析することもできず、性急に短歌に絶望してしまったかもしれない。

N先生は、歌会の席上できっぱりと、「わたしは『忖度』ということばが大ッ嫌い」と言っておられた。
選歌が問題なのではない。要は自分が、己の智恵と感性を規矩として、自分の軸をきちんと立てられるかどうかなのだ。


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