ヨシダジャック歌集『桃』を読む
みずみずしい黄桃の表紙。ちょうどいい軽さ、明るさの感じられる造り。白すぎず、ほんの少しざらついたページに触れるとき、ペーパーバックっていいなあと思う。この厚みと手触りはどこかなつかしい。そう、昔むかし読んだ、谷川俊太郎訳のスヌーピーの漫画本に似ている。
短歌一首、散文、挿画が見開き二頁にきれいに収まっている。個人的にいいな、好きだなと思った作品を、二首引用。
星座のおおぐま座、こぐま座のことだろうか。下句の静けさが好きだ。星の光に何かを求めたり感じたりするというありがちな発想が、きれいに反転されているところが気持ちいい。
ひとつの橋に橋姫がひとりいるのだとしたら、大阪市内には何人の橋姫がいるのだろう。橋姫どうしで集まって遊びに行ったりするのだろうか。歌に触発されてそんなことを想像するのが楽しい。
ジャックさんの短歌は、きちんと勘所を押さえていながら軽やかで自由だ。『桃』を読んでいると、自分の短歌のとらえ方、表現の窮屈さ、重さが逆光を浴びたように浮かび上がってくる。