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フィルム写真の湿度

 カメラのことも、レンズのことも、私はまったくわからないけれど、写真が大好きで、かつて仕事で、ある写真家さんのインタビューをしたことなどもあいまって、興味は尽きない。
 写真家の方が書かれる記事のように専門的な観点で語ることは出来ないけれど、フィルム写真に感じることを私なりに書いてみたいと思う。

 魚住心さんが、フィルムを使うようになったのは昨年(2024年)春ごろ。それからというもの、デジタルとフィルムと、両方の写真を仕上げていただいている。
 フィルム写真の独特の仕上がりを、心さんは「記憶的」と表現した。ああなるほど、ほんとうだ、と、すぐに思った。「記憶」という言葉が、これ以上ないほど適している。そこには、その時の想いだけでなく、温度や湿度、風、あるいは音なども含まれているように感じられる。
 記憶的という以上に何があるだろうかと思われるけれど、少し表現を変えるとすれば、私は「湿度」ではないかと思う。

 デジタルがクリアで透明感のある世界なら、フィルムは良い意味で霧がかっている。ごく小さな水の粒子が、ゆったりと漂うように奥行きをもたらしている。あらゆるものが含まれていると感じるのは、そのせいだろう。

 実際にデジタルとフィルムとを並べてみると、よくわかる。
 トップで使った画像のデジタル版はこちら。
 

 念のため断っておくけれど、デジタルとフィルムを比較して、どちらがいいか、などと言いたいわけではない。
 両者は表現される世界観が違うだけで、どちらにも良さがある。

 いくつか並べてみるので、いずれの良さも感じてみて欲しい。
 
 まずは青紅葉の撮影。

フィルム写真。絵画的な感じ。


デジタル。クリアで青紅葉の色と木漏れ日がとてもきれい


 雨が降り出しそうな曇り空の夕方、室内で自然光だけでの撮影。
 


 午後3時過ぎ、日がかなり傾いて建物の影がだいぶ落ちていた。熱海のMOA美術館で。
 ガラスにテラコッタという硬質な素材があるなかで、フィルムは独特の柔らかさが出ている。


フィルム。ガラスさえもやわらかに感じられる。
デジタル。ガラスのクリアな感じが出て、シャープに見える。


 この写真は、さらに日が翳った時で、光は良い感じにやわらいでいた。
 少しアンニュイな雰囲気がすごく好き。
 

フィルム。MOA美術館


 若い世代にもフィルムカメラが人気らしい。多くの人が潜在的にやわらかいもの、やさしいものに惹かれているのかも知れない。
 AIがどんどん使われるようになり、デジタルが当たり前になったことへの反動だなどと片づけるつもりはないけれど、写真の表現が多彩になっていくことは好ましいに違いない。

 さいごに、おまけ。

 心さんが使っているカメラで、撮らせてもらった。



 その写真が、こちら。
 

 

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石川真理子
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