経年の美
古い写真を整理して思ったのは
今の自分がいちばんだということ。
よくこんなにやさしくほがらかな顔に
なれたものだと安堵する。
うれしさがひたひたとわいてくる。
人はどう見るかわからないけれど
今の自分をうつくしいと思える。
若々しいものに心ときめくのは
本能にもとづいた反応で
人間だろうと動物だろうと
生命の始まりからそうだったのだから
抗おうとは思わない。
けれどその一方で
経年による美しさを忘れ
見いだせなくなっているのではないだろうか。
樹木や土に由来したものではなく
石油由来の「便利な素材」を多用し
数年でダメになったと捨て去って
ピカピカ新しいものと入れかえる。
野菜も果物も規格に当てはめようとして
科学の力で腐りにくくする。
まわり中、経年を拒絶するものばかり。
そうして、数十年の時が過ぎ
無意識のうちに経年の美を忘れたのが
現代人かも知れない。
さて自分の経年の変化を
どこまで受け入れていけるか
願わくば
最後の日まで。
写真:魚住心
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