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すべてはうつろいのなかに

君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

藤原義孝

あなたのためだったら
この命を捧げても惜しくない
そんなふうにさえ思えていたのだけれど
こうして逢瀬を重ねてゆくと
むしろ少しでも長く生きたいと
思うようになったよ。
(それほどあなたとこれからも
 時を重ねていきたいんだ。できるだけ長く)
見目麗しい青年でありながら
仏教への帰依深く
出家さえ考えたという藤原義隆。
初めて愛した女性への
若者らしい真っ直ぐな思いです。
けれど義隆は
わずか21年の生涯を終えました。
当時流行っていた疫病に倒れたのです。
医療も科学も発展して
いまや世の儚さは感じにくくなりました。
だけど
「すべてはうつろいのなかにある」
という真理は
実はまったく変わってはいない。
そのことに気づけたら
人を愛するその想いも
もっと濃やかになるかもしれません。



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石川真理子
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