備えてますか?書架の地震対策で命と本を守る。 - 対策.01 - 書架の転倒を防止する
過去に好評だった絵画の地震対策に続き、今回は書架(本棚)の地震対策をテーマに、人の命と図書資料を守るための対策方法を全3回のシリーズでお届けします。
地震の発生を止めることはできませんが、地震への適切な備えをすることで、被害を軽減することは可能です。
保存と展示の専門店『筧-KAKEHI-』の運営元「金剛」は、これまで移動棚や書架の開発と共に、40年以上地震研究に取り組んできました。第一に人命を守り、そして図書資料の破損や復旧作業の軽減のためにできる地震対策を、金剛のこれまでの取り組みや実際の被害事例、納入事例などを交えながらご紹介していきます。
▽絵画の地震対策記事は以下よりご覧いただけます▽
● 金剛の地震研究の歩み
金剛は、1977年の移動棚の転倒・応用解析の実施に始まり、何度も耐震実験・振動実験を繰り返しながら、40年以上地震研究に取り組んでいます。
兵庫・大阪地域に大きな被害をもたらした1995年発生の兵庫県南部地震以前より、地震の揺れによる建物と家具の振動の研究と、移動棚の振動実験を精力的に行ってきました。1992年発刊のつなぐ情報誌『PASSION』内の特集「地震と移動棚」では、振動実験のレポートとともに”免震″の重要性を提唱し、兵庫県南部地震時には実際に納入した免震移動棚が効果を発揮したことを確認。翌1996年、兵庫県南部地震の実大波(神戸海洋気象台観測波)による振動実験を収納物の落下もなくクリアしたことで、大規模地震に対する免震移動棚の安全性が改めて実証されました。
その後も様々な地震波で振動実験を継続しながら、1997年には開架用に「免震書架」を発売。現在に至るまで地震対策製品の開発・改良に力を注いでおり、図書館を中心に多くのお客様にご好評いただいています。
● 書架の地震対策 「もしもの備えから、いつもの備えへ」
大規模な地震が発生した場合、書架の転倒によるケガや、図書資料の落下によるケガ・図書の破損、そして散乱した図書の復旧作業など様々な被害の発生が想定されます。まずは人の安全を確保し、次に避難のための通路を確保、そして地震後の復旧作業を軽減できるよう日頃から備えておくことが必要です。
金剛は、これまでの地震研究から以下の対策方針と対策を定め、多くの施設様に地震対策のご提案を行っています。
<地震対策方針>
●人の安全の確保
●避難通路の確保
●図書資料の保全
●復旧コストの軽減
<書架の地震対策>
対策.01 壁・床・書架同士の固定
最も基本的な対策方法です。
対策.02 傾斜スライド棚・木製傾斜スライド棚
新規でのご採用のほか既存棚へ取付け可能な場合もございます。
対策.03 免震書架
書架本体に免震構造を備えた地震に強い書架です。
<対策レベル別想定被害>
では、各対策について次節よりご説明していきます。
今回は、「 -対策.01- 書架の固定で転倒を防止する」についてです。
● 対策.01 書架の固定で転倒を防止する
最も基本的な地震対策は、書架の固定です。
重量のある書架が転倒すると、倒れてきた書架の下敷きになったり、ぶつけてケガをしたりと大変危険ですので、あらかじめ固定しておくことが非常に重要です。
固定方法は、設置環境や固定箇所の下地材に応じて、壁固定・床固定・天ツナギなどの各種方法があります。
※金剛では、固定金具で固定する際に下地がコンクリートかつアンカー施工した場合を耐震仕様と定義しています。それ以外の固定方法は、書架の振れ止めのみとなります。
対策.01-a 床固定・壁固定
下地のコンクリート部分にしっかり固定するのが最も効果的です。
2011年の東日本大震災直後、ボード壁に固定した金具が抜け、転倒してしまうといった事例が問題視され、ボード壁の下地材やボードの奥のコンクリート壁にアンカーを効かせるような施工方法が東日本地区を中心に広く普及しました。
しかし地震が少ない地域とされてきた熊本ではあまり普及しておらず、2016年の熊本地震では、このケースでの転倒が多く見受けられました。
この反省をもとに、今一度、書架設置時の固定方法のご提案を徹底しております。
対策.01-b 天ツナギ
書架同士を固定し、壁固定が困難な配置の書架の転倒を防止します。
空間に合わせたデザインへの対応も可能ですので、ぜひご相談ください。
対策.01-c 支柱形状の変更およびブレースの採用
耐震書架は、下記の要素から仕様を決定します。
● 書架への積載荷重
● 書架の高さ、奥行寸法
● 単柱書架もしくは複柱書架の採用
震度係数等の要求事項に応じた最適な書架をご提案いたします。
今回は、最も基本的な対策、書架の固定方法についてご紹介しました。
これまでの地震の被害状況から、書架の固定の重要性についてご理解いただけたのではないでしょうか。
次回は「- 対策.02- 傾斜スライド棚で図書資料の落下を防止する」を2月に公開予定ですので、どうぞ楽しみにお待ちください。
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