やさしい世界の贈りもの
私の作品は「手のひらにのる、いとしいモノ」というコンセプトがあります。
思うように進んでは行かない人生や、いつも薄らとまとわりつく孤独感。少し生きにくい世の中で物言わずそっと寄り添ってくれる存在があれば心強い味方になってくれる。
そういったものが、誰にでもあるのではないでしょうか。それは、具体的なものでなくても音楽だったり、漫画のセリフだったり、誰かとの思い出だったり。
私は今、新宿高島屋にて26日まで出店しているのですが、心が温まったエピソードをここでひとつ。
つい昨日、開店早々に初老の紳士がふらりと店頭に訪れました。真剣に作品をご覧になっていたので、どのような作品かご説明申し上げるとふむふむと、熱心に話を聞いてくださります。
「このような手作業の作品を見るのはお好きですか?」と尋ねたところ、「DMを見て気になって…」とのことでした。
DMはイベント会社さんから多くの方に発送してくださっていて、小鳥のブローチを掲載していただいていました。
掲載されているブローチを紹介したところ、
「小学生の女の子は気に入りますか?」とのこと。どうやらお孫さんへのプレゼントを考えていたようです。
「私の姪っ子もちょうど小学生ですがかわいいって言ってよく見ているんですよ」と答えると、にっこりして「ではこれをひとつ、お願いします」と小鳥のブローチをお迎えいただくことになりました。
ピンクのリボンをかけてお包をしながら、ふと自分も小学生の時に今は亡き祖父から貰ったガラスのウサギの置物を思い出しました。
私はえらくその置物を気に入って当時はそれを眺めたり口にいれてみたり(!)して大切にしており、時が経ち家を出てもそれは私の傍にあります。
小鳥のブローチがそのウサギの置物のように祖父からの無償の愛の象徴として、まだ小さな女の子にそっと寄り添ってくれる存在になれたら作家冥利につきるというもの。
これからもそんなやさしい世界を繋げていけるようなものを作っていきたいなぁ、などと思うのでありました。
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