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心理的安全性の高い場所をつくりたい

僕の仕事は具体で言えば、「カフェ店主」なんだけど。

抽象化して再定義すると、「心理的安全性の高い場所をつくる」ということなんだなぁ、と気付いた。

たぶん、それが僕のやりたいことでもあるのだ、と。

僕はカフェに酒を置かない。

夜カフェでも、酒を置くことは一切ない。

夜カフェ営業をするカフェの多くが、あからさまに酒を置かないにしても、クラフトビールやワイン、カクテルなどの酒を置いている。

たとえばカフェチェーンのPRONTOは、夜カフェ業態として "キッサカバ" を展開している。

キッサカバとは呼んで字の如く、"喫茶" と "酒場" を合わせた造語だ。

当然だが、酒を提供している。

また、こちらも大手カフェチェーンのスターバックスコーヒーも、一部ではあるが酒を提供している店舗がある。

ローカルの個人経営カフェでも、クラフトビールを提供しているところは多い。

ニーズがあることは間違いない。

酒は利益率も高いので、ビジネス的な観点からも導入するメリットは大きい。

ところが僕は酒を提供するのには、全く気が乗らない。

なぜか。

具体的な話で言えば、酔っ払いのおっさんに店に入ってきてほしくない。

赤ら顔でアルコールと煙草の臭いを放ち、乱暴に闊歩してでかい声で喋くる、そんなおっさんは一歩も店に入れたくない。

店の治安が悪くなるからだ。

治安が悪くなるのがなぜ嫌なのかというと、他のお客さんが安心して過ごせないからだ。

読書好きな文学少女然とした若い女性の隣で、さっきのおっさんが声を荒げて飲んだくれていたら、文学少女は店を出て行ってしまうだろう。

そんな店は絶対に嫌なのだ。

そうではなく、読書好きの若い女性や、その彼氏の清潔感のある好青年や、珈琲を嗜む教養のある紳士淑女の方々が、気持ちよく過ごせる場所を作りたい。

そういった方が逃げ込める場所のようなものをつくりたい。

飲んだくれの声のでかいおっさんがいる大衆食堂や居酒屋から逃げ出して、逃げ込める場所をつくりたい。

ここにこれば安心して読書ができ、友達とおしゃべりができ、子供と団らんの時間を過ごせ、彼氏と微笑み合える、そんな空間を。

ここにいれば安心。

ここにいれば落ち着ける。

ここにいれば穏やかな気持ちになれる。

そんな場所をつくりたくて、カフェをやっているのだと思う。

すなわち僕は心理的安全性の高い場所をつくりたい。

心理的安全性の高い場所をつくる、ということが僕の仕事だし、それが僕の才能だと思う。

世界観にこだわるのも、たぶんその才能から来ている。

世界観を作り込むということが、その世界の住人にとっては心理的安全性の高い場所となる。

たとえば、カフェ空間で暖色系の小さい灯りを手元だけに照らし、床はモルタル、木のテーブルに木のイス、店内には控えめにBGMが流れ、珈琲の香りが漂う。

酒はない。

そんなところに、酒飲みのおっさんは入って来られない。

居心地が悪くなって出て行ってしまうだろう。

そういった世界観を作り込むことが、心理的安全性の高い場所をつくるという生まれ持った才能の一部なのだと思う。

これは僕の他の仕事にも言えるし、仕事のみならずプライベートの人との関わりにも言える。

僕が文章を書いているのも、そういう理由だ。

たぶん僕の文章は大衆に受けるような、誰もが受け入れられるような文章ではないと思う。

でもきっと、ほんの一部の人にとってはとても居心地がよく、共感できる文章だと思っている。

最近、一般公募されていた2冊のエッセイ集に投稿して採用が決まった。

僕にとっては大きなことで、僕の文章を欲してくれている場所が確かにあるんだなということを実感する出来事だった。

きっとこの2冊の読者にとっては、「このページにいたい」と思ってもらえるような文章になっているはずだ。

そういうものを文章を通してつくりたい。

なんとなく見返したくなる、このページをずっと読んでいたくなる、じっくり眺めたくなる、そんな文章を書きたい。

僕がカフェでやっていることは、文章を書くときにも変わらない。

だって僕の仕事はカフェ店主でもなく、文筆家でもなく、「心理的安全性の高い場所をつくる」ことだから。

その軸さえ間違わなければ、僕は良い仕事ができるはずである。

ここにいていいんだ。

私のままでいいんだ。

僕が大事にしたい人々が、そんなふうに思って過ごせる場所をつくっていけたらいい。

それが、僕が世の中に提供できる価値だと思う。

ちなみに最近、僕の友人とラジオ形式のYouTubeチャンネルを立ち上げようと準備をしている。

ここも僕にとって大事な場所で、やっぱり心理的安全性の高い場所にしたいという思いがある。

よければ、チャンネル登録して待っていてくれるととても嬉しい。

きっとある人にとっては、とても居心地がよく、ずっと聴いていたいと思うチャンネルになるはずだ。

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今野直倫
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