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なんで?理由は?ってどうでもよくないですか、そんなこと。
なんで?理由は?ってどうでもよくないですか、そんなこと。
と割と本気で思っている。
思っちゃっている。
何か特定の出来事があったわけではないが、日常的にうっすらと常に思っているという感じ。
人間関係を育む上では好ましくない価値観だと認識はしているので、ちゃんと理由を添えるようにはしている。
ただ、それをしている時、僕はとてつもない違和感に襲われる。
なぜなら、そもそも何かを決断したり、選択したり、行動したりするとき、理由なんてないはずだからだ。
全ての理由は後付けだ。
だから、その理由というやつに本質的な意味などない。
たとえば、なんでもいいが訪問販売の営業さんが来たとき、理屈で考えれば全くもってお得で損などない商品でも、僕たちは普通に断る。
ウォーターサーバーの訪問販売など、断ったことしかない。
それは客観性や論理性を無視した、「なんとなくこいつから買うのは嫌だ」という気持ちに基づいている。
つまり、感情だ。
いくら論理的に正しくても、感情がNoといえば結論はNoだ。
人々が理屈や理論によって決断をしているなら、営業という仕事はどれだけ楽だろうか。
だが、実際はそうなってはいない。
トップセールスの人ほど顧客との関係性や、自身の人間性、商品やサービス以外のケア(御用聞きとも言う)を大事にしている。
営業が上手い人というのは商品の説明が上手い人ではなく、顧客の感情を動かせる人なのである。
だから、いくら顧客に「なんで買わないんですか?」「理由はなんですか?」と聞いたところで、商品は売れない。
人間とはそういう生き物である。
さらにいえば、人間は人間である前に熊や鹿や猪と同じ "獣" である。
山で遭難し熊に出くわしてしまったとき、いくら「私なんかという人間よりも、あそこにいる鹿のほうが栄養価も高く、可食部も多いのでコスパがいいですよ!私を捕えるのに時間をかけるのは貴方様にとって損ですよ!」と言ったところで見逃してくれるわけがない。
もちろん、そもそも言葉が通じないというのはあるが……。
仮に熊語の翻訳機が開発されたとしても、多分その願いは虚しく、食われておしまいだろう。
熊は極端な例だが、我々人間もベースは同じということだ。
むかついたから。
イラついたから。
悲しいから。
虚しいから。
楽しいから。
嬉しいから。
という感情で日々選択をしているし、決断をしているし、行動している。
「なんで?理由は?」
と聞かれた時にスラスラと答えられるとしたら、次の二つのいずれかだ。
感情を無視して理屈によって導き出された選択をしている。
感情によって選択をしたが最もらしい理由をでっち上げている。
この二つ以外にはあり得ない。
そして、この二つはどちらも悲しい選択の仕方だ。
第一に、僕たちの人生の大目標だと思われる「幸せ」とは、これまさに人間の感情である。
つまり、感情を無視して選択をした先には幸せはない。
第二に、理由をでっち上げることは嘘を吐いていることと同義であり、自分に嘘を吐くことになる。
つまり、自分の心と言葉が離れていってしまうことになりかねない。
「なんで?理由は?」と聞かれたときにスラスラと理由が出てきたら、それは危険信号だと思っている。
うーん、なんでだっけ?
と自問自答し、自分の心に耳を傾けてじっくりと言葉を紡ぎ出していくといいう姿が、僕は人間らしいと思っている。
とはいえ。
そんなことをいちいちしていたら、人間生活がスムーズに営まれないというのもよくわかる。
理由は?と聞かれて、うーんと腕組みをして黙りこくってしまう。
「なんとなく。」
「心がそう言っていた。」
などと返答しようものなら、相手が非常に不安になってしまう。
大丈夫かこいつ、と思われてしまう。
だから現実的な解としては、やっぱり理屈や論理や客観に基づいて、理由をくっつけて伝えてあげるということになる。
結論としては同じだが、中身は違う。
この理由を口にするときに、「これは頭で考えた理屈だ。心の選択ではない。」としっかり認識することだ。
これをしないと、どんどん心が理屈に蝕まれていき、いつしか社会や他人の価値観で生きていくことになってしまう。
理屈は理屈、心は心。
理屈はあくまでもコミュニケーションツールであると認識することだ。
大事なのは、心だ。
自分の心を守ることだ。
ロジカルシンキングは社会に出たら教えてもらえるが、心の守り方は誰も教えてくれない。
だから、自衛するしかない。
「なんで?理由は?ってどうでもよくないですか、そんなこと。」
と言っている自分を心の中に住まわしておこう。
しかし、このnoteで言いたい一番大事なことも、合わせて伝えておかなければなるまい。
「なんで?理由は?ってどうでもよくないですか、そんなこと。」
と口に出して言わないことだ。
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