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【追憶のビエネッタ・鬼哭の章】

ひとりのモンハンプレイヤーの回顧録、第二弾。
Twitterからモーメント機能が無くなってしまった事によるサルベージです。


サンブレイク発売目前の今
再び回顧録をまとめておこうかと思う
今まで断片的にしか語ることが無かった
私の財産でもある傷跡の物語だ
~追憶のビエネッタ~【鬼哭の章】

私が如何にしてガンナーになったか
それは以前に話した通りだ
ここでは私と その相棒であるボウガンについての歴史を語ろう
古い記憶で話は半分だが
どこからがフィクションなのかは聴き手のあなた次第ってやつだ
始まりは そう いつもロックラック

MH3のボウガンは シリーズ唯一となるパーツ組み換えシステムだった
フレーム+バレル+ストックで組み上げる
少ないパーツ群のせいで
そのバリエーションは千差万別とまではいかないものの
アセンブルの妙味は他に代えがたい体験だった

猟友の手練れガンナー達はみな
各々のスタイルに合わせたボウガンを組み
オリジナルの銘を付けて愛用していた

どんなゲームにも最適解はある
最強のボウガンは似たような構成になる
話は逸れるが まずはそれに触れておこう

フレーム:火竜砲改
バレル:イビルマシーン
ストックはお好みでブリカノかサンダークルスか
強い
MH3で強かった貫通弾のDPS最高峰である
そしてこれは誰もが
本職剣士であっても一度は手にした事があるボウガンだった

イベントクエスト「世界を喰らう者」
それに出てくる超巨大なイビルジョーは
普通に戦えば難敵だが 貫通弾には弱かった
拘束係一人と貫通特化のガンナー3人でセットプレイをすれば
早くて2分で捕獲完了となる
それで高速で回して「お守り」を大量に稼ぐ部屋が求人区には乱立した

条件に合う 貫通弾に特化したボウガンを組んでいない者は
入室を許されなかった
そこで使われていたのが前述の最強ボウガンだったという訳ね

私も一度だけ参加してみたが
「こんなのはゲームじゃない ガンナーの本分ではないし
ボウガンも冒涜している」という感想に至った
「世界ジョーハメ部屋」は 私にとっては
効率を最優先する作業ゲーマーを心の中で軽蔑する時の
象徴的なフレーズになった

話を私のボウガンに戻そう
私が組んだのが
フレーム:バズディアーカ
バレル:バズディアーカ
ストック:バズディアーカ
そう 一式ディアブロスの中折れミドルボウガンだ

組み替えてないじゃないか?
そう思うかもしれないが
コイツはとても癖が強い性能になる
どこか1つでもパーツを替えれば扱いやすくなるのだから
組み替えてない方が珍しい構成というヤツだ

リロード遅い・反動大・ブレ左/大
属性も状態異常も撃てない物理弾特化
中折れ式で動きは遅い
その割に攻撃力はホドホド
射程0.7倍の貫通弾を活かすには
剣士間合いのインファイトかつ 弾幕の手数が必要になる

しかし私はこの癖を使いこなす事に決めた
元モンスターのディアブロスの愚直さに敬意を感じたからだ
私には理想のガンナー像があった
撃って、転がって、リロードして
モンスターを好敵手と定めて正々堂々の決闘に挑むスタイル
バズディアーカはそれを行うには申し分の無い性能だった

強くはない構成のボウガンを
試してみるのに必要なのは好奇心であり
使い続けるのに必要なのは覚悟と愛だ
ロックラックにはサブキャラ含めて7000時間は滞在したが
私と同じ構成のボウガンを
メインで運用しているガンナーには出会わなかった

これは誇張ではない
あの時代 バズディアーカは私だけのボウガンだった

ロックラックに永遠はあらじ
MH3のオンラインサービスは終了を迎えた
移住した先はMH3G
3からすれば 私にとっての衝撃の変化が大きく4つ有った

1つ目 ハードが3DSになった
モンハンは据え置き派だった私にとっては
操作の面で大きく不自由を感じることになった

2つ目 マルチプレイがオンラインに対応せず
ローカル通信専用になった
急にボッチになった
毎晩遅くまでチャットを交わした猟友は
全て顔も名前も知らないオンラインでの繋がりだった私にとっては
まさしく一家離散の衝撃だった

3つ目 ボウガンがパーツ組み換えではなく
従来の一体成型に戻った
名作揃いだった猟友達の愛用ボウガンは
ことごとく思い出になったが
私の相棒は残った
幸か不幸かそれが一体型だったせいである

4つ目 バズディアーカの性能はガラッと変わっていた
いわゆる従来の立ち回りは装填数の面で大きく見劣り
代わりにP3から実装された
「しゃがみ撃ち」に秀でたヘビィボウガンになっていた

環境が大きく変わった中 私が選んだ武器はこうだ
ボーンシューター→デュエルスタッブ→バズディアーカ
他は一切触らない
当然だろう?色々試してたどり着いた前作とは違い
私のキャラクターは既に完成していたのだから

角砲は完全に私のアイデンティティだった
砂塵の前衛ガンナー『暴れ撃ちネッタ』
アイスクリームの名前を冠し
コートの色はチョコミント
砂原での決闘を身上とする闘角士
MH3で確立したロールプレイは
これまでのゲーム人生の中で最も完成度の高い分身であり
それは成功体験そのものだった

愛用の武器に
システム上の役割が与えられていたその事自体は誇らしくあった
だから無理をしていたのかも知れないが
しゃがみ撃ちが私の基本の戦術になり
全てのモンスターを ことごとくしゃがみでねじ伏せていく事になった

隙を狙ってしゃがむという次元ではなく
もはやリロードの感覚である
突進を躱してしゃがみ
ブレスをくぐってしゃがみ
無理ならすぐに立ち
カヤンバにタゲを取らせてしゃがみ
怯みを期待してしゃがみ続ける
立ち上がりから派生できる前転で
フレーム回避を狙えるシーンは限られていた

だんだんと上手くはなったが
それが私の理想のゲームスタイルではない事には気が付いていた
経験を基にした咄嗟のアドリブ判断が好きだったのに
しゃがみ撃ちで重要なのは綿密な先読みかチャートの構成
あるいは脳死がぶ飲みのゴリ押しになる

それでも他の選択肢はなかった
私には愚直で強情っぱりな面があり
そして頑なにパワーバレルだった
でもそれで良いのでは?角砲を背負うものがそうでないならば
むしろ期待外れじゃないか? 

ネロディアーカには難儀した
一体どうして?何の意図があってなのか?
強化した角砲の ブレが左/大から右/大変更になるとは?
冗談じゃない 私の立ち回りは左ブレに適応しているのだ
武器の癖に寄り添って習熟するというスタイルを
馬鹿にされたような気がした

リミッターが解除出来るようになった
速攻で外した
立ち撃ちの性能は前作のように戻るとまでは行かないが
それでももうしゃがむのはコリゴリだった
巷では「しゃがめよ」という言い回しが流行っていたようだが
それは私にとっては呪いの言葉のようだった

「しゃがめよ」率直に聞いて 屈辱的な命令だ
誰が誰に言っている?おそらくは自虐の意味合いだろうけど
私はそれを面白がる心境にはなれない
3Gを角砲オンリーでクリアした奴が他に何人居る?しゃがめよ?
言われるまでもなく 私が世界で一番しゃがんでいる! 

そしてついに 最も聞きたくない噂を耳にした
「拘束係としゃがみヘビィが居れば、だいたいのヤツはハメ殺せる」
その性能を考えれば無理のない話だ
だが私の心に起こった気持ちはこうだ
(私の武器が…世界ジョーハメに使われている…!) 

唯一無二だったはずの私の誇りが
取り上げられ 改造され 量産されてしまった
よりにもよって 私が相容れない効率厨たちの手にバラまかれた
彼らは口々に「しゃがめよ」と武器の性能を揶揄しながらも
それを都合よく使っている! 

大袈裟に言えばそんな所だろうか
マルチの実態を知らない私の
取るに足らない被害妄想だったかも知れない
ただその憤りは
今まで我慢していたものが全てひっくり返るのには十分過ぎた

私の気持ちを全て理解し
あるいは取り成してくれたであろう猟友達とはチャットも叶わない
それで私は…… モンハンを辞めてしまった

「カプコンを見限った」と嘯いたのは
客観的に見れば虚勢であり 言いがかりであろう
何のことは無い
一人相撲で派手に転んで
言い訳をする相手もおらず
恥じ入るようにひっそりと
私は「モンスターハンター」から逃げ出したのだ



距離を置いてしまいさえすれば
外の世界は気にならなくなった
月日が経ち 4Gが出ようがXXが出ようが私には関係が無かった
角砲のスゴイ派生のナントカアーカが
猛威をふるって人気らしいとも聞いたが
それはもう私の武器ではない

その間の私は別のゲームに移り住み 渡り歩く事になる
失った何かを取り戻す旅だったと言えるかも知れない

『討鬼伝』は救済だった
昔ながらのターン制狩猟アクションに加え
英霊のミタマ3つを組み合わせてキャラをカスタマイズするシステムは
MH3のボウガンアセンブルさながらだった
私はやはり テーマを決めてミタマを選別し
組み合わせに名前を付け
それをキャラクターのイメージと合わせた

私にとっては討鬼伝こそがMH3の後継ゲームのようにさえ感じられた
それでやる気を出して
NPC同行者無しの単独プレイを動画に撮ってアップした
どこにも需要があるとは思えなかったが
ロールプレイヤーがどこまで出来るのかを表明するという意味で
チャレンジングな試みだったと思う

『ダークソウル』は激励だった
何度も死んだ
ストーリーは難解で どこに行っても廃墟か荒地だった
暗く冷たく美しい世界観
大衆への迎合を見せないその哲学は
孤高のロールプレイという概念を厳しくも肯定してくれた

『スプラトゥーン』は革新だった
ここで出会った新たな相棒で『暴れ撃ちネッタ』は再誕した
そのブキこそが.96ガロン

シューター随一の攻撃力を誇るが
射撃レートは最も遅く
弾がブレて当たりにくいため使用者は多くない
サブとスペシャルは攻撃的ではない事もあって
戦略的な位置取りが重要になる玄人向けとも言えるブキだった

「溢れる暴威を知性で御する」
私の理想とするカッコよさに
新しいベクトルが生まれた切っ掛けでもある
コンセプトのあるゲーミング作りはすでに私の得意分野だった

ナワバリバトルの日々は長らく充実していたが
難しい課題はずっと付きまとっていた
このジャンルは勝率が至上の対人ゲームで しかもチーム戦なのだ
効率を最優先しない事がままある個人のコダワリは
どのレベルまでなら許容されるのか?

ロールプレイの要素無しに
オンラインゲームをする価値は無いと思っている私にとって
シューティングゲームは安住の地には成り得ないのではないだろうか?
やはり もっと自由度の高いフィールドが必要だと感じた

そしてさらに時は経ち モンハンRIZEが発売される
初めは討鬼伝のデザインに酷似している事に親近感が沸いた
いや それだけじゃない
何だろう?うまく説明できないけど
カムラの里の雰囲気はどことなくロックラックに似ている
私の心に、静かな砂風が… 吹いた

気になって調べてみた
バズディアーカの評判は…
産廃・ネタ武器・しゃがめない・竜撃弾だけ…等など 散々の様子だ
(そうか、誰も使ってないか… そうか… そうか…)
心の中の砂風はだんだんと強くなり
やがて激しい砂嵐となって吹き荒れた
その時の感情に 名前は付いていない



しゃがみが消えた角砲に
誰も見向きすらしなくなって
だから彼女は戻り来た

恨みは晴れて呪いは解けて
それでもやっぱり仏頂面で
やっと彼女は戻り来た

殺風景な砂原越えて
ミントの団子の噂を聞いて
ついに彼女は戻り来た

こんばんは ルーキー・ビギナー・ベテラン気取り
私のことはそうだな「バズディアさん」とでも呼ぶがいい
そう「角砲」だ
こいつの扱い方がわからない?
ならよく見ておけ この私が

暴れ撃ちの意味を教えてやろう

~追憶のビエネッタ~【鬼哭の章】 完


原文の執筆時期は2022年です。













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