【MBTI】はこう使うな
どんどん使いたいという人に対しては、お節介極まりない記事です。
筆者がMBTIに出会ったのはもう20年以上も前になる。当時はSNSでの情報交換なんてものは勿論、ネット上に詳しく解説したサイトなど無く、書籍も難解な和訳のものしか無かった。公式のセッションは敷居が高かったので、独学でひっそりと楽しんでいた。
巷では全く認知されていなかったのだが、性格を診断して類型するという性質上、学術的な関心が無い人達にまで広まると血液型や星座のように扱われてしまうのは予想できたため(流行るな…流行るな…)と思いながら過ごしていた。同時期にハマっていたエニアグラムの方も同じような感じであったが、エニアとは違い、MBTIは次第にブームになり、ついには世間に広まってしまった。
流行ってしまったものは仕方がないので、だったらまぁ各々が好きに使えば良いかと思ってはいたのだが、最近になってMBTIハラスメントなどという言葉まで出てきてしまった。既にMBTIに嫌悪感を持ったり、拒否反応をしたり、使っていたけども何だか疲れて離れてしまったという人達も多く見かけるようになった。無理からぬ事だと思いつつ、長年ひっそりと見つめ続けた者として、使い方について一言残しておきたくなった次第である。
【MBTI】を使うメリット
本題の前に使い方について触れておきたい。メリットは大きく2つあると考えている。
①自分を深く知る事ができる
これにより、人生を過ごしやすくできる。得意な場面を進んでこなし、苦手な場面は避けるか注意して当たる事で乗り越える。つまずいた時の対処の方向も自分に合ったものが理解できるため、知識を幸福に繋げる事が出来る。
②価値観が多様である事を学べる
周りの人が、それぞれ全く違う価値基準で行動しているという事が判るため、他者理解が進み、社会性が数段階アップする。また、自分や他の誰かが異常者なのでは?という勘違いをしなくて済むようにもなる。
【MBTI】使い方の原則
使用上の注意点も2つある。
①類型として集団に対して適用する
主に社会の構造や問題を分析するのに適している。社会全体の動きを構成する価値基準が大まかに16種類で把握できるため、類型を用いない場合に比べて理解が進みやすい。2軸だけでも効果は大きく、S型とN型の価値観の違いや、J型とP型の行動基準の差など、MBTIを通して世の中を見ると多くの発見がある。
②個人に適用する場合は予測ではなく解釈に徹する
個人を型にはめる使い方は原則間違い。「あの人は〇〇〇〇だから✕✕の時△△しそう」という未来の行動の予想には全く使えない。予測可能性が低いという言い方もする。心理学が科学として扱われない大きな理由でもある。予測は再現性のある科学の分野が適している。誰かの言動を見て、「〇〇タイプが△△の事情を持っていたからかも知れない」と推量の範囲を特定し、理解の解像度を上げるのには役に立つ。
本題【MBTI】の使用で注意すること
自己紹介には使わない
個人的に殆どの人がやらかしていると感じているのがコレ。本家ではない16personalitiesの無料の診断テストで出た結果を世界に向けて公表する人が後を絶たない。診断は精度が良くないのもさる事ながら、内省を積んで自認に至った場合でもお勧めできない。一見、自分を知ってもらうのに効率が良いように思ってしまうがこれは罠で、進んで色眼鏡で見られに行くようなものだ。なまじ情報を持っている人に対しては、得てしてイメージと自己との違いを解ってもらう行程の方が膨大な労力を使う。タイプの公表は、自分の特徴をじっくり見てもらう機会をあっさりドブに捨てる行為に近しい。MBTIについて理解を深め合うような交流の場ではメリットの方が多いかも知れないが、タイプを明かすのは時期を待ち、理解のある人を選んで慎重にした方がいい。なにせ不可逆な行為なので。表現が合っているか判らないが、セクシャルマイノリティのカミングアウトに近い感覚かも知れない。
みだりに他人を診断しない
まず、精度に難がある。周りの人を簡単に診断しすぎ問題。自己の自認もなかなか遠い道のりであったりするのに、何故か他人の事はアッサリ判定してしまいがち。相手のタイプが確定すると、理解に使う労力が大幅に減るためか、決めつけには脳の処理がラクになるというインセンティブが働く。そのため他人のタイプ特定は誤診が多いと見られる。筆者は基本的に人づてに聞く本人以外へのタイプ診断は半信半疑で丁度良いと考えている。
次に、人から診断されたくない人も多いという事が重要。MBTIを快く思っていない人に対しては勿論、そうでなくてもツールを使って心を覗く事には変わりない。自分が表現をしていない部分で何かを悟られるのは良い気分はしない。基本的にはイヤな奴が取る行動であるという自覚はあった方がいい。
偉いもので、イヤな奴だという事は得てして伝わるものなのだ。したがって他人のタイプを診断する行為は自己責任である。
筆者はお構いなしにバンバン観察していた時期があるが、最近は改心して控えるようにしている…
有名人やアニメなどのキャラクターを診断するというジャンルの研究も盛んに行われているが、これは不毛だと感じている。これについては機会があれば別の記事にまとめたい。
原則②の使い方をしたい時などでも、タイプ特定まではせず曖昧にしておいて、S型かN型か、J型かP型か、あるいは特定の心理機能など必要な要素を見るだけで十分な場合がほとんどである。
相性は考えない
エンタメ要素として絶大な人気のある相性。全く必要ない。
本来のMBTIには無い理論なので、混同されている16personalitiesのものになるが、理論自体が全然ピンとこないし不完全だと感じる。そもそも相性が判って得する事など何もない事に多くの人が気づいていない。
相性とは詰まる所、誰かとの交流が上手く行くか行かないかの事前情報である。MBTIの個人への適用かつ予測になるため原則②に反する。合うかどうか判らない段階の人のタイプ公表は当てにならない。相手のタイプを正しく診断するには相応の交流が必要で、もうその頃には合う合わないは判っている。0点。やり直し。
恋愛には使わない
これのために学んでいるという人も多い事だろう。相性の項で大体は述べたし、アレコレ言うのは野暮なのだが、1つだけ言わせてほしい。
初見のゲームを攻略本片手にプレイするな。多くの場合、人生において恋愛を経験する時期は限られている。それは、貴重で自分だけの特別な財産になる。例え上手く行かなくても価値がある。それこそ燃えるような心の交流になるだろう、誰かの手垢の付いた理屈で温度を下げるのは勿体ない。
まだまだ恋はしたいが既にMBTIを学んでしまっているという人も、なるべく忘れて臨む事をお勧めする。
婚活には使ってもいい
もう恋は満足した、あるいは恋愛はよく判らないが伴侶は必要だ、というフェーズの人は活用すればいい。
恋愛が心の芸術だとしたら、結婚は生活そのものなのだ。失敗も財産として味わうなどとボヤけた事を言ってる暇はない。婚活は時間との戦いでもある。使えるものは何でも使って人生の幸福度を高めた方がいい。
勿論、相互理解の効率を上げるための解釈論につきるが。上がれ!成婚率!
人事・面接には使わない
ハラスメントになっているのがコレ。原則②に反する。
この記事では個人の運用に焦点を当てているつもりなので、この部分ではこれ以上いうことは無い。
職選びには使える
のだが、実際は難しいと感じている。日本は職選びの自由度が低すぎるし、大体において就職を決める時点では、様々な仕事に関する情報が無さすぎる。MBTI云々よりは社会の仕組みの方に問題がある。
転職が出来そうな人・これから就職する人は大いに活用してほしい。また、子供に対しては良きように導いてあげる事を期待する。
まとめ
要約するとあんまり言いたくないけどK国での流行り方が全面的にダメ…
MBTIを学び始めると、得られる知見が膨大なため、ついつい全てに関連付けて理解を進めたくなってしまうが、もちろん万能な理論ではないので、それに振り回されない事が重要になる。あらゆるシーンで、使う・使わないの選択を用意しておこう。筆者自身、学ぶこと自体が楽しいと思っているのだが、隣人を理解するためにMBTIというツールを使うのか、MBTIを理解するために隣人をサンプルのように扱ってしまっているのか、絶えず自問していきたい。
と言った所で時間がヤバいのでそろそろ寝ます。
それでは、おやすみなさい。