マニキュアをしたのに、いつもの癖で爪を噛んでしまう。午前零時。雨の音が聞こえる。受話器の底から、彼のため息が届く。 「もう、続けられないんだよ」 「いらないわ」 合鍵を欲しがったのは、彼だった。 「君が嫌いになったわけじゃないんだ」 「捨ててしまえばいい」 なげやりな口調を意識して、私は言う。何か言おうとする、彼。私は受話器を戻す。 彼が封を切ったバランタインがある。グラスに半分ほど注いだ。アルコールが鼻をつく。水道の水で割る。苦い薬を服む