Chants of Sennaar(セナールの聖歌)
ニンテンドースイッチで体験版のゲームを物色していたら見つけた『Chants of Sennaar』が大変面白く、ドはまりしたので流れるように製品版を購入した。
先日プレイ時間13時間ほど?でめでたくクリアしたので感想を書いていく!
どんなゲームなのか?
しいて言えば「古代言語解読×謎解きパズルアクション」。
三人称視点の脱出ゲームという感じである。
主人公は謎の棺で目覚める。この建物はなんなのか全く説明がないまま、ドアのレバーを操作する。
壁には何やら文字があり、どうやら「開く」とか「閉じる」とかの文字が書いてある、、、。
という感じで、言語を解読しながら進めていくゲームなのである!
ヒエログリフなどに古代のロマンを感じまくる私のハートにガツンときましたね。ええ。
ゲームが進行すると、話しかけてくる人物がいたりして。
「ちょっと何言ってるかわからない」とはなるんだけども、そこまで難易度は高くなく、次にやるべき行動のヒントが表示される親切設計なので、促されるままに次の行動にうつり、会話をして、、なんとなく意味がわかってきたぞ・・・となる。
主人公は要所要所で言語をノートにメモをするので、プレイヤーも考察した意味をそこに書き込んでおく。
ストーリーが進行して言葉の意図を掴んだら、そのノートにかかれたイラストに意味をあてはめていく。正解であればノートが光り、そのページは解読終了となっていく。そうやって言語をマスターしてストーリーを進めていくのだ。
架空の言語とはいえ、なんとなく法則を見つけていくのがとても楽しい。例えば、横棒がついているのは動詞ではないか、とか、四角で囲まれているのは場所を示す名詞のようだなとか。
そしてそれが正解だったとき、心の中で「ほらやっぱり!ふふん!」という満足感に満たされる!
大体のストーリーと所感(所々ネタバレ)
舞台はとある塔の中。最初の世界は最下層であり、宗教が存在している。塔の内部に行きたいのだが兵士がなぜだか扉を閉ざしている。人々は神に祈りをささげたいのだが牧師が不在、植物園ではなぜだか植物がみんな枯れてしまう・・・。
次の階層を目指していく途中で死んでる牧師を発見。(なんで死んでるのか特に説明なし)
第二の階層は兵士がいる世界。第一の階層の住民を悪魔と呼び、「選民」を守っている。ちなみに見つかると兵士に殺されるのでコソコソしながらストーリーを進める必要がある。
ステルスアクションは苦手意識があったが、そこまで難しすぎずちょうどいい塩梅だった。
この階層に来て気が付いたのは、文字だけでなく文法が違うこと。
基本SVOではあるが、複数形が最初につく。
第三の階層は兵士の言う「選民」の世界。だがここに住まう人々は自分のことを「吟遊民」と自称。
(吟遊民と訳するワードセンスは私にはなかったので、正解の訳が出てきたときになんじゃそりゃとなった。)
吟遊民は豊かで美しい世界で楽しく暮らしているようだが、なんとな~く人を見下してくるし、どうやら奴隷がいるみたいだしで気に食わない世界。さらに言語も語順が異なり、目的語が先に来る。
翻訳が一番難しかったのはこのフロアかもしれない。
また、深く考えないで行った行動で運よく解けてしまう箇所があったりして、ちょっとよくわからないまま次の階層に進むことになってしまった。
文字はインドとかアラビアとかそんな雰囲気のものだった。
第四の階層に向かう途中では、なんか怖いやつが追いかけてきて、思いもしないタイミングだったのでかなりびっくりした。
明るいところには来ないという法則に気付くのが遅く、え?これどうやんの?と少々戸惑いながらも突破。
第四の階層は錬金術師の階層!文字はまるっこくてかわいい。ぱっと見、共通点がわかりにくく混乱したが、これまで解読した言語と照らし合わせて類推できるものが多く、あまりてこずらなかった。
文法がわかりやすかったというのもある。
だがこの階層が一番時間がかかった。なぜなら謎解きの部分で
某アイテムを作るマシンの操作がよくわからず、右往左往したのだ!!
操作手順はわかっていたが、レバーを何回もガチャガチャする必要があるっていうのは気づかなかった!
第五の階層の言語はどの言葉とも似ていないし、ヒントも少なかった。
しかしパズルのようなマシンで多言語と組み合わせることで類推でき、最も短時間で解読できた。
ここからエンディングまでは割とすぐなのだが、シンプルながら凝った演出の数々と、余白のあるストーリーで考察の余地があり、最後まで楽しめた。
何よりビジュアルが洗練されており、目でも楽しめるうえ、知的好奇心も満たされて最高だった。
個人の考察
この塔は「バベルの塔」がモデル。
それぞれの階層の人々は言語が異なり、お互いが分断されている。
分断された世界で、お互いを理解しない世界。
各階層にあるターミナルで、主人公は言語の翻訳を試みる。
すると分断された人々が意思の疎通をし始める。
相互理解が進み、交流をし始めた人々は共通の言葉を持っていたことに気が付く。
それぞれの文化で「最上のもの」を意味する文字は、実は同じものだった。
この文字は多面体で構成されており、見る角度によってその形が変わる。2Dで見えていた文字を3Dで認識したときに、はじめて同じものを見ていたと理解できるという仕組みだ。
一面しか見えていなかった(お互いを理解しなかった)ために生まれた分断は、多面的に理解することではじめて解かれる。
最上階に住まう人々は、VRマシンにつながれてお互いに会話をしなかった。
おそらく最上階の人々は、現代に暮らす我々の未来の姿を示しているんだろうと思う。
スマホやゲームにうつつを抜かし、考えることをせず疑問質問はAI任せ。いずれそのAIがすべてを判断するようになり、人々はVR空間に生きるようになり・・・というイメージだ。
最上階の人々の世界で、最上の言葉は「孤独/孤独の民」だった。
彼らが生み出したAIが彼らを支配し、AIの作り出した価値観「孤独」が最上のものになったのかな。と思う。
このゲームではAIが悪役で、主人公がAIをOFFすることで最上階の人々が目覚め、他階層の人々とも交流することで「孤独/孤独の民」を意味していた文字の真の姿に気が付く。
全ての階層の人々が塔の上に集まり、あの文字が燦然と輝く。
その文字は、「神」でもあり「使命」でもあり「美」でもあり「孤独」でもある、すべてを包括した尊いものという意味になるんだろう。
相互理解。
これがメインテーマかな。
きれいにまとまったストーリーでした。
脱線
洋画などでよく見るテーマで『AIの暴走』がある。
2001年宇宙の旅だったり、ターミネーターだったり。
人間の作りしものが、いずれ暴走し、人間と敵対し、最終的に人間が勝つ的なエンドのストーリーだ。
いかにも西洋の考え方という感じがする。
人間の作ったものは、人間を超えることは無いという考えが根底にある気がする。
別にそれが悪いわけじゃないけど、AIをOFFにしてエンディングを迎えたこのゲームの結末に、上記にあげた洋画でよくあるオチに似たものを感じたのだ。
フランスのゲームだから西洋的で当たり前だけど。
話はとぶが、最近「ミーガン」と「アイの歌声を聞かせて」を観た。
これも象徴的だからちょっと聞いてほしい。
ミーガン(AI搭載ロボット)は暴走して退治されたが、ラストシーンではスマートスピーカーがじっとこっちを見ていて(まだAIは生きている・・・)みたいな余韻を残す終わり方だった。最後まで敵ムーブしてくる。
一方、アニメ映画「アイの歌声を聞かせて」では、同じくアンドロイドのアイが登場、主人公たちと友情を育むがいろいろあって廃棄されることになる。だがAIのプログラムは逃げて、最後のシーンで人工衛星を介してメッセージを送ってくる。主人公の恋愛を応援するメッセージだ。
これらを比べても、日本ってロボットやAIを敵として描かない文化があるような気がする。
鉄腕アトムも、鉄人28号も、ドラえもんも人々を襲わない。
できれば暴走するAIではなく、対等なフレンドリーさでテクノロジーとうまく付き合っていく未来がいいなと思う。
終わり