イケメンデート
場所は難波のカフェ。ものすごく暑い日。
わたしは初めていきなりデートに来ていた。
私は緊張のあまり吐きそうになりながら
「こんなことならストロングゼロを飲んできたらよかった‥」とガチで思うほど緊張していた。
なんせ慣れていない。わたしはぶっちゃけ言うと
まじでこういう場が嫌いなのである。
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空いている日程と時間を入力すると、予定の空いている男女同士が自動的にマッチングし、
デートが確立するというデーティングアプリ「いきなりデート」の話を友人から聞いたのはつい先日前だった。
わたしは従来のマッチングアプリから途方もなくやり取りを重ねデートに取り付けるという
”非効率的な作業”が大嫌いである。
単にわたしが効率的ですとアピっているわけではない。正真正銘のめんどくさがり屋なのである。
先日も、「信雄(ノブオ)」という男性とマッチングしたが、ライン交換をして間もなくやり取りが面倒になり、ぶちぎってしまった。
”そもそも、デートするまでにメッセージで相性を確かめるってなんなんだ。会ってみないと相性も何もわからないじゃないか。”
用もないLINEがめんどくさい私にとって、デートにコミットしたデートアプリは画期的だった。友人の話を聞いて、早速登録をした。
出会いを求めていながらも、わたしは非モテ陰キャコミュ障メンヘラ女であるため、初対面の人と、あれやこれやお互いのことを探りながら距離を詰める行為が非常に苦手である。
なので難波のカフェに着くまで憂鬱で、ドタキャンしたい症候群に襲われながらもなんとかこのくそ暑い中難波のカッフェまで来たわけであるが。なんせ落ち着かない。
出会いの場にいき「気が合えば付き合うかも」みたいなノリで会うのが本当にいやだ。
見定められている感じがする。逃げたかった。
ただ来てしまったものは仕方ない。
予定時間より早めについてしまったので、緊張しながら待つ。
とりあえず、店員さんに「お水ください」と、せっかちに頼んだ。
出入り口の方をちらちら見ながら、ドアが開くたびに「アイツか?!」と思いながら待っていた。
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お世辞にもおしゃれとは言えないホテルのロビーに併設されたようなカッフェは
まじで「お見合い」がよく行われているんだろうなあと思うような昭和を感じさせる。
昭和を象徴するように、入り口のドアは自動ドアではなくガラスの扉を大きく開けて入る造りであった。
待つこと5分。
現れたのはその大きな扉と同じくらい大きい男性。
黒髪 185センチ さわやかなブルーのボーダーシャツ 色白 顔=玉木宏
は?と思うような好青年風真面目イケメンであった。
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イケメンは言った。
「初めまして。
さくらい しょう(仮名)と言います。」
フルネームで名乗った。
なんか、なんとなくこういう場では下の名前だけとか、
そういう呼びやすい感じで言われるノカナ、、とか思っていたのでフルネームを名乗る礼儀正しいイケメンにわたしはもう過呼吸になってしまいそうなくらい緊張した。
「はじめまして・・・。竹内 ユウコ(仮名)です・・・・・」
私は直視できなかった。
私の中でイケメンは3つに分けられる。
①山田孝之、菅田将暉のような濃い顔の整った骨格イケメン。
②イケメンはイケメンでも雰囲気イケメン
③マジのイケメン。山ピーみたいなきれい系イケメン
私の中では①②はギリ直視できるが③は直視できない。なんなら息すらできない。
よりによって③に当たってしまった。息が、できないサンソ、スエナイ・・・
まじでただでさえ緊張で吐きそうなところを、ミゾウチパンチされたくらい息ができなかった。
わたしは思った。
「もう終わりだ(下を向いた非モテコミュ症インキャな女なんで相手にされるわけがない)・・・・・・」
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その日、会ったのはたしかお昼の12時だった。イケメンのしょうは、おなかが空いていないと言った。
(ああ、早く帰りたいからサラッとドリンク飲んで帰るパターンなのね・・・)
と終わりを確信したわたしはドリンクメニューを眺めていた。
すると、しょうは「僕これにします」とサンドイッチのセットを指さした。
(え。普通に食べるんやん)としょうの突っ込み待ちなのかわからないそのノリに「…ハイ」と言い、わたしはパンケーキセットとアイスコーヒーを頼んだ。
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心理学でちらっと習った(なんという理論だったか名称は忘れてしまった)、一緒に食事をしていると緊張がほぐれる理論は本当のようで、だんだん落ち着いて、イケメンのタイプ③であっても顔を直視できるようになった私はやっと、まともに喋れるようになった。
そして、しょうと世間話から恋愛話まで、世間一般で言われる「婚活トーク」なるものをしていた。
そしてその日はちょうど、大阪地震で震度6弱を記録していた日から数日後だったため、地震トークにまで発展していた。
「地震の時、どこいました?」という問いかけに、私は「電車に閉じ込められていました。」というなんか若干色気のない返事をした。
「しょうさんは?」と私が聞くと
「僕、実は地震に気づかなかったんです^-^;;」と答えた。
気づかない・・・だと?・・・・・
(さっきから若干思っていたが、しょうってだいぶ天然なんじゃないか??気づかないわけないだろ、、え、階段登っていたから気づかなかったああ??いやそんなわけあるかーい、なんか緊急地震のアラームみたいなん鳴るやん、え気づかないわけある?ツッコミ待ちのボケ?????いや何可愛すぎるやろ。裕子に抱かれたいんか?抱いてやろうか?抱かれたことに気づきませんでしたとか言わせたろか??)
「気づかなかった」というセリフに一瞬で色々考えたが、ああそうだここはデートの場所だったと気づき
「そうなんですか!!!(おほほおほ」で終わった。
今考えると本当に出会いの場に慣れていないウブすぎる私だった。
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その日は7月頃であったがしょうは5月から彼女がいないという。
なんで別れたのですかと聞くと、「すがられるのが嫌だった」としょうは答えた。
俗にいう、しょうはエリートであったので、「経済力を頼りに言い寄ってきた彼女に振り回されていたんだろうな。」と冷静に分析した。
こういう時は妙に冷静になれる。
そんなたわいもない話から恋愛観まで気がつけば2時間半も喋っていた。
いきなりデートは本来であれば1時間半をめどに終わるデートコースにはなっているが
別に切り上げが早くとも、遅くなっても、何も言われない。
何時間一緒にいても差し障りないのである。
それが2時間半もイケメンと一緒に1対1で喋っていたことに我驚いたのであるがしょうも
「楽しかったので、全然気づかなかったですが、もう15時前なんですね・・」というほど長い時間二人で過ごした。
そしてLINE交換をし、会計レジに向かった。
イケメンは最後までイケメンで、これくらい大丈夫ですよ、と会計をしてくれた。
どこまでも抱きたいと思った。
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御堂筋線に向かう。
この後予定は空いていたが、中途半端な15時という時間から、
初対面同士でどこかに行く勇気がなかったので、私は予定があることを装おうと、
しょうも同じくこの後予定があると言われた。
本当は正直、このままどこかへ消えてしまいたかった。
しょうも同じくだったのか、御堂筋線のホームに着いた途端、目の前に電車が来たが
「次の電車に乗りましょう」と、その電車をなぜか見送った。
3分後には同じように電車が来るのに。
3分でも長く一緒にいたいってこと?
我、久しぶりのデート最後の瞬間すぎて色々考えた。
これはいけるわ。
いきなりデートからのいきなり交際コースや!!いけるで裕子
頭の中のもう一人の裕子が叫んでいる。
しょうは梅田へ、私は途中下車だったので、途中まで一緒に電車に乗って、
「今度はカフェじゃなくて飲みにでも行きましょう」
と言われ、勝ち確定を感じ、しょうに手を降って私は地下鉄を降りた。
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帰宅後。
ラインの文章を超超超考えておくった。
なんせ久しぶりの男性(しかもイケメン)とのラインすぎてなんて送ればいいかワカラナイ
妹や友達にあれやこれや聞いて送った。
「今日はありがとうございました。とても楽しかったです!またお話ししたいです」
こういうラインを送った後、返事が来るまで待つのが辛すぎるので、私はジムに行くことにした。
すると間も無く、しょうからラインが来た。
「こちらこそ!楽しかったありがとう!!また飲みにでも行きましょか!!」
来た!!
嬉しい。
やっぱ勝ち確定やん裕子・・・よかったな。裕子・・・
頭の中のもう一人の私が叫んでいる。
だが待て
「いつ空いてますか」が入ってないわ・・・
誘ってくれ。この雰囲気で誘ってくれよ・・しょうちゃん・・
仕方がないので私は前のめっている感じを出さないように、
ジムでラットプルダウンで背筋を痛めつけ、ダンベルを持って腹筋し、ランニングマシンでしばらく走りながら考えた
そして送ったのは「今度は美味しいお酒飲みに行きましょう!気があってびっくりしました!!」
というちょっと私にしては可愛い感じを装ったラインだった。
しかし、そこからしょうからのラインは途絶えた。
さっきはすぐに返事来たのに!
まあ、確かにライン苦手って言ってたしな。
ああこうなるからラインキライやねん。ほんまはらたつ!!
と思いながら既読のつかないトークをこの日は何度も眺めた。
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数時間後。
ピコン
と送られ来た。
私はたまたまパソコンを開いていたので、ラインが来ると左上にポップアップ通知が出てくる。
しょう:(スタンプ)
え?は?
と思ってソッコー既読をつけると
そこには
「よかばい!」というスタンプオンリーが送られていた。
しょうは九州出身である。
よかばい。
よかばいってなんやねん、いいってことやんな。
は?なに。もっとなんか送ってこいや。
せっかくうまく行きそうだったイケメンとの2回目のデート
しょうのあまりにもそっけないラインに私はイライラした。
しかし、イライラしているうちにイライラを通り越し
よし、じゃあ、一発ウケ狙いを送ってみるか
というよくわからない思考に発展した。
「よかばい」に対して→「九州弁で返信する」
という謎の定義をつけ、色々PC上で、これがいいかな、こうかな・・・・・と
文章を作成していた。
そして事件が起きる。
エンターを押してしまったのである。
ENTERである。
E N T E R・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まじでミスった
何をミスったかというと
①本来送るはずではなかったテキトーな試作段階の文章を送ってしまったこと
②絵文字がない。飾らなすぎにもほどがある
③ウケ狙いをしようと試みたが①であるため面白くもないただの変な人みたいになってしまったこと
④色気も可愛げもへったくれもない
以上の4点を踏まえ、ミスった。
本当にミスった。
その時送ったミスラインがこちら
当時は送信取り消し機能はない時代であった。
もうすでに時遅し、取り返しがつかない。
クライアントにおくったメールは取り消さないと新入社員のころ散々言われていたコンプライアンス研修を彷彿させるようなミスをした。
オワッタ
返信が遅かったしょうも
なぜかソッコーで「既読」がついた
まじで終わった・・・・・・・・・・・・・・・
私のいきなりデート初戦、撃沈でございます
ありがとうございましたアーメン
友人や妹たちに
ナニコレっっっっっっっwwwwwwwwwww
なんでこんなん送ったん!!!!wwwwwwwwwww
と言葉責めをされ
当然ながら、ラインの返事は来なかった。
終わり
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