10時間デート
普段は目立たないクラスメイトの男の子が体育祭のときだけ、カッコよく見えてなぜか好きになってしまうあの現象を彷彿させるような、そこまでパッとしない印象だが体育祭でみたら好きになるかもしれないような彼(青年A)と2回目のデートとなった。
デートの約束をした日から、デート当日まで毎日LINEなるものをする、お付き合い前の関係性維持のためだけのLINEのやり取りが嫌いな私にとって青年AとのLINE頻度はまあまあちょうどよかった。
前回のデート時に二人で行きたいねと話した、難波の某劇場で、観光をメインに大阪のグルメを食べ歩くツアーをLINE時に計画してくれていた。
基本的に送られてきた計画に「いいね!」といっただけなのでスマートに進んだ。
行きたいといったところを調べてくれるこの人はきっとA型に違いないと思いながらやり取りしていた。(※青年Aの”A”はA型のAではない)
当日、12時に難波で待ち合わせをしたが難波駅というところはやたら広く合流するまで時間がかかったがなんとかお互いを見つけ、難波中心部に向かう。
やっぱり、ぱっと見はそこまでかっこよくはないけど時々カッコよく見えた。
ぐるなびマスターの青年Aは、たこ焼きの店をたくさんブックマークしてくれていた。しかし、行けど行けど、行列。さすが大阪の観光地。最初は点々と空いている有名店を探していたが、見つからないので仕方なく行列に並んだ。
正直、前回のデートでかなり酔っ払っていた私は会話を所々しか覚えていなかった。大変申し訳ない。婚活をしすぎると、あの人はどこの出身で何人兄弟で好きな食べ物は何でというのがごちゃごちゃしてくる(※)ので本当にメモを取っていないと覚えていられない。(※)これを私は婚活後遺症と呼んでいるが婚活勢各位はズボラな私を反面教師にして欲しい。ぜひメモ帳やエクセル等で相手の情報を管理した方がいいと思う。誠実感が芽生える。私はめんどくさいので自分の記憶に頼るが本当にヘマをしてばかりである。
本当に大変申し訳ない気持ちで、「他人の情報と勘違いして物を申さないこと」に注力しながら探り探り喋り、たこ焼きを買うために行列に並んだ。地雷は踏まなかった。
その後、某劇場へ向かう。
私はそこまでお笑いに詳しい方ではないが大阪にいながらも、有名なお笑いをみたことがなかった。行ってみると、いままで見たことないことが勿体なかったと思うほど面白かった。
途中、「あの人、乳首ドリルの人だよね」と青年は言った。
しかし”乳首ドリルの人”の”乳首ドリル”のネタは確かに覚えているのだが、”乳首ドリルをされる人”の顔が全然出てこない。
すち子は覚えていたが乳首ドリルされる方が出てこない。
「乳首ドリルの人ってあんな人だっけ?」
「乳首ドリルすな、すな、すな。すんのかと思ったらせんのかいのツッコミの方やで」
二人で”乳首ドリル”について議論しているとしばらくして、こんなに乳首を連呼したことはないなあと気が付いた。
この青年は天然なのか、ずっと乳首を連呼しているし、私も気がつけば乳首というワードの卑猥さに何も感じず会話をしていた。私たちはこの狭い静かな空間でCHIKUBIというワードを連呼しているが、客観的に見れば変な会話だったと思う。
2回目のデート。私はまずいと思い、その話題にそっと蓋をした。
劇場を出ると16時。どうする?、となりとりあえず、次のお店を探すためにその辺の店に入って串カツを食べた。ここでもハイボール。
好きなタイプはほとんどないが、常々、お酒じゃ飲める人はよいという結論がアラサーに近づくにつれ出てきている。※ただしお金がかかる
次は焼肉を食べに行こうと串カツを食べながら決めて、店を出たが全くお腹が空いていない。そこで、腹ごなしのため、ゲームセンターの釣り堀へ行った。
しかし、あいにく同じようなことを考えていたと思しき男女たちが無言で並んでいる姿が見えた。満席だった。
満席だったが、うなぎ釣りならすぐできますよとうなぎ釣りをしに行った。浅い水槽の中でうなぎがうようよしていたが釣れても持って帰れないらしい。正直うなぎは弱っていて全く釣りがいがなかった。ここは場所のチョイスをミスった。
ここまでだらだらと書いたが、実はここまではこのデートの前半部分にすぎず、残り5時間分くらいのエピソードがまだ残っている。我々はLINEでのデート計画時に「たこ焼き」、「吉本」、「居酒屋のはしご」そして「カラオケ」を入れていた。なのでこのうなぎ釣りの後に、焼肉と、カラオケと、締めに寿司へ行った。5時間飲んだり食ったり、同じようなこと続いた。
本当は、この詳細も書こうと思っていたがちょっとめんどくさくなったので省略する。代わり映えのない会話だったし、特に進展することもなかったし手も繋がなかった。
ただ、もしお酒がなかったら10時間を耐えることは難しかったと思う。
10時間デートを要約すると
12時集合→たこ焼き→吉本→串カツ→釣り→焼肉→カラオケ→寿司
こんな流れだったのだが、10時間デートをしてわかったのは、とりあえずこのデートの反省点は
一番楽しいときに帰らなかったこと
これに尽きる。
私の感覚で申し訳ないが、本来であれば
12時集合→たこ焼き→吉本→串カツ
もしくは
吉本→たこ焼き→カラオケ→寿司
これくらいでちょうどよかったのだが、
なぜ
12時集合→たこ焼き→吉本→串カツ→釣り→焼肉→カラオケ→寿司
こうなったのか、我々もわからない。
多分お互いに気を遣い過ぎた。相手は悪くないし。むしろ、計画に対して私が積極的に客観視して、「長くない?」というワードを出せなかったのが問題である。
短いデートの中で「もっと一緒にいたいのに!」というもったいなさが途中で消えて、「なんか最初に計画してくれたから、計画通りに全部こなさないと悪いし」と義務感があったと私は自分を振り返って思う。
そもそも平日の労働時間は約8時間であるにも関わらず、付き合う前の男性と10時間もデートをしたことに私は持久走を完走したマラソンランナーのような達成感は残っているものの、最後の方は何がなんやらわからなかった。
デートは10時間もするものではないし、小出しに少しずつ楽しいことを重ねた方が良かったというただの反省日記である。絶対に私のようなデートはしないでほしい。
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