もはや憲法論議とは言えない衆院憲法審の毎週開催
2021年11月の総選挙以降、衆議院の憲法審査会では「毎週開催」が恒常化しています。
しかし、そこでの改憲派の議論の内容はもはや憲法論議とは言えないレベルの代物になっています。
去る5月11日の衆院審査会の議題は「参院の緊急集会の集中討議」でした。
しかし、改憲5会派はこれまで同様に、緊急集会の制度を自分たちの議員任期の延長改憲に都合のいいように曲解した憲法と立憲主義に明確に違反する主張(※)を繰り広げました。 (※ 文末の「ご参考」をご覧下さい)
どの会派も、憲法制定議会での金森担当大臣の「民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するため」、「どんなに精緻なる憲法を定めましても、口実をそこに入れて又破壊せられるおそれ絶無とは断言し難い」といった緊急集会の根本趣旨について一言も言及していません。
この金森大臣の答弁は「衆議院議員の任期延長の間に行われた太平洋戦争の開戦」、「政府の緊急勅令による治安維持法の改悪」などの戦前の反省から、緊急事態を語った権力の濫用を防ぐというまさに日本国憲法の立憲主義の神髄というべきものです。
また、災害大国であるわが国の特性を踏まえ、総選挙が出来ない時の対処策としてGHQ草案には無く日本側が提案して結実した緊急集会を、「災害時などには使えず、総選挙ができる時しか使えない平時の制度」などと勝手に決めつけています。
毎週開催によるこれまで20回以上のこうした誤った議論に加えて、「緊急集会の集中討議」の機会ですら、緊急集会の根本趣旨や立法事実について一言の言及もなく、全く議論をしないのであれば、それはもはや憲法論議とすら言えません。
参院の立憲会派は4月5日以降三回にわたって、こうした緊急集会の根本趣旨や立法事実、それに基づく主要学説などを指摘しながら、議員任期の延長改憲の議論は不要かつ憲法と立憲主義に反するものと批判しています。
衆院憲法審の改憲派の一部議員の会議録からは、参院憲法審の議論を承知している様子が伺えます。 にもかかわらず、自分たちが見たくない事実を無視して、毎週開催による改憲ありきの議論を推し進めようとする姿は本当に恐ろしいものです。
心あるマスコミはこうした日本の自由と民主主義の危機について、国民の皆さんにしっかりと伝えて頂きたいと心より願いいたします。
(ご参考)
衆議院憲法審査会の「毎週開催」の問題について 【(1)議員任期の延長改憲】|参議院議員 小西洋之 https://note.com/konishi_hiroyuki/n/n294330c481a7